元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

文字の大きさ
上 下
132 / 161
南国へ国外逃亡できたよ

卒業パーティー 2

しおりを挟む
 偉い方が、私の前で立ち止まる。

「コリンズ伯爵令嬢、お初にお目にかかる。私はクリストファー・フォン・サース、この国の王太子をしている者だ。君の義兄のコリンズ卿にはいつも世話になっている。」

 マジかよ!王太子殿下とか関わりたくない部類なのに。義兄が世話になっているなら、変な態度取れないじゃない。しかも、クラスメイトの宰相子息が殿下に付いているようだ。アイツが私を教えたのか!顔が引きつるのを我慢して、頑張って微笑む私。

「マリア・コリンズと申します。こちらこそ義兄がいつもお世話になっております。」

 王族向けのカーテシーをする私。

「…なるほど。マリア嬢と呼んでもいいか?私のこともクリスと呼んでくれ。」

 嫌なパターンだわね。

「どうぞ、マリアとお呼び下さいませ。しかしながら、私のような者が王太子殿下を名前で呼ぶなど、恐れ多い事でございます。尊敬の意味を込めて、私は王太子殿下と呼ばせて頂きたく思いますわ。」

 笑顔で誤魔化す私。すると、殿下の背後から宰相子息が

「殿下、発言よろしいですか?」

「何だ?」

「このような場で、令嬢に名前で呼ぶように話されると、特別な関係と勘違いされる者が出てきます。それはやめた方がよろしいのでは。」

 多分、私への牽制と嫌味を込めて言っているのだろう。お前、殿下に名前で呼ぶ許可をもらったからって、調子に乗ってんなよ!みたいな。ふふっ!でも、今はそれが反対にありがたいのよ。思わず、嫌味な宰相子息に微笑んでしまった。

「……うっ。…コリンズ伯爵令嬢、私に何か?」

「いえ、まさにその通りだと思いまして。王太子殿下という、この国で最も高貴な方を、伯爵令嬢の私が名前で呼ぶことは、変な勘違いをされる方が出て来てしまうかもしれません。ですので、王太子殿下と呼ぶことを、どうぞお許し下さいませ。」

 宰相子息は黙ってしまった。私が予想外の反応をしたからだろう。
 ほら黙ってないて、早くどっかに連れて行けよ!他にも声を掛けてもらいたい令嬢が沢山いるんだろ。そんな目で宰相子息をみるが…

「そうか。残念だがそのうち慣れたら、ぜひ名前で呼んでもらいたい。では、ダンスはいいだろう。私と踊ってくれるか?」

 ちっ!宰相子息は使えないわね。

「…はい。喜んで。」

 何でこの国に来てまで、王族と関わらなければいけないの。あーあ、ムダに目立っちゃうわよ!
 殿下の手を取ってホールの中に進むと。みんなに注目されているのが分かる。最悪だ!

「マリア嬢、ダンスが上手いな!」

「殿下がお上手なので、踊りやすいからですわ。」

「噂で聞いたが、編入して来てすぐのテストで首席を取ったらしいな!どんなガリ勉な令嬢なのかと、興味を持っていたら、想像と全く違うので驚いた。しかも、魔法や芸術も得意だとは。」

「ふふっ!ガリ勉ですわ。この学園は、実力主義だと聞いたので、必死に勉強致しました。でも、次はどうなるのかは分かりません。もっと優秀な方は沢山いるのは分かってますから。私は、自分に出来ることを、必死にやって行くだけです。」

「自分でガリ勉って言い切る令嬢は、初めて見たぞ。しかもエルの義妹だって聞いたから、色々とエルに聞いても、殿下には関係ないですからとか言われて、話してくれないし。エルとは、家で話したりするのか?」

 エルって呼ぶくらい、仲が良いの?

「普段はあまり話す機会はありませんわ。養女の立場で、あまり馴れ馴れしくするのは迷惑かと思いまして。でも、親切な義兄だと思います。今日はこの会場まで、送り迎えをしてくれましたし。」

「へぇ。あのエルが送り迎えをするなんて、驚きだ。君は凄いな!エルは何時に迎えに来る?」 

 一体、何が凄いのか!

「20時くらいに来ると話しておりました。」

「20時?エルは随分と心配性なようだ。くっくっ。あのエルがね。せっかくだから、私も迎えに来たエルに会いたいから、その時は一緒に出て行ってもいいか?」

 えー!必要以上に関わりたくないのに。しかし、嫌とは言えない。

「勿論ですわ。きっと義兄は喜ぶと思います。」

 そして、ダンスが終わる。あー疲れた!もうダンスは終了。何か美味しいものでも、食べようか。食事やスイーツが並んでいるテーブルを見ると、すでにリーナ達が何かを食べている。私に気付いて手を振る友人達。私もそこへ行こう。歩き出した時だった。横から、パシャっと音がする。

「あらっ!ごめんあそば…。えっ?」

 早速、見知らぬ令嬢が私にジュースをかけて来た。勿論、保護魔法でジュースはかけようとした令嬢に跳ね返る。どこの国でも、ジュース攻撃は存在するのね。面倒だから、スルーしよう。だって、令嬢からは少し離れているし、コップは令嬢が持ってままだし、私は全然悪くないからね。しかも、リーナ達が笑って見ているわ。彼女たちには、私が保護魔法を使いこなしていることは知っているからね。しかし、保護魔法を知らないのか、悔しいのか、その令嬢は文句を言ってくるのであった。

「ちょっと!なんでジュースをかけるのよ。」

 コップを持った令嬢が怒っている。意味が分からない。

「保護魔法ですわ。」

 冷たく、無表情で言う私。

「…保護魔法?」

「はい。保護魔法です。」

「……。」

 その令嬢は黙ってしまった。その時、リーナ達が数人でやってくる。

「あら?保護魔法くらい、使えなくても存在くらいは知ってますわよね?」

「授業で学びましたから、知っていて当然ですわ。使いこなすのは難しいですけどね。」

 周りからクスクスと笑う声が聞こえる。

 恥ずかしくなったのか、令嬢は顔を赤くして去って行ってしまった。何だ、アイツ?
 後日談だが、その事件以降、誰にも絡まれなくなった。『保護魔法ですわ』と冷たく言い放つ私は、周りから見てかなり怖かったらしい。しかも、殿下とのダンスも、格の違いを見せつけられたわよと言われた。実力主義の学園だから、出来る人にケンカは売らないのだそうだ。それは良かった。頑張ります。

 クラスメイト達と美味しい料理やスイーツを楽しんでいると、20時近くになる。そろそろ行くか。義兄が迎えに来ることを話し、先に帰ることを友人達に告げる。そう言えば、迎えに来た義兄に殿下が会いたいと言ってたけど…、殿下はどこだ?ん?入り口近くで待ってる?慌てて、殿下の所に行く私。

「申し訳ありません。お待たせ致しました。」

「いや、私も今来たばかりだ。行こうか!」

 殿下がさり気なく、手を差し出す。エスコートしてくれるの?必要無いのに…。でも、無視出来ないし。殿下の手に自分の手をのせて、エスコートしてもらう。
 ホールの外に出て直ぐに、寡黙なお兄様が待っていてくれた。

「エル!君の義妹殿と友人になったぞ!」

 寡黙なお兄様をイジってるわ。やっぱり仲が良いのね。

「王太子殿下、私の義妹と友人にならなくて結構でございます。では、失礼致します。マリア、帰ろうか!」

 寡黙なお兄様が、私の手を引く。えー!

「くっくっ!そこまでしなくても。マリア嬢、また今度!」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したので前世の大切な人に会いに行きます!

本見りん
恋愛
 魔法大国と呼ばれるレーベン王国。  家族の中でただ一人弱い治療魔法しか使えなかったセリーナ。ある出来事によりセリーナが王都から離れた領地で暮らす事が決まったその夜、国を揺るがす未曾有の大事件が起きた。  ……その時、眠っていた魔法が覚醒し更に自分の前世を思い出し死んですぐに生まれ変わったと気付いたセリーナ。  自分は今の家族に必要とされていない。……それなら、前世の自分の大切な人達に会いに行こう。そうして『少年セリ』として旅に出た。そこで出会った、大切な仲間たち。  ……しかし一年後祖国レーベン王国では、セリーナの生死についての議論がされる事態になっていたのである。   『小説家になろう』様にも投稿しています。 『誰もが秘密を持っている 〜『治療魔法』使いセリの事情 転生したので前世の大切な人に会いに行きます!〜』 でしたが、今回は大幅にお直しした改稿版となります。楽しんでいただければ幸いです。

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

3年前にも召喚された聖女ですが、仕事を終えたので早く帰らせてもらえますか?

せいめ
恋愛
 女子大生の莉奈は、高校生だった頃に異世界に聖女として召喚されたことがある。  大量に発生した魔物の討伐と、国に強力な結界を張った後、聖女の仕事を無事に終えた莉奈。  親しくなった仲間達に引き留められて、別れは辛かったが、元の世界でやりたい事があるからと日本に戻ってきた。 「だって私は、受験の為に今まで頑張ってきたの。いい大学に入って、そこそこの企業に就職するのが夢だったんだから。治安が良くて、美味しい物が沢山ある日本の方が最高よ。」  その後、無事に大学生になった莉奈はまた召喚されてしまう。  召喚されたのは、高校生の時に召喚された異世界の国と同じであった。しかし、あの時から3年しか経ってないはずなのに、こっちの世界では150年も経っていた。 「聖女も2回目だから、さっさと仕事を終わらせて、早く帰らないとね!」  今回は無事に帰れるのか…?  ご都合主義です。  誤字脱字お許しください。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。

氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。 聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。 でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。 「婚約してほしい」 「いえ、責任を取らせるわけには」 守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。 元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。 小説家になろう様にも、投稿しています。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

処理中です...