65 / 161
マリーベル編〜楽しく長生きしたい私
閑話 男爵令嬢 2
しおりを挟む
入学したばかりの彼女は、フォーレス侯爵令息と何となく距離を置いているようにも見えた。義理の兄妹とはいえ、仲がよければ多少の言葉は交わしてもおかしくないのに、彼女は近くに来るような事もしないし、挨拶すらしない。性格が大人しい方なのかと思ったが、同じ聖女子学園から来た友人達とは、とても仲がいいようで、みんなで固まって楽しそうに話をしている。
反対に彼の視線の先には彼女がいる事に気づいてしまった。彼女はフォーレス侯爵令息をどう思っているかは分からないが、彼は義妹である彼女を意識していると思う。彼女を心配して見ているのか、話がしたくて見ているのかは分からないが…。
入学式の次の日、生徒会長のファーエル公爵令息が彼女に会いに来た。今は王家の生徒はいないので、公爵家の生徒会長が、この学園では1番身分が高い方になる。華やかな美形の王子様のような方で、この方に憧れている令嬢はとても多い。そんなすごい方が、新入生の彼女にわざわざ会いにくるなんて。クラスが一瞬ざわつく。しかし、彼女や友人達は何か警戒したような表情だ。普通の令嬢なら、あんなすごい方が自分に会いに来たら、多少は浮かれてしまうのに。聖女子学園から来た令嬢達は、相手の身分や見目で判断しないのかしら。彼女は、緊張感のある表情で廊下に出て行った。廊下で彼女と生徒会長が、どんなやり取りをしているのかは、ここからは分からないが、フォーレス侯爵令息は、心配そうに廊下の方を見つめていたと思ったら、そのまま廊下に出て行ってしまった。
少ししてから、2人で教室に戻って来るが、怒りを隠したような笑顔のフォーレス侯爵令息と、何となく怯えた表情の彼女。何があったのかしら?フォーレス侯爵令息に友人達が話しかけて、事情を聞いている。
「アル、何があった?怒っているのか?」
「生徒会長が以前、領民を助けてくれたお礼だと言って、強引に義妹をお茶会に誘おうとしてたから、丁重に遠慮させてもらって来たよ。義妹も公爵家からの誘いを断れなくて、困っていたようだし。」
「あの生徒会長が、お茶会のお誘いに来るなんて初めて聞いたな。義妹殿は、生徒会長に気に入られているんじゃないか?」
「迂闊にそんな茶会に参加したと噂になったら、生徒会長の婚約者候補だとか勘違いされて、大変だろう。女狐どもに目をつけられそうだ。だから今回は遠慮させてもらって来たよ。」
「あのアルが義妹の為にそこまでするなんて。かわいいのは認めるが…。お前、変わったなー!」
義妹の為に、公爵家のお茶会を断って来た?そんなに大切なの?それとも、もしかして彼女のこと……。
その日の放課後、彼は義妹の手を繋いで帰って行った。あんなに嬉しそうな彼の笑顔は初めて見た。あんな風に、笑う人だったのね。
彼の友人や彼女の友人達は、面白そうに2人を見送っていたが、私は心が壊れそうだった…。
2人が帰った後、図書室で予習しようとするが、全く身に入らない。こんなことは初めてだった。
気持ちが落ち込んだままいたが、外が暗くなってきたので、寮に帰ろうと思い、教室に荷物を取りに行く。ふと。フォーレス侯爵令嬢の机を見ると、机の中に教科書やノートが残されたままになっている事に気付いた。学年で首席なのに、予習とかしてないのかしら?
…悔しい!私はこんな気持ちで、毎日必死なのに。どうして彼女ばかり!いい家に引き取られて、綺麗で、優秀だなんて!しかも、あの方に大切にされて!
気がつくと、彼女の教科書をビリビリに破いていた。……これで、少しは困ればいいわ。
次の日、登校すると彼女の姿が無かった。そして、フォーレス侯爵令息の機嫌が悪い。彼女の友人達は、破られた教科書の事を話しているようだった。酷いとか、いじめ?とか言っているのが聞こえて来る。
ふふっ。ショックで帰ってしまったようね。このまま、来なくなればいいのに。これくらいの事で、ショックを受けるなんて、これだから、高位貴族のお嬢様は困るわ。
フォーレス侯爵令息は、彼女を心配して、昼休みに彼女の寮まで訪ねたらしい。
「アル、義妹殿はどうだった?」
「顔色は悪いし、泣いていた。犯人を絶対捕まえるし、マリーは俺が守るって話して来たんだ。」
「かわいい義妹が嫌がらせをされて、怒りたい気持ちは分かるが、落ち着けよ!犯人はまたあの令嬢かな?」
「ミラー伯爵令嬢だろ?前にアルに付き纏っていた。アルに好意を寄せている令嬢に、嫌がらせをしているって、有名だもんな。」
「ああ。アイツは従姉妹だからと言って、子供の頃から、いつも付き纏ってきて、大迷惑なんだ。どうせ、かわいいマリーに嫉妬しているんだろう。今までは、関わりたくないから、放置していたが、マリーに手出しするなら報復してやる!」
今まで、どんな令嬢にも興味を示さなかった彼が、感情をむき出しにして怒っている。どうして?いつの間にそんなに親密になったの?そんなに彼女が大切なの?
彼の怒る姿を見ているのはつらかった。でも、つらい気持ちより、…私は全く疑われてない事に安心していた。
ミラー伯爵令嬢は、聖女子学園からの編入生が来るまでは、この学園の令嬢の中では身分が上であった為、気に入らない令嬢に嫌がらせをしたりと、評判の悪い令嬢であった。しかし編入生が来たら、彼女達の方が、成績も身分も上なので、遠慮しているのか、前ほど目立つような事はしていない。しかし今までの評判が悪いので、彼もその友人達もミラー伯爵令嬢が犯人だと決めつけているようだ。
今までの素行が悪いから疑われるのよ。
私はミラー伯爵令嬢が疑われていることに、安心し過ぎてしまっていた。そして、その後もバレないと思い、何度か嫌がらせを繰り返してしまう。そのことが、身を滅ぼすことになるとは気づかずに…。
その嫌がらせがきっかけなのか、フォーレス侯爵令息は、義妹に対して過保護になり、兄妹とは思えない距離感で過ごすようになる。義妹の方は、一歩引いているようにも見えるが、彼はそんなの全く気にせず、側についていたいようだ。彼は、愛しい恋人を見つめるような目で義妹を見ている。そんな目で彼女を見つめるのをやめてと、何度、心の中で叫んだのか分からなくなっていた。
反対に彼の視線の先には彼女がいる事に気づいてしまった。彼女はフォーレス侯爵令息をどう思っているかは分からないが、彼は義妹である彼女を意識していると思う。彼女を心配して見ているのか、話がしたくて見ているのかは分からないが…。
入学式の次の日、生徒会長のファーエル公爵令息が彼女に会いに来た。今は王家の生徒はいないので、公爵家の生徒会長が、この学園では1番身分が高い方になる。華やかな美形の王子様のような方で、この方に憧れている令嬢はとても多い。そんなすごい方が、新入生の彼女にわざわざ会いにくるなんて。クラスが一瞬ざわつく。しかし、彼女や友人達は何か警戒したような表情だ。普通の令嬢なら、あんなすごい方が自分に会いに来たら、多少は浮かれてしまうのに。聖女子学園から来た令嬢達は、相手の身分や見目で判断しないのかしら。彼女は、緊張感のある表情で廊下に出て行った。廊下で彼女と生徒会長が、どんなやり取りをしているのかは、ここからは分からないが、フォーレス侯爵令息は、心配そうに廊下の方を見つめていたと思ったら、そのまま廊下に出て行ってしまった。
少ししてから、2人で教室に戻って来るが、怒りを隠したような笑顔のフォーレス侯爵令息と、何となく怯えた表情の彼女。何があったのかしら?フォーレス侯爵令息に友人達が話しかけて、事情を聞いている。
「アル、何があった?怒っているのか?」
「生徒会長が以前、領民を助けてくれたお礼だと言って、強引に義妹をお茶会に誘おうとしてたから、丁重に遠慮させてもらって来たよ。義妹も公爵家からの誘いを断れなくて、困っていたようだし。」
「あの生徒会長が、お茶会のお誘いに来るなんて初めて聞いたな。義妹殿は、生徒会長に気に入られているんじゃないか?」
「迂闊にそんな茶会に参加したと噂になったら、生徒会長の婚約者候補だとか勘違いされて、大変だろう。女狐どもに目をつけられそうだ。だから今回は遠慮させてもらって来たよ。」
「あのアルが義妹の為にそこまでするなんて。かわいいのは認めるが…。お前、変わったなー!」
義妹の為に、公爵家のお茶会を断って来た?そんなに大切なの?それとも、もしかして彼女のこと……。
その日の放課後、彼は義妹の手を繋いで帰って行った。あんなに嬉しそうな彼の笑顔は初めて見た。あんな風に、笑う人だったのね。
彼の友人や彼女の友人達は、面白そうに2人を見送っていたが、私は心が壊れそうだった…。
2人が帰った後、図書室で予習しようとするが、全く身に入らない。こんなことは初めてだった。
気持ちが落ち込んだままいたが、外が暗くなってきたので、寮に帰ろうと思い、教室に荷物を取りに行く。ふと。フォーレス侯爵令嬢の机を見ると、机の中に教科書やノートが残されたままになっている事に気付いた。学年で首席なのに、予習とかしてないのかしら?
…悔しい!私はこんな気持ちで、毎日必死なのに。どうして彼女ばかり!いい家に引き取られて、綺麗で、優秀だなんて!しかも、あの方に大切にされて!
気がつくと、彼女の教科書をビリビリに破いていた。……これで、少しは困ればいいわ。
次の日、登校すると彼女の姿が無かった。そして、フォーレス侯爵令息の機嫌が悪い。彼女の友人達は、破られた教科書の事を話しているようだった。酷いとか、いじめ?とか言っているのが聞こえて来る。
ふふっ。ショックで帰ってしまったようね。このまま、来なくなればいいのに。これくらいの事で、ショックを受けるなんて、これだから、高位貴族のお嬢様は困るわ。
フォーレス侯爵令息は、彼女を心配して、昼休みに彼女の寮まで訪ねたらしい。
「アル、義妹殿はどうだった?」
「顔色は悪いし、泣いていた。犯人を絶対捕まえるし、マリーは俺が守るって話して来たんだ。」
「かわいい義妹が嫌がらせをされて、怒りたい気持ちは分かるが、落ち着けよ!犯人はまたあの令嬢かな?」
「ミラー伯爵令嬢だろ?前にアルに付き纏っていた。アルに好意を寄せている令嬢に、嫌がらせをしているって、有名だもんな。」
「ああ。アイツは従姉妹だからと言って、子供の頃から、いつも付き纏ってきて、大迷惑なんだ。どうせ、かわいいマリーに嫉妬しているんだろう。今までは、関わりたくないから、放置していたが、マリーに手出しするなら報復してやる!」
今まで、どんな令嬢にも興味を示さなかった彼が、感情をむき出しにして怒っている。どうして?いつの間にそんなに親密になったの?そんなに彼女が大切なの?
彼の怒る姿を見ているのはつらかった。でも、つらい気持ちより、…私は全く疑われてない事に安心していた。
ミラー伯爵令嬢は、聖女子学園からの編入生が来るまでは、この学園の令嬢の中では身分が上であった為、気に入らない令嬢に嫌がらせをしたりと、評判の悪い令嬢であった。しかし編入生が来たら、彼女達の方が、成績も身分も上なので、遠慮しているのか、前ほど目立つような事はしていない。しかし今までの評判が悪いので、彼もその友人達もミラー伯爵令嬢が犯人だと決めつけているようだ。
今までの素行が悪いから疑われるのよ。
私はミラー伯爵令嬢が疑われていることに、安心し過ぎてしまっていた。そして、その後もバレないと思い、何度か嫌がらせを繰り返してしまう。そのことが、身を滅ぼすことになるとは気づかずに…。
その嫌がらせがきっかけなのか、フォーレス侯爵令息は、義妹に対して過保護になり、兄妹とは思えない距離感で過ごすようになる。義妹の方は、一歩引いているようにも見えるが、彼はそんなの全く気にせず、側についていたいようだ。彼は、愛しい恋人を見つめるような目で義妹を見ている。そんな目で彼女を見つめるのをやめてと、何度、心の中で叫んだのか分からなくなっていた。
42
お気に入りに追加
1,710
あなたにおすすめの小説
3年前にも召喚された聖女ですが、仕事を終えたので早く帰らせてもらえますか?
せいめ
恋愛
女子大生の莉奈は、高校生だった頃に異世界に聖女として召喚されたことがある。
大量に発生した魔物の討伐と、国に強力な結界を張った後、聖女の仕事を無事に終えた莉奈。
親しくなった仲間達に引き留められて、別れは辛かったが、元の世界でやりたい事があるからと日本に戻ってきた。
「だって私は、受験の為に今まで頑張ってきたの。いい大学に入って、そこそこの企業に就職するのが夢だったんだから。治安が良くて、美味しい物が沢山ある日本の方が最高よ。」
その後、無事に大学生になった莉奈はまた召喚されてしまう。
召喚されたのは、高校生の時に召喚された異世界の国と同じであった。しかし、あの時から3年しか経ってないはずなのに、こっちの世界では150年も経っていた。
「聖女も2回目だから、さっさと仕事を終わらせて、早く帰らないとね!」
今回は無事に帰れるのか…?
ご都合主義です。
誤字脱字お許しください。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
一夜限りの関係だったはずなのに、責任を取れと迫られてます。
甘寧
恋愛
魔女であるシャルロッテは、偉才と呼ばれる魔導師ルイースとひょんなことから身体の関係を持ってしまう。
だがそれはお互いに同意の上で一夜限りという約束だった。
それなのに、ルイースはシャルロッテの元を訪れ「責任を取ってもらう」と言い出した。
後腐れのない関係を好むシャルロッテは、何とかして逃げようと考える。しかし、逃げれば逃げるだけ愛が重くなっていくルイース…
身体から始まる恋愛模様◎
※タイトル一部変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる