上 下
146 / 161
南国へ国外逃亡できたよ

パーティーの後

しおりを挟む
 保護魔法で私にかけたはずのジュースが、ガザフィー男爵令嬢に跳ね返ってしまった。逆ギレして、怒り狂うガザフィー男爵令嬢。おっかないわ!本当に白雪姫の継母みたいだ。

「くっくっ!マリア嬢の保護魔法で、君がかけようとしたジュースが跳ね返っただけなのに、何で…くっくっ。すまない!笑いが止まらなくて…。何というか、すごく失礼な方だというのは分かった。自分が招待したはずのゲストに、こんな仕打ちをするとは!」

 カーティス様はバカにして笑っているわ。いやー、公爵令息様はこんな時も笑う余裕があるのね。さすが大物。

「おい!リアに何をするんだ!」

 マーフィー卿が本気で怒っている。今まで聞いたことのない低い声。そして、目がヤバい!しかし、恐怖はこれからだった。

「マリア、大丈夫か!」

 えっ?この声は……、お兄様だった。近くにいたの?うっ!この殺気はあの、裏庭の時と同じ殺気ね。ヤバい、こっちも怒っているわ!

「お、お兄様、私は大丈夫ですわ。保護魔法をかけていましたので、濡れてませんから。」

「おい!うちの可愛いマリアに、何でここまでする必要がある?お前は散々、うちのマリアを苦しめたくせにここまでするのか?マリアは、お前たちのことを知った後も、文句一つ言わず、むしろ祝福したいとまで言っていたんだぞ。それなのに、こんなことをするとはな!」
「…マーフィー卿。マリアを裏切って、この女を選んだのはお前だ!アバズレと言われようが、悪女と呼ばれようが、この女を選んだ以上は、しっかり教育しろ!それと…、リアだなんて馴れ馴れしく呼ぶな!」

「お兄様、私は大丈夫ですから、もうその辺で…」

 ヤバい、みんなお兄様のキレている姿を黙って見ているわ。シスコンだって勘違いされたら、お兄様に恋人ができなくなっちゃう。オロオロしていると、

「エル!落ち着きなさい!」

 その声は伯母様だった。

「貴女の可愛い妹に失礼したことは、私が謝ります。一応、私はこの2人の保護者になるわけですから…。マリア、ごめんなさいね。せっかく来てくれたのに、こんなことになって。2人には、私からしっかりと話をするから、許してくれる?」

「伯母様、私は大丈夫ですから、気になさらないでください。それよりも、こんなお祝いの席でお騒がせして、申し訳ありませんでした。私は平気なので、ガザフィー男爵令嬢のお召し替えを優先して下さいませ。身重なのですから、風邪をひいたら大変ですわ。」

「まあ、マリアは本当に優しい子ね。こんな時でも相手の体調を気遣ってくれるのだから。…ありがとう。こんな事になってしまったけど、私はマリアを本当の娘のように思っているわ。」
「オスカー、早く婚約者様を連れて行きなさい。」

「はい。」

 マーフィー卿は、私達に礼をして、顔色を悪くしたガザフィー男爵令嬢を連れて行った。

「皆様、お騒がせして申し訳ありませんわ。お詫びに、うちの特別なワインを今からお出ししますから、ぜひ召し上がって下さいませ。」

 伯母様はすごい人ね。上手く場の空気を変えているわ。

「マリア嬢、殿下とも話していたが、かなりあの兄上に可愛がられてるな。くっくっ。」

「周りにシスコンと思われないように、気をつけてもらいたいのですがね。それに…、笑い過ぎですわよ、カーティス様!」

「…無理だろうな。くっくっ。あのコリンズ卿が妹を溺愛とか…。すまない!面白すぎて。」


 後日、学園にて。

「マリア!またお母様がお茶会で、新しい噂を聞いてきたみたいよ。聞きたい?」

「今度は何よー?」

「この前の婚約パーティーで、悪女がマリアを虐めて、それを見たコリンズ卿が激怒したって話よ。でも、マリアは激怒したコリンズ卿を止めてたって本当?」

「まあそんな感じだったけど、ガザフィー男爵令嬢は悪女って呼ばれているの?」

「お母様達は、悪女って呼んでいたわよ。だってやっている事が悪女じゃないの。しかも、婚約パーティーの日、すごいドレスを着ていたって噂になっているわ。」

「ああ、あの赤いドレスね。派手ではあったわね。」

「噂だとね。妊娠中は体型が変わりやすいからって、デザイナーはオススメしなかったらしいわよ。でも、あの悪女は主役だからって、目立つデザインにこだわったとか。しかも、ダンスが酷かったって聞いたけど?」

「ダンスは緊張していたのかもしれないわ。ぎこちないダンスだったから。」

「噂だとね、妊娠して体がつらいからって、全く練習しなかったらしいわよ。」

「悪阻が酷かったのかしらね。しかし、噂が酷いわね。」

「元々、友人の恋人を略奪とかしてきた人で評判の悪い人だったらしいから、色々な人が悪評を流しているのかもしれないわ。マリアも巻き込まれて大変ね。でも相変わらず、マリアは可哀想って思われているから、大丈夫よ!」

 何が大丈夫なのかは知らないが、あのガザフィー男爵令嬢には関わらない方がいいわね。

 そして、約1ヶ月後に2人は結婚式を挙げた。
 マーフィー卿の強い希望で、小規模で簡単な式にしたらしい。参列したのは、お互いの家族のみだったようだ。
 ……親子3人で幸せになって下さい。

 そして、私は相変わらず放課後の図書室でレポート書きをしている。もうすぐ、レポートは終わりそうだ。カーティス様もハイスピードでやっている。この人は今更だが、とにかく出来る人らしい。そんな私達の横で、後輩のクラーク様も勉強している。
 この前はこの3人で、放課後にスイーツを食べに行って来た。リーナ達には、すごいメンバーだって笑われたが、普通に楽しかった。
 
 更に1ヶ月後、レポートを終えた私達は卒業試験を受けた。結果は…、合格でした。2人で結果を喜んでいると、クラスの友人達も喜んでくれた。
 ああ、これで独り立ちへの第一歩ね。とりあえず、この後は文官の試験を受ける事に決めた。試験までは後1ヶ月ある。それまで、ガリ勉でやっていこう。カーティス様も、爵位を引き継ぐまでは文官で働きたいらしく、文官の試験を一緒に受ける事になった。公爵家の領地の勉強は、終わっているからいいんだって言っていた。ライバルが1人増えるのは嫌だが、しょうがないわね。でも、最近はこの人とは戦友のような、仲間意識が出来てきた気がする。

 そして、文官の試験を迎えた私達。年上の人達に混ざって試験を受けるのは緊張したが、まあまあ出来たと思う。そして後日、学園に合格の通知が届いた。勿論、カーティス様もだ。2人で握手を交わした。これからは、同期になるねと。

 卒業は、長期休暇に合わせてする事になった。休暇の後からは、文官として働かせてくれるらしい。時期としては中途半端だが、王太子殿下や国王陛下がせっかくだからと、配慮してくれたようだ。コネと言われないように、しっかりやらないとね。

 そして、学園の最終日。友人達とはお別れだが、休みの日にすぐ会おうねって約束した。クラーク様は、私も来年卒業して2人を追いかけますよと言っていた。彼は優秀だから、簡単にやってきそうだわね。


 南国での学園生活を無事に終了した私だった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

3年前にも召喚された聖女ですが、仕事を終えたので早く帰らせてもらえますか?

せいめ
恋愛
 女子大生の莉奈は、高校生だった頃に異世界に聖女として召喚されたことがある。  大量に発生した魔物の討伐と、国に強力な結界を張った後、聖女の仕事を無事に終えた莉奈。  親しくなった仲間達に引き留められて、別れは辛かったが、元の世界でやりたい事があるからと日本に戻ってきた。 「だって私は、受験の為に今まで頑張ってきたの。いい大学に入って、そこそこの企業に就職するのが夢だったんだから。治安が良くて、美味しい物が沢山ある日本の方が最高よ。」  その後、無事に大学生になった莉奈はまた召喚されてしまう。  召喚されたのは、高校生の時に召喚された異世界の国と同じであった。しかし、あの時から3年しか経ってないはずなのに、こっちの世界では150年も経っていた。 「聖女も2回目だから、さっさと仕事を終わらせて、早く帰らないとね!」  今回は無事に帰れるのか…?  ご都合主義です。  誤字脱字お許しください。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。

氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。 聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。 でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。 「婚約してほしい」 「いえ、責任を取らせるわけには」 守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。 元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。 小説家になろう様にも、投稿しています。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました

八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます 修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。 その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。 彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。 ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。 一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。 必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。 なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ── そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。 これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。 ※小説家になろうが先行公開です

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

一夜限りの関係だったはずなのに、責任を取れと迫られてます。

甘寧
恋愛
魔女であるシャルロッテは、偉才と呼ばれる魔導師ルイースとひょんなことから身体の関係を持ってしまう。 だがそれはお互いに同意の上で一夜限りという約束だった。 それなのに、ルイースはシャルロッテの元を訪れ「責任を取ってもらう」と言い出した。 後腐れのない関係を好むシャルロッテは、何とかして逃げようと考える。しかし、逃げれば逃げるだけ愛が重くなっていくルイース… 身体から始まる恋愛模様◎ ※タイトル一部変更しました。

処理中です...