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マリーベル編〜楽しく長生きしたい私
閑話 シールド公爵 1
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親友で王都騎士団長をしているエリックが、辺境伯領からの遠征から帰って来た時のことである。
辺境伯領で魔物討伐をしていた令嬢が、アンネマリーに生き写しであったというのだ。まだデビュー前だろうと言う、アンネマリーに似た美少女は、辺境伯の令嬢や騎士達に混ざって魔物討伐をして帰る途中、偶然、王都騎士団に会い、治癒魔法で騎士達の怪我を治してくれたらしい。騎士達の中には、恋に落ちた者もいただろうなと、エリックは話す。
アンネマリーそっくりの美少女なんて、そうはいる訳がないと、その時はその話をそこまで気にしていなかった。そこそこ綺麗な令嬢が、怪我をした時に助けてくれたから、話が美化されているのだろうと。誰だって、弱っている時に親切にしてくれた相手は、美しく見えるだろうから。しかしエリックは、真顔で生き写しだと言って聞かないのであった。
それから、しばらくしてある噂を耳にする。フォーレス侯爵家の令嬢は、亡くなったスペンサー侯爵令嬢によく似ていると。その時も、だから何なんだと。フォーレス侯爵家なら、アンネマリーの従姉妹になるのだから、多少は似ているだろう。私の愛するアンネマリーは、あの時に亡くなったのだ。似ているから何だというのだ。
しかしある日、貴族学園の剣術の授業に行って来たエリックは、とても興奮していた。剣術の授業に参加していた令嬢の中に、噂のフォーレス侯爵令嬢がいたというのだ。
エリックは、辺境伯領でのお礼を言ってなかったからと、話しかけてみたというのだが、話し方や声まで似ていたと言う。辺境伯領で見た時よりも、美しく成長して、更に似てきたと。お前も今度の授業の時に、一緒に来れば見れるから来いと言う。あの令嬢は、美しいだけでなく性格も良いし、勉強も出来て首席らしいから、お前も気にいると思う。早くしないと、誰かにまた取られるぞと言うエリック。バカバカしい。こっちは、公爵家と騎士団の仕事で忙しいのだ。この歳にもなって、令嬢1人見るために、貴族学園に行く時間なんてないのだと言って、全く相手にしなかった。しかし、その時の自分の判断を後で後悔する。
王家主催のデビュタントの夜会の日であった。国王陛下の挨拶の後、いつも国王や王太子殿下がファーストダンスを踊り、ダンスパーティーが始まる。今回は王弟のフォーレス侯爵もホールに出てきた。王族がデビュタントを迎えると、国王陛下達に混ざってファーストダンスを踊るから、フォーレス侯爵家の令嬢が今年はデビュタントだから、一緒に踊るのだろう。そういえば、噂の令嬢だったなと思い出す。
しかし、フォーレス侯爵にエスコートされて出て来た令嬢を見て驚愕する。その令嬢は……、私がずっと忘れられずにいた、アンネマリーそっくりの令嬢だったのだ…。そっくりというより、アンネマリーが戻ってきたと言ってもいいくらいだった。
父である侯爵にエスコートされ、恥ずかしそうにする令嬢。それが、初々しくて可愛いとみんな思ったのだろう。
「まあ、可愛いわね。」
「フォーレス侯爵が嬉しそうだわ。」
「ふふっ。美しい親子ね。」
とか、みんなが口にしている。しかし、ダンスが始まると、一緒に踊っている国王陛下夫妻や、王太子殿下夫妻に引けを取らない、完璧なダンスを踊る令嬢。父である侯爵と楽しそうに踊りながら、美しく微笑む姿に会場にいる誰もが見惚れていたと思う。微笑む表情まで、アンネマリーそっくりだ。私がずっと見たかった笑顔…。
「今年のデビュタントは、あの美しい姫が主人公ね。」
「きっと明日、沢山の縁談の話がフォーレス侯爵家にくるわよ。」
彼女はその後、デビュタントのダンスを従兄妹のスペンサー卿と踊っていた。アンネマリーの弟であるスペンサー卿は、どんな思いで一緒に踊っているのだろう。ニコニコとスペンサー卿を見つめる彼女。周りの子息が自分を見ているなんて、全く気付いてないのだろう。
気付くと、彼女から目が離せなくなっていた。そんな時に、エリックに話しかけられる。
「よく似ているだろ!生写しだよ。しかもお前、目で追い過ぎだ。くっ、くっ。良かったな。新しい恋が始まったようで!」
「エリック、黙れ!」
私にはアンネマリーだけなのだ。彼女の思いだけを胸に、今までやってきたのだから。
それなのになぜ、彼女を目で追ってしまうのだろう?
彼女は国王陛下や王太子殿下と踊る。身内だから、当然か。しかし、どうしてマディソンまで踊るのだ?
いつの間に知り合ったのだろう。マディソンの彼女を見る目は、他の令嬢に対する目と違う。彼女も、マディソンと楽しそうに踊る。初対面とは思えない。
マディソンの後は、ファーエル公爵子息、学園の先輩か。その後も身内を中心にダンスを踊る彼女。辺境伯閣下まで踊るのか?しかも、かなり親しげだ。その後は、辺境伯閣下の側近と思われる若い騎士と踊る。あの若い騎士とは、マディソンやファーエル公爵子息達よりも、更に親しそうだった。あの騎士は誰だろう?
「あの騎士は、辺境伯閣下の側近のフィークス卿だ。なかなかの剣の腕らしく、フォーレス侯爵令嬢と辺境領で会った時に、護衛で付いていた。かなり仲が良く見えだぞ。令嬢にぴったり付いていたし、令嬢もかなり心を許しているようだったな。辺境領の知り合いの騎士が教えてくれたが、魔物討伐で腕を失う大怪我をしたフィークス卿の為に、病院に駆けつけて、治癒魔法で腕を治してあげたらしい。そこから更に、仲を深めたようで、今ではフィークス卿の身分違いの恋を、辺境伯閣下と、辺境領の騎士達が応援しているって聞いたぞ。辺境伯閣下の跡取りの令嬢と仲良くて、魔法が得意なフォーレス侯爵令嬢を、辺境伯閣下は娘のように可愛がっていて、息子がいたら嫁に欲しかったとまで言っているらしい。で?…こちらの公爵閣下はどうするんだ?」
コイツは昔からこうだった。こんな性格だから、無駄に顔見知りが多くて、色々な情報を持っている。何も言えない私にエリックは、とりあえずダンスでも誘ってみるかと言い出す。タイミングを見て、俺が話し掛けてみると。
そのタイミングは、すぐに来た。彼女はさっきの騎士と踊った後、知らない令息達にダンスを誘われそうになるのを上手くかわして、ホールの中を見回しながら歩き出す。誰かを探しているのか?しかし、図々しいエリックは、そんなことを気にせずに話しかけるのであった。
学園の授業でお世話になっている騎士団長に言われたら、なかなか断れるはずはない。彼女は、私でよければと、引き受けてくれるのであった。
こんな風に令嬢とダンスをするのは、いつ以来だろうか?何か話をすれば、いいのだろうが、美し過ぎる彼女を目の前にして、何も言えない自分。彼女も無理には話そうとはしないようだ。見知らぬ、かなり年上の私だから、なかなか話しにくいのかもしれないが。しかし、突然彼女が話し掛けてくれる。
「あの、勘違いしていたら、申し訳ありません。もしかして、右足を痛めていませんか?」
声だけでなく、喋り方までアンネマリーにそっくりだった。
いや、それよりも、彼女は私の足の怪我に気付いていた。誰にも気付かれなかったのに。右足首を昔痛めたと言うと、彼女はすぐにダンスしたまま、治癒魔法をかけてくれたようだ。一瞬で足が軽くなり、楽になって驚いた私に、他にも古傷がないか聞いてくれたのだ。そして左手のことを話してみるが、それも一瞬で治してくれる。私は嬉しくて、自然に笑顔になっていたようだ。彼女も、私を見て優しく微笑んでくれる。ああ、この微笑みは…。昔、まだ仲が良かった頃に、アンネマリーが私に向けてくれた、あの微笑みだ。今世ではもう逢えないと思っていた、愛しい人と同じ微笑み。
「体がボロボロになっても、戦い続ける勇敢な騎士様を尊敬いたしますわ。しかし、お体は大切になさって下さいませ。これからもお怪我に気をつけて。」
彼女は私の体を気遣うことを話している。優しい子なんだろう。そう言えば、エリックも性格が良いと前に言っていた。
曲が終わり、私に礼を言って、去ろうとする彼女。しかし私は、彼女の手を離したくなかったようだ。
「あの、手を離して頂いても?」
手を離さない私に、動揺したような彼女。
「…はっ。待ってくれ!君に… 」
君に今日のお礼をしたいから、後日、会ってくれないだろうか?と聞こうとした時だった。
「マリーベル嬢、王太子殿下がお呼びです。」
ここでマディソンが彼女を呼びに来たようだ。しかも彼女を家名でなく、名前で呼ぶ。マディソンの目つきが鋭い。感情的になってないか?
「シリル様?」
マディソンは彼女に名前で呼ばせているのか?あのマディソンが?信じられない。
「マリーベル嬢、さぁこちらに。」
普段、感情を全く表に出さないマディソンが、彼女の腰を抱くようにして、強引に連れて行ってしまった。
あり得ないことが多すぎて、2人の後ろ姿を眺めることしか出来なかった…。
「早くしないと、誰かに取られるって言っただろ?」
エリックはそう言って、私に何かを企んだような笑みを向ける。
確かにその通りだと思う。家柄や血筋だけでなく、美しくて、心優しい彼女は周りは放っておかないだろう。アンネマリーだけだと心に決めていた私ですら、また会いたいと思ってしまっているのだから。
私はどうしたというのだろう?自分でも久しぶりに感じる、この心のザワつきが何なのか、よく分からないのであった。
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エリックは、辺境伯領でのお礼を言ってなかったからと、話しかけてみたというのだが、話し方や声まで似ていたと言う。辺境伯領で見た時よりも、美しく成長して、更に似てきたと。お前も今度の授業の時に、一緒に来れば見れるから来いと言う。あの令嬢は、美しいだけでなく性格も良いし、勉強も出来て首席らしいから、お前も気にいると思う。早くしないと、誰かにまた取られるぞと言うエリック。バカバカしい。こっちは、公爵家と騎士団の仕事で忙しいのだ。この歳にもなって、令嬢1人見るために、貴族学園に行く時間なんてないのだと言って、全く相手にしなかった。しかし、その時の自分の判断を後で後悔する。
王家主催のデビュタントの夜会の日であった。国王陛下の挨拶の後、いつも国王や王太子殿下がファーストダンスを踊り、ダンスパーティーが始まる。今回は王弟のフォーレス侯爵もホールに出てきた。王族がデビュタントを迎えると、国王陛下達に混ざってファーストダンスを踊るから、フォーレス侯爵家の令嬢が今年はデビュタントだから、一緒に踊るのだろう。そういえば、噂の令嬢だったなと思い出す。
しかし、フォーレス侯爵にエスコートされて出て来た令嬢を見て驚愕する。その令嬢は……、私がずっと忘れられずにいた、アンネマリーそっくりの令嬢だったのだ…。そっくりというより、アンネマリーが戻ってきたと言ってもいいくらいだった。
父である侯爵にエスコートされ、恥ずかしそうにする令嬢。それが、初々しくて可愛いとみんな思ったのだろう。
「まあ、可愛いわね。」
「フォーレス侯爵が嬉しそうだわ。」
「ふふっ。美しい親子ね。」
とか、みんなが口にしている。しかし、ダンスが始まると、一緒に踊っている国王陛下夫妻や、王太子殿下夫妻に引けを取らない、完璧なダンスを踊る令嬢。父である侯爵と楽しそうに踊りながら、美しく微笑む姿に会場にいる誰もが見惚れていたと思う。微笑む表情まで、アンネマリーそっくりだ。私がずっと見たかった笑顔…。
「今年のデビュタントは、あの美しい姫が主人公ね。」
「きっと明日、沢山の縁談の話がフォーレス侯爵家にくるわよ。」
彼女はその後、デビュタントのダンスを従兄妹のスペンサー卿と踊っていた。アンネマリーの弟であるスペンサー卿は、どんな思いで一緒に踊っているのだろう。ニコニコとスペンサー卿を見つめる彼女。周りの子息が自分を見ているなんて、全く気付いてないのだろう。
気付くと、彼女から目が離せなくなっていた。そんな時に、エリックに話しかけられる。
「よく似ているだろ!生写しだよ。しかもお前、目で追い過ぎだ。くっ、くっ。良かったな。新しい恋が始まったようで!」
「エリック、黙れ!」
私にはアンネマリーだけなのだ。彼女の思いだけを胸に、今までやってきたのだから。
それなのになぜ、彼女を目で追ってしまうのだろう?
彼女は国王陛下や王太子殿下と踊る。身内だから、当然か。しかし、どうしてマディソンまで踊るのだ?
いつの間に知り合ったのだろう。マディソンの彼女を見る目は、他の令嬢に対する目と違う。彼女も、マディソンと楽しそうに踊る。初対面とは思えない。
マディソンの後は、ファーエル公爵子息、学園の先輩か。その後も身内を中心にダンスを踊る彼女。辺境伯閣下まで踊るのか?しかも、かなり親しげだ。その後は、辺境伯閣下の側近と思われる若い騎士と踊る。あの若い騎士とは、マディソンやファーエル公爵子息達よりも、更に親しそうだった。あの騎士は誰だろう?
「あの騎士は、辺境伯閣下の側近のフィークス卿だ。なかなかの剣の腕らしく、フォーレス侯爵令嬢と辺境領で会った時に、護衛で付いていた。かなり仲が良く見えだぞ。令嬢にぴったり付いていたし、令嬢もかなり心を許しているようだったな。辺境領の知り合いの騎士が教えてくれたが、魔物討伐で腕を失う大怪我をしたフィークス卿の為に、病院に駆けつけて、治癒魔法で腕を治してあげたらしい。そこから更に、仲を深めたようで、今ではフィークス卿の身分違いの恋を、辺境伯閣下と、辺境領の騎士達が応援しているって聞いたぞ。辺境伯閣下の跡取りの令嬢と仲良くて、魔法が得意なフォーレス侯爵令嬢を、辺境伯閣下は娘のように可愛がっていて、息子がいたら嫁に欲しかったとまで言っているらしい。で?…こちらの公爵閣下はどうするんだ?」
コイツは昔からこうだった。こんな性格だから、無駄に顔見知りが多くて、色々な情報を持っている。何も言えない私にエリックは、とりあえずダンスでも誘ってみるかと言い出す。タイミングを見て、俺が話し掛けてみると。
そのタイミングは、すぐに来た。彼女はさっきの騎士と踊った後、知らない令息達にダンスを誘われそうになるのを上手くかわして、ホールの中を見回しながら歩き出す。誰かを探しているのか?しかし、図々しいエリックは、そんなことを気にせずに話しかけるのであった。
学園の授業でお世話になっている騎士団長に言われたら、なかなか断れるはずはない。彼女は、私でよければと、引き受けてくれるのであった。
こんな風に令嬢とダンスをするのは、いつ以来だろうか?何か話をすれば、いいのだろうが、美し過ぎる彼女を目の前にして、何も言えない自分。彼女も無理には話そうとはしないようだ。見知らぬ、かなり年上の私だから、なかなか話しにくいのかもしれないが。しかし、突然彼女が話し掛けてくれる。
「あの、勘違いしていたら、申し訳ありません。もしかして、右足を痛めていませんか?」
声だけでなく、喋り方までアンネマリーにそっくりだった。
いや、それよりも、彼女は私の足の怪我に気付いていた。誰にも気付かれなかったのに。右足首を昔痛めたと言うと、彼女はすぐにダンスしたまま、治癒魔法をかけてくれたようだ。一瞬で足が軽くなり、楽になって驚いた私に、他にも古傷がないか聞いてくれたのだ。そして左手のことを話してみるが、それも一瞬で治してくれる。私は嬉しくて、自然に笑顔になっていたようだ。彼女も、私を見て優しく微笑んでくれる。ああ、この微笑みは…。昔、まだ仲が良かった頃に、アンネマリーが私に向けてくれた、あの微笑みだ。今世ではもう逢えないと思っていた、愛しい人と同じ微笑み。
「体がボロボロになっても、戦い続ける勇敢な騎士様を尊敬いたしますわ。しかし、お体は大切になさって下さいませ。これからもお怪我に気をつけて。」
彼女は私の体を気遣うことを話している。優しい子なんだろう。そう言えば、エリックも性格が良いと前に言っていた。
曲が終わり、私に礼を言って、去ろうとする彼女。しかし私は、彼女の手を離したくなかったようだ。
「あの、手を離して頂いても?」
手を離さない私に、動揺したような彼女。
「…はっ。待ってくれ!君に… 」
君に今日のお礼をしたいから、後日、会ってくれないだろうか?と聞こうとした時だった。
「マリーベル嬢、王太子殿下がお呼びです。」
ここでマディソンが彼女を呼びに来たようだ。しかも彼女を家名でなく、名前で呼ぶ。マディソンの目つきが鋭い。感情的になってないか?
「シリル様?」
マディソンは彼女に名前で呼ばせているのか?あのマディソンが?信じられない。
「マリーベル嬢、さぁこちらに。」
普段、感情を全く表に出さないマディソンが、彼女の腰を抱くようにして、強引に連れて行ってしまった。
あり得ないことが多すぎて、2人の後ろ姿を眺めることしか出来なかった…。
「早くしないと、誰かに取られるって言っただろ?」
エリックはそう言って、私に何かを企んだような笑みを向ける。
確かにその通りだと思う。家柄や血筋だけでなく、美しくて、心優しい彼女は周りは放っておかないだろう。アンネマリーだけだと心に決めていた私ですら、また会いたいと思ってしまっているのだから。
私はどうしたというのだろう?自分でも久しぶりに感じる、この心のザワつきが何なのか、よく分からないのであった。
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