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義弟
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数日前に結婚したばかりの娘がすぐに実家に戻ってきて、療養といいながら泊まり続ける姿はなかなか滑稽だと思う。
「義姉さん、いつまでいるつもり?
愛する旦那様の所に帰らなくていいの?」
私に激甘の両親は何かを察したのか、何も聞いてこなかった。
しかし、こんな時に空気を読まずにストレートに聞いてくる人物がいる。それは親戚の家から養子に迎えた一つ下の義理の弟のギルバートだ。
「ギル、相変わらずデリカシーがない義弟ね……
実はね……、伯爵様を愛していると思っていたんだけど、私の勘違いだったみたい。だから白い結婚を目指そうと思ってるの。
あの伯爵様は信頼出来ない人だと判断したから、身を守るために護衛として騎士を借りていくわね。
お父様達にはギルから上手く言っておいてくれる?」
「……はい?」
サラサラの白金の髪にヘーゼルの瞳を持つ、なかなかの美形であるギルは、ポカンとした表情のまま固まってしまった。
「お父様とお母様に言うと悲しむだろうから、ギルだけに話しておくけど、結婚初夜に『君を愛するつもりはない』って言われて目が覚めたの。
腹が立ったから、時期が来たら白い結婚を申請するわ。本当は今すぐに離縁したいけどそれは我慢する。
白い結婚になれば婚姻自体が無効になるし、あの多額の持参金も返してもらえるでしょ?
一人で生きていけるように今から仕事も頑張るわ。
白い結婚が認められた後、ギルには迷惑はかけないようにするから、それまでよろしくね」
「義姉さん、それは本当なの?」
いつも涼しい顔をしているギルが、珍しく深刻な表情をしている。
「本当よ。だから今日はこの後に新たな投資先を探しに、情報ギルドに行ってくるわ。一人で生きていくためには、お金は沢山あった方がいいからね。
……ギル、どうしたの?」
いつもならため息をついて、私に呆れるはずのギルが泣きそうな顔をしていた。
「どうして……? どうして、そんな話を平気な顔して話すの?」
「私があんな顔だけの男に騙されたのが悪かったのよ……。私がバカだったの……」
「……分かった。騎士も秘書官もメイドも、姉さんが必要なだけ連れて行っていいよ」
ええっー! 怖いくらいにギルが優しい。
いつもなら、激甘の両親に苦言を呈する役目の辛口のギルが……
「ありがとう。何でも自分一人でこなせればいいんだけど、しばらくは実家の力を貸してもらうわね。
そう言えば……、この結婚に最後まで異を唱えていたのはギルだったわね。次があるかは分からないけど、また縁談話があるような時は、ギルに判断してもらって決めるようにしようかしら」
「何を言ってるんだ! 義姉さんならいくらでもいい縁談はあるから、心配しなくて大丈夫だよ」
……ということで、いつもは厳しい義弟が珍しく優しいので、私は遠慮なく甘えることに決めた。
私がロジャース伯爵家に戻ってからの少し先の話になるが、辛口のギルは私を心配してくれているのか、定期的に面会に来てくれるようになる。
この義弟がここまで優しくてマメな男だったとは……。実家を離れてみて、初めて気づいたことだった。
「義姉さん、いつまでいるつもり?
愛する旦那様の所に帰らなくていいの?」
私に激甘の両親は何かを察したのか、何も聞いてこなかった。
しかし、こんな時に空気を読まずにストレートに聞いてくる人物がいる。それは親戚の家から養子に迎えた一つ下の義理の弟のギルバートだ。
「ギル、相変わらずデリカシーがない義弟ね……
実はね……、伯爵様を愛していると思っていたんだけど、私の勘違いだったみたい。だから白い結婚を目指そうと思ってるの。
あの伯爵様は信頼出来ない人だと判断したから、身を守るために護衛として騎士を借りていくわね。
お父様達にはギルから上手く言っておいてくれる?」
「……はい?」
サラサラの白金の髪にヘーゼルの瞳を持つ、なかなかの美形であるギルは、ポカンとした表情のまま固まってしまった。
「お父様とお母様に言うと悲しむだろうから、ギルだけに話しておくけど、結婚初夜に『君を愛するつもりはない』って言われて目が覚めたの。
腹が立ったから、時期が来たら白い結婚を申請するわ。本当は今すぐに離縁したいけどそれは我慢する。
白い結婚になれば婚姻自体が無効になるし、あの多額の持参金も返してもらえるでしょ?
一人で生きていけるように今から仕事も頑張るわ。
白い結婚が認められた後、ギルには迷惑はかけないようにするから、それまでよろしくね」
「義姉さん、それは本当なの?」
いつも涼しい顔をしているギルが、珍しく深刻な表情をしている。
「本当よ。だから今日はこの後に新たな投資先を探しに、情報ギルドに行ってくるわ。一人で生きていくためには、お金は沢山あった方がいいからね。
……ギル、どうしたの?」
いつもならため息をついて、私に呆れるはずのギルが泣きそうな顔をしていた。
「どうして……? どうして、そんな話を平気な顔して話すの?」
「私があんな顔だけの男に騙されたのが悪かったのよ……。私がバカだったの……」
「……分かった。騎士も秘書官もメイドも、姉さんが必要なだけ連れて行っていいよ」
ええっー! 怖いくらいにギルが優しい。
いつもなら、激甘の両親に苦言を呈する役目の辛口のギルが……
「ありがとう。何でも自分一人でこなせればいいんだけど、しばらくは実家の力を貸してもらうわね。
そう言えば……、この結婚に最後まで異を唱えていたのはギルだったわね。次があるかは分からないけど、また縁談話があるような時は、ギルに判断してもらって決めるようにしようかしら」
「何を言ってるんだ! 義姉さんならいくらでもいい縁談はあるから、心配しなくて大丈夫だよ」
……ということで、いつもは厳しい義弟が珍しく優しいので、私は遠慮なく甘えることに決めた。
私がロジャース伯爵家に戻ってからの少し先の話になるが、辛口のギルは私を心配してくれているのか、定期的に面会に来てくれるようになる。
この義弟がここまで優しくてマメな男だったとは……。実家を離れてみて、初めて気づいたことだった。
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