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帰りました
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「伯爵様、ただいま帰りました。
実家に忘れ物を取りに行った後、気分が優れませんでしたので、あちらでしばらく療養させて頂きましたわ。帰るのが遅くなりまして、大変申し訳ありませんでした」
ロジャース伯爵家に戻り、邸に入ったところで、顔だけ男の伯爵様が出て来てしまった。
馬車三台で乗り付け、追加で連れて来た私のメイド五人に、従者二人、秘書官二人、護衛騎士五人と騎士の馬を連れて来たから、流石に騒がしかったようだ。
「……大丈夫だ」
その仏頂面なんとかしてよ! わざわざそんな顔を見せるために出て来んなと言いたい。
婚約中はもう少しマシな顔をしていたと思ったけれど、結婚したからもう愛想良くしなくていいって本性を出してきたようだ。
エレノアのおバカ! こんな詐欺男に騙されて……と心の中で叫ぶ私。
「伯爵様。今日から私専属の使用人がこちらでお世話になりますので、どうぞよろしくお願い致しますわ。
部屋を使わせて頂くことを許可して下さって、ありがとうございました」
「そのことだが、部屋を使うのは構わないがうちの邸の使用人達はみんな忙しいようだから、使う部屋の掃除などの管理はエレノアの使用人達にやって欲しいそうだ」
そんなの当たり前だろうが! この男は何かしら文句を言いたいらしい。
「始めからそのつもりでしたからご心配なく」
「分かっているならいい」
「ところで伯爵様。私、まだこちらの邸の使用人をきちんと紹介されていませんのよ。今から紹介して頂けます? その場で私が連れて来た使用人達も紹介したいと思いますので。
伯爵様はお忙しいでしょうから、家令かメイド長にお願いしたいですわ」
結婚式の日はバタバタしていたし、その後に迎えた初夜では倒れて寝込んでしまい、目覚めた後は実家に帰ってしまったので、まだ伯爵家の使用人達に自己紹介すらしていなかったのだ。
「……メイド長に頼むといい」
無愛想に話す伯爵様に顔が引き攣りそうになる。
「ありがとうございます。
メイド長、この後すぐに使用人全員を集めてくれるかしら?」
「畏まりました」
その後すぐ、この邸で働く使用人をほぼ全員集めてもらった。旦那様の側近達のみ、多忙なので来ていないとメイド長から報告を受けている。
しかし集まった使用人達の態度が何となくよろしくないように見える。旦那様と初夜を済ませていない、お飾りの小娘夫人だってバカにしているのかもしれない。
ふん! いつまでそんな態度が出来るかな?
「忙しいところを集まってくれてありがとう。
私はエレノアです。これからよろしくお願いするわ。
……あら! そこの貴女、名前は?」
一際態度が悪いアラフィフくらいのおばちゃん使用人がいた。
ふーん、あれがもしかして使用人の裏ボスかな?
「マリラです。奥様、忙しいのでお話は早くして頂けますか?」
「マリラ、貴女の仕事の担当は?」
「掃除と洗濯です」
「そう……。貴女は仕事に戻っていいわよ。出て行って構わないわ」
面白くなさそうな表情を隠すことなく、マリラは出て行った。
あの使用人はクビ候補ね。安い給料しか払えない上に、人材不足だからあんな態度でもクビにならなかったのだろうけど、ああいうのは腐ったミカンだから、さっさと排除した方がいい。
「皆さんも分かっていると思うけど、この伯爵家は貧乏でいつ没落してもおかしくないの。私と私の実家の支援でやっと成り立っている状態よ。ここまで言えば分かるわよね? 仕事を失いたくないのなら、私に対してどのようにすべきなのかを」
あの顔だけ男が、私を丁重に扱うようにと使用人に言わないから、使用人達の私への態度がよろしくないのだ。
それに、誰がどう見ても夫婦関係が良くないのが分かるから尚更バカにしているのだろう。
だから私は、この邸のお金を牛耳っているのはこの鬼嫁であるワタシだと、使用人達にはっきり伝えることにした。あんな顔だけ男を立てるつもりは毛頭ないのよ。
「私の連れて来た使用人達とも仲良くしてね!
では一人ずつ、自己紹介をお願いするわ」
貧乏伯爵家の使用人は少ないので、一人ずつ自己紹介をしてもらい、最後にお母様からもらってきた金貨を一枚ずつ配ってから解散した。一人ひとりに『よろしくね!』と声を掛けながら。
メイド長にはこっそり金貨5枚を渡しておいた。貴女には色々とお世話になると思うから、よろしくと伝えておいた。
そういえば、あのおじいちゃん御者はいなかった気がする。時間のある時に会いに行ってみようかな……
金貨パワーは凄かった。使用人達の態度は目に見えて良くなり、みんな仕事に意欲的になったようだ。
態度の悪かったマリラには金貨をあげなかった。
マリラは金貨が欲しいのか、やたら私の目につく所に出没しているが完全に無視している。マリラはいい見せしめになってくれていると思う。あの女が何かをしたら、すぐに知らせて欲しいと他の使用人には伝えてあるから、何かやったらすぐにクビにしてやるつもりだ。
実家に忘れ物を取りに行った後、気分が優れませんでしたので、あちらでしばらく療養させて頂きましたわ。帰るのが遅くなりまして、大変申し訳ありませんでした」
ロジャース伯爵家に戻り、邸に入ったところで、顔だけ男の伯爵様が出て来てしまった。
馬車三台で乗り付け、追加で連れて来た私のメイド五人に、従者二人、秘書官二人、護衛騎士五人と騎士の馬を連れて来たから、流石に騒がしかったようだ。
「……大丈夫だ」
その仏頂面なんとかしてよ! わざわざそんな顔を見せるために出て来んなと言いたい。
婚約中はもう少しマシな顔をしていたと思ったけれど、結婚したからもう愛想良くしなくていいって本性を出してきたようだ。
エレノアのおバカ! こんな詐欺男に騙されて……と心の中で叫ぶ私。
「伯爵様。今日から私専属の使用人がこちらでお世話になりますので、どうぞよろしくお願い致しますわ。
部屋を使わせて頂くことを許可して下さって、ありがとうございました」
「そのことだが、部屋を使うのは構わないがうちの邸の使用人達はみんな忙しいようだから、使う部屋の掃除などの管理はエレノアの使用人達にやって欲しいそうだ」
そんなの当たり前だろうが! この男は何かしら文句を言いたいらしい。
「始めからそのつもりでしたからご心配なく」
「分かっているならいい」
「ところで伯爵様。私、まだこちらの邸の使用人をきちんと紹介されていませんのよ。今から紹介して頂けます? その場で私が連れて来た使用人達も紹介したいと思いますので。
伯爵様はお忙しいでしょうから、家令かメイド長にお願いしたいですわ」
結婚式の日はバタバタしていたし、その後に迎えた初夜では倒れて寝込んでしまい、目覚めた後は実家に帰ってしまったので、まだ伯爵家の使用人達に自己紹介すらしていなかったのだ。
「……メイド長に頼むといい」
無愛想に話す伯爵様に顔が引き攣りそうになる。
「ありがとうございます。
メイド長、この後すぐに使用人全員を集めてくれるかしら?」
「畏まりました」
その後すぐ、この邸で働く使用人をほぼ全員集めてもらった。旦那様の側近達のみ、多忙なので来ていないとメイド長から報告を受けている。
しかし集まった使用人達の態度が何となくよろしくないように見える。旦那様と初夜を済ませていない、お飾りの小娘夫人だってバカにしているのかもしれない。
ふん! いつまでそんな態度が出来るかな?
「忙しいところを集まってくれてありがとう。
私はエレノアです。これからよろしくお願いするわ。
……あら! そこの貴女、名前は?」
一際態度が悪いアラフィフくらいのおばちゃん使用人がいた。
ふーん、あれがもしかして使用人の裏ボスかな?
「マリラです。奥様、忙しいのでお話は早くして頂けますか?」
「マリラ、貴女の仕事の担当は?」
「掃除と洗濯です」
「そう……。貴女は仕事に戻っていいわよ。出て行って構わないわ」
面白くなさそうな表情を隠すことなく、マリラは出て行った。
あの使用人はクビ候補ね。安い給料しか払えない上に、人材不足だからあんな態度でもクビにならなかったのだろうけど、ああいうのは腐ったミカンだから、さっさと排除した方がいい。
「皆さんも分かっていると思うけど、この伯爵家は貧乏でいつ没落してもおかしくないの。私と私の実家の支援でやっと成り立っている状態よ。ここまで言えば分かるわよね? 仕事を失いたくないのなら、私に対してどのようにすべきなのかを」
あの顔だけ男が、私を丁重に扱うようにと使用人に言わないから、使用人達の私への態度がよろしくないのだ。
それに、誰がどう見ても夫婦関係が良くないのが分かるから尚更バカにしているのだろう。
だから私は、この邸のお金を牛耳っているのはこの鬼嫁であるワタシだと、使用人達にはっきり伝えることにした。あんな顔だけ男を立てるつもりは毛頭ないのよ。
「私の連れて来た使用人達とも仲良くしてね!
では一人ずつ、自己紹介をお願いするわ」
貧乏伯爵家の使用人は少ないので、一人ずつ自己紹介をしてもらい、最後にお母様からもらってきた金貨を一枚ずつ配ってから解散した。一人ひとりに『よろしくね!』と声を掛けながら。
メイド長にはこっそり金貨5枚を渡しておいた。貴女には色々とお世話になると思うから、よろしくと伝えておいた。
そういえば、あのおじいちゃん御者はいなかった気がする。時間のある時に会いに行ってみようかな……
金貨パワーは凄かった。使用人達の態度は目に見えて良くなり、みんな仕事に意欲的になったようだ。
態度の悪かったマリラには金貨をあげなかった。
マリラは金貨が欲しいのか、やたら私の目につく所に出没しているが完全に無視している。マリラはいい見せしめになってくれていると思う。あの女が何かをしたら、すぐに知らせて欲しいと他の使用人には伝えてあるから、何かやったらすぐにクビにしてやるつもりだ。
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