元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

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マリーベル編〜楽しく長生きしたい私

選択授業

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 学園に入学して慣れてきた時期から、選択授業が始まる。教養を中心とした、刺繍や音楽・淑女マナーなど令嬢向きの授業と、剣術や馬術、戦闘魔法を教える騎士向きの内容の授業がある。どちらを選んでもよいが、刺繍や音楽などは令嬢しかいないし、剣術と馬術・魔法は令息か、騎士の家門の令嬢がほとんどである。
 私は迷わず、剣術と馬術・魔法を選択した。だって、王都に来てから、魔法と馬術はやってないから、鍛えたいと思って。剣術は朝に、レジーナと鍛練しているんだけどね。
 レジーナとユーリア、そして同じ聖女子出身で将来は魔術師団に入団希望している、伯爵令嬢のローレライが一緒の選択授業になった。ミッシェルやエリーゼ達、他のメンバーは剣術が出来ないからと令嬢向けの選択授業にしたが、その授業はどちらかと言うと、今まできちんと淑女教育をしてこなかった下位の貴族向けの内容らしく、つまらないようだ。適当に刺繍して遊んでいると言っていた。…遊びのレベルなのね。

 今日は剣術をやるようなので、まずは素振りから練習させられる。レジーナやユーリアは物足りなそうにしている。どうやら私達、令嬢にはあまりキツい内容の練習はさせたくないらしい。ちなみに、ほとんどが令息で令嬢は私達4人のほかに、違うクラスの令嬢が2人いるだけ。私達、浮いているのかしら?
 軽すぎる練習が飽きたので、私達、女性だけで模擬戦をやらせてもらうことにした。先生は嫌そうだったが、何かあれば、治癒魔法で治しますと言ったら渋々、オッケーしてくれた。

 6人という少ない人数が割と楽しめた。街中で悪い奴に絡まれたというシチュエーションにして、ヒロイン役、悪者役、助けに来た騎士役に分かれて、台詞も入れながら戦ってみた。すでに模擬戦ではなくなっていたが、一応、戦うシーンがメインだから許して!みんなそれぞれ強いから、迫力があって楽しめました。

 剣術の授業は時々、騎士団の騎士様が来て指導してくれることがあるらしく、ある日、王都騎士団長と、数人の騎士様が来てくれた。大した指導をしてくれない、学園の先生の授業に飽きていた私達は、本格的に指導してくれそうな気がして、嬉しくなってしまった。
 生徒が横2列に並び、騎士様達に挨拶をして、授業が始まる。私達、令嬢には2人の騎士様がついてくれることになった。2人の騎士様が私やレジーナを見て、何かを話している。1人が離れたと思ったら、騎士団長と戻ってきた。ん、そういえばあの騎士団長は前に辺境領で会った人では。思わずレジーナと目を合わせる。
 やって来た騎士団長は、私達を見て挨拶をしてくれた。

「御令嬢方、辺境領ではわが騎士団が大変お世話になったこと、感謝申し上げたい。あの時、きちんとお礼を伝えることが出来なかったことが、心残りであったので、今日再会できた事を嬉しく思う。」
「私は王都騎士団長を務めるエリック・ブラウンだ。御令嬢方の名前を伺っても、いいだろうか?」

 騎士団長に聞かれたら、きちんとしないとね。

「レジーナ・グレイブと申します。」

「マリーベル・フォーレスと申します。」

「時々、貴族学園の授業に出る事があるから、どうぞよろしく!」

「こちらこそ、ご指導、よろしくお願い致します。」

 ということで、指導に来てくれた騎士様達は親切に指してくれる。なんだ!学園の先生より、丁寧に教えてくれるじゃん。気付いたら、私達6人は騎士様達と仲良くなっていた。よし、いい講師を見つけたわね。学園の剣術の先生は微妙だしね。

 騎士団長は時々来るとは言っていたが、週に2回くらいは来てくれるので、ありがたい。王都騎士団の人達はみんな親切だしね。しかし、騎士団の人たちと和気あいあいとやっていたら、殺気を感じるようになってきた。ん、この殺気は、もしかして…。そっと背後を振り返ると……。
 ひぃー!やはりあの殺気は義兄だった。なんで、怒っているの?あの笑顔が恐ろしいんだけど。レジーナやユーリアは私と義兄の様子を見て、何かを悟ったらしく、目が笑っている。腹黒め!助けてよー。私が目で訴えたのが分かったのか、ユーリアが頷きながら動く。

「フォーレス様はかなりの剣の腕前だとお聞きしましたわ。マリーベルったら、本当はフォーレス様にも剣術を教えてもらいたいらしいのですが、恥ずかしがって言えないみたいなのです。どうか、マリーベルに剣術を教えてあげてもらえませんか?」

「そうだったのか!教えてくれて、ありがとう。」
「マリー、私が見てあげるから、こっちへおいで。」

 ちょっとー!ユーリア、何言ってんのー!!しかし、満面の笑みの義兄に嫌とは言えず、練習場の隅へドナドナされる。その時、

「マリー。最近、実家に帰って来てないから、今日は夕飯を食べに帰ってくるよね?一緒にタウンハウスに帰れるよね?」

 それ、断る選択肢は無いやつだよね?

「も、勿論ですわ。」

 断る勇気を持ってない私は、放課後、義兄に手を引かれ馬車まで向かうのであった。
 馬車に乗り込むと、義兄に手をぐいっと引かれ、義兄の膝の上に横向きで座らされる。ひぃー、何なのよ!義兄は私の腰をしっかりと抱きしめ、耳元で

「マリーは最近、剣術の騎士達と仲良くし過ぎだね。あまり、他の男と仲良くしないでね。気分が悪いから!」

「……?」

「マリー、分かった?返事して。」

「仲がいいのではなくて、ただ親切にして頂いているだけですわ。」
「痛っ!」
 
 義兄は私の首元を軽く甘噛みした?ちょっと何なの?

「お兄様、何をされました?」

「言葉で分からないから、軽く噛んだだけ。」

 その後、タウンハウスに着くまで、義兄は一言も話さなかった。そのかわり、ぎゅっと抱きしめ、首元には義兄の唇があたったまま。何なんだコレ?息があたってますけど!!

 タウンハウスに着くと、母がいて、突然帰って来たことを喜んでいた。義兄はその時は、普通に戻っていた。
 お母様の前で猫被ってる?本当に何なのよ!!



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