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南国へ国外逃亡できたよ

卒業パーティー 1

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 学年末のテストを終え、もうすぐ私達は進級して2年生になる。そしてその前に、三年生の卒業パーティーがあるのだ。
 伯爵家のお母様がなぜが張り切りだして、高そうなドレスを作ってくれた。ドレスに合わせたアクセサリーと靴も。娘がいたら、ドレスやアクセサリーを選んだりしたかったから、嬉しいと言っていた。

 この伯爵家の人達はみんな親切だと思う。使用人達も、色々と私に気を遣ってくれているのがわかる。だから、使用人達に得意の治癒魔法で手荒れ、肌荒れ、シミ・ソバカス、腰痛、怪我の後遺症などを治してあげた。他に何も出来ないからね。
 しかし、私は知らなかった。この国で治癒魔法を使える人は、かなり少ないということを。
 使用人達は、かなり驚いた様子だったが、すごい喜んでくれたからいいかな。しかし、お父様とお母様は複雑そうだ。

「マリア、使用人達があなたの治癒魔法に感謝していたわ。ありがとう。…でも、知らない人や信用出来ない人には見せないで。この魔法はかなり凄い事なのよ。マリアはいるだけでも可愛くて目立つの。しかも、優秀で魔力も凄い。実はテストの後に、色々な子息の家からお茶会の招待を受けて、すごい事になっているのよ。これで、治癒魔法まで使えるとなると、更に大変なことになるわ。姉様やオスカーから茶会は上手く言って断るようにと言われているから、今は断っているけど。はぁー。うちの娘がモテすぎてつらいわ。」

「マリアの実家は、本当に男爵家なのかって不思議なくらいだよ。王族に嫁いでもおかしくないくらい、マリアは凄いからね。王宮に行くと、マリアくらいの子息のいる家から、マリアのことを色々と聞かれるんだよ。嬉しいけど、複雑な気持ちになるね。」

 そうなんだ…。元男爵令嬢に見えなかった?迷惑かけちゃったわ。

「お父様・お母様、ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。今後は気をつけますわ。」

「貴女を利用する悪人が寄ってくるかもしれないから、気を付けてね。」

 そして数日後、学園の卒業パーティーの日。メイド達が気合いを入れて私を磨いてくれた。薄い水色のドレスに、沢山の小さなダイヤモンドが散りばめられている。これは高そうだ。ヘアメイクが終わると、メイドがお母様を呼ぶ。

「まあ!やっぱりうちのマリアは凄いわね。今日はマリアが主役かもしれないわ。ふふっ!気を付けて言って来なさい。」

「お母様、ステキなドレスをありがとうございます。とても気に入りましたわ。大切にします。」

「それは良かったわ!楽しんで来なさいね。」

 玄関ホールに行くと、寡黙なお兄様が待っていた。私を見て一瞬、目を見開いた気がする。きっと、この高そうなドレスにでも驚いたのだろう。もしかして、金食い虫みたいに思われてたりして…。
 このお兄様とは、挨拶しかしたことがない。無理に関わって嫌われたくないからね。

「エル、マリアを学園まで送ってくれるかしら?」

「はい。そのつもりで待ってました。」

 げっ?気不味いから、1人がいいのだけど。

「お母様、1人で大丈夫ですわ。忙しいお兄様に迷惑をかけたくないですし。」

「エルは今日は休みだから、それくらい大丈夫よね?」

「はい。大丈夫です。マリア、気にしないでくれ。学園ホールの入り口までエスコートする。」

 そこまで言われると、断れないわね。

「…ありがとうございます。」

 そして、馬車に乗る私達。

 ……しーん。

 予想通りに会話がない。でも、無理に話しかけてもお互い疲れるだけだから、黙って窓の外を眺める。あっ!夕暮れが綺麗。

 学園に着くと、パーティー会場の入り口までエスコートしてくれる。他の令嬢達がチラチラ見ているわ。わかります!このお兄様、カッコいいですもんね。さすが近衛騎士だけあって、エスコートの所作も綺麗だ。

「お兄様、エスコートありがとうございました。」

「いいんだ。帰りもこの辺で待っているから、楽しんで来なさい。」

「えっ?お兄様、そこまでは大丈夫ですわ。1人で大丈夫ですから。」

「マリアはうちの大切な姫だから、帰りも迎えに来る。20時くらいに終わるはずだから、それくらいに待ってる。」

「…ありがとうございます。よろしくお願いします。」

 初めてまともに会話したわね。さり気なく、姫と呼ばれてしまったし。ふぅ。帰りは時間厳守ね!
 寡黙なお兄様が帰っていくと、リーナに声を掛けられる。ニヤニヤするリーナ。

「あの方、近衛のコリンズ卿よね?カッコいいって有名の!お似合いじゃない!」

「ただの義理の兄よ!今日、初めてまともに会話したのわ。」

「ふっふっ!リアって、カッコいい人にあまり興味持たないわよね。可愛いのにもったいないわ。」

「かっこ良すぎる人と関わると、碌なことがないからね。カッコいい人は、遠くから眺めるくらいがちょうどいいのよ。」

「まあね。嫉妬や僻みとかに耐えられるくらい好きなら我慢するけど、リアはそう言うのは、面倒なタイプでしょ?私もだけどね。」

 2人で話していると、他のクラスメイト達もやってくる。最近は、クラスの令嬢達とは仲良く楽しく過ごせているから気楽だ。

 時間になり、学園長や生徒会長、南国の王太子殿下が挨拶して、パーティーが始まるのであった。
 初めて見る生徒会長や王太子殿下は、お約束に美形だった。
 そう言えば、私の国の貴族学園もそろそろ卒業式だわね。生徒会長や副会長は元気かな?沢山お世話になったのに、お礼も言えなかった…。何だか寂しくなりそうになるが、堪える私。

 ダンスが始まる。一曲目は王太子殿下と、三年生の前生徒会長達が踊るらしい。殿下も前生徒会長も特定の相手はいないらしく、三年生の生徒会に所属していた令嬢と踊っていた。ふーん。王太子殿下って言ったら幼少期から婚約者がいるのかと思っていたが、南国は割と自由なのね。

 一曲目が終わり、二曲目からは自由に他の生徒達も踊るようで、パートナーとホールの中へ進んでいく。
 私はダンスという気分ではないし、特にパートナーもいないので、スイーツコーナーを見ていると、自分の周りにいた人が、スッといなくなり道が出来ている。私も慌てて、人のいる方に移動して道をあける。誰か偉い人が歩いて来た?げっ、あの方は!その偉い方は、私の前で、ピタっと止まるのであった。

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