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バード男爵&令嬢
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メイド長と秘書官、護衛騎士二名を引き連れて、戦いの場に向かう小娘風の鬼嫁。
気合を入れて応接室に入ると、伯爵様とは全く似ていない、見た感じは優しそうに見えるおじさんと娘さんがいた。
娘さんはヒラヒラした可愛らしいカッコしてるけど……、多分私よりも年上だな。
ふふふ、前世でアラフォーおばちゃんだった私の目は誤魔化せないわよ。
「お待たせ致しました。バード男爵様、結婚式ぶりでしょうか?」
「夫人、結婚式以来だね。元気そうで何よりだ」
全然元気じゃないんですけどね……
私が連れて来た護衛騎士や秘書官をチラッと見るバード男爵。警戒しているようだ。
「おかげ様で何とかやっておりますわ」
その後、しばらくバード男爵の世間話が続く……
何か大事な話をする前に場を和ませたいようだけど、早く終わらせたい私にとってはストレスでしかなかった。
こっちは忙しいんだよ! 念願のカフェオープンに向けて内装を考えたいんだから!
せっかちな鬼嫁は、我慢が限界に来てしまった。
「バード男爵様。今日はお嬢様まで連れていらして、世間話だけをしにいらしたのでしょうか?」
「……夫人は忙しいようだから、長々と話をして悪かったね」
ええ、非常に迷惑です。分かっているなら手短に話をしてよ。社会人でしょ? ……と言いたかった。
「いえ。ただ……、何か大事な御用があるのでしたら、私ではなく伯爵様をお呼びいたしますわ」
イライラを堪える私に、バード男爵は余裕そうに微笑む。
「ふっ……。では本題に入ろう。
夫人は毎日、かなり忙しいと聞いているよ」
「普通に仕事をしているだけです。私よりも忙しいご夫人は沢山いらっしゃいますわ」
「いや。忙しいようで、なかなかアランとの時間が取れないと聞いているよ。新婚なのに、一家の主人よりも仕事を優先しているとね」
このオヤジ……、本性を出してきたな。
「まあ! 一家の主人が優先してもらえるほど、男爵様は大層裕福でいらっしゃるのですね。羨ましいですわあー。
残念ながら、うちの伯爵家はそうは言ってられないのです。
私達夫婦のことを心配してくださるほど、余裕がある生活を送っていらっしゃるのですね。本当に羨ましい」
『羨ましい』にわざとらしくアクセントをつけて喋っちゃうよ。
鬼嫁は稼げない夫に文句は言わせないんだよ。他人が夫婦生活に口出すな!
「いや、悪い意味で言っている訳ではないんだ。気分を害したら申し訳ない」
小娘ごときが嫌味たっぷりで反撃したから、バード男爵は少しビックリしているようだ。
「ふふっ! 私はただ裕福な男爵様の家が羨ましいと話しただけです。こちらこそ失礼しました」
「夫人が事業で成功しているのは、伯爵家からしたら大きな支えになって有り難いことだと思う。
しかし、伯爵夫人として跡取りを産んだり、主人に寄り添うことも必要だと思うんだ。
だが、夫人は忙しくてそれが出来ていないと聞いている」
あー、五月蝿いオヤジだわ……
「それでなんだが……、うちの娘を第二夫人として迎えるのはどうだろうか?
夫人が忙しくて、出来ないところをうちの娘なら補うことが出来ると思う。
アランとは昔から仲が良いから、何の問題もないと思うんだ」
正妻である私が同意しないと第二夫人は迎えられないから、それを言うためにわざわざ来たのね。
イライラする私に、バード男爵令嬢がニコッと微笑んでくる。
その瞬間、カチッと自分のスイッチが入ったのが分かった……
気合を入れて応接室に入ると、伯爵様とは全く似ていない、見た感じは優しそうに見えるおじさんと娘さんがいた。
娘さんはヒラヒラした可愛らしいカッコしてるけど……、多分私よりも年上だな。
ふふふ、前世でアラフォーおばちゃんだった私の目は誤魔化せないわよ。
「お待たせ致しました。バード男爵様、結婚式ぶりでしょうか?」
「夫人、結婚式以来だね。元気そうで何よりだ」
全然元気じゃないんですけどね……
私が連れて来た護衛騎士や秘書官をチラッと見るバード男爵。警戒しているようだ。
「おかげ様で何とかやっておりますわ」
その後、しばらくバード男爵の世間話が続く……
何か大事な話をする前に場を和ませたいようだけど、早く終わらせたい私にとってはストレスでしかなかった。
こっちは忙しいんだよ! 念願のカフェオープンに向けて内装を考えたいんだから!
せっかちな鬼嫁は、我慢が限界に来てしまった。
「バード男爵様。今日はお嬢様まで連れていらして、世間話だけをしにいらしたのでしょうか?」
「……夫人は忙しいようだから、長々と話をして悪かったね」
ええ、非常に迷惑です。分かっているなら手短に話をしてよ。社会人でしょ? ……と言いたかった。
「いえ。ただ……、何か大事な御用があるのでしたら、私ではなく伯爵様をお呼びいたしますわ」
イライラを堪える私に、バード男爵は余裕そうに微笑む。
「ふっ……。では本題に入ろう。
夫人は毎日、かなり忙しいと聞いているよ」
「普通に仕事をしているだけです。私よりも忙しいご夫人は沢山いらっしゃいますわ」
「いや。忙しいようで、なかなかアランとの時間が取れないと聞いているよ。新婚なのに、一家の主人よりも仕事を優先しているとね」
このオヤジ……、本性を出してきたな。
「まあ! 一家の主人が優先してもらえるほど、男爵様は大層裕福でいらっしゃるのですね。羨ましいですわあー。
残念ながら、うちの伯爵家はそうは言ってられないのです。
私達夫婦のことを心配してくださるほど、余裕がある生活を送っていらっしゃるのですね。本当に羨ましい」
『羨ましい』にわざとらしくアクセントをつけて喋っちゃうよ。
鬼嫁は稼げない夫に文句は言わせないんだよ。他人が夫婦生活に口出すな!
「いや、悪い意味で言っている訳ではないんだ。気分を害したら申し訳ない」
小娘ごときが嫌味たっぷりで反撃したから、バード男爵は少しビックリしているようだ。
「ふふっ! 私はただ裕福な男爵様の家が羨ましいと話しただけです。こちらこそ失礼しました」
「夫人が事業で成功しているのは、伯爵家からしたら大きな支えになって有り難いことだと思う。
しかし、伯爵夫人として跡取りを産んだり、主人に寄り添うことも必要だと思うんだ。
だが、夫人は忙しくてそれが出来ていないと聞いている」
あー、五月蝿いオヤジだわ……
「それでなんだが……、うちの娘を第二夫人として迎えるのはどうだろうか?
夫人が忙しくて、出来ないところをうちの娘なら補うことが出来ると思う。
アランとは昔から仲が良いから、何の問題もないと思うんだ」
正妻である私が同意しないと第二夫人は迎えられないから、それを言うためにわざわざ来たのね。
イライラする私に、バード男爵令嬢がニコッと微笑んでくる。
その瞬間、カチッと自分のスイッチが入ったのが分かった……
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