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マリーベル編〜楽しく長生きしたい私

入学パーティー 1

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 今日はアリーと侯爵家のタウンハウスに来ている。今日はこの後、学園主催の入学を祝うパーティーなのだ。もう入学して1ヶ月位。慣れて来た頃に行われるようだ。

 そう。パーティーと言えば準備が大変。2週間くらい前から、毎日、寝る前にエステのようなマッサージとトリートメントをアリーがしてくれ、今日は侯爵家で朝から念入りに磨かれている私。ドレスは入学式の後に、母がデザイナーを引き連れて寮に来たので、その時に打ち合わせをして、決めておいたやつ。ドレスっていったら、婚活時代に憧れていたウェディングドレスしか興味が無かったから、この世界の流行なんて、そんなに知らないので、困ったよね。とりあえず、あまりヒラヒラ、ゴテゴテ、派手な原色はやめて欲しい事、中身アラサーなんで、素材にこだわって品よく見えるように頼んでおいたのだ。すると、水色のAラインのドレスが出来上がっていた。Aラインだが、シフォン生地が歩くとふわりと揺れるのでかわいいと思う。シンプルにも見えるが、証明に当たると、散りばめられたダイヤがキラキラして綺麗。後ろに大きめのリボンが着いているから、ダンスの時にいい感じだと思う。ダイヤが沢山くっついてるから、高かったよね?ありがとう。ドレスの色は、お父様がどうしても水色と言って引かなかったらしいが、私は水色が好きだから嬉しかった。だって、私には赤とかの原色は似合わないからね。そしたら、アクセサリーは義兄が選びたいと言いだして、大変だったらしい。義兄ってアクセサリー選ぶの好きなんだ~!将来はステキな旦那様になれそうじゃない!もしヒロインが出現したら、頑張ってよね!

 メイクは、まだ10代だから、あまり濃くならないようにしてもらい、髪はせっかくトリートメントしてくれて、すごくサラ艶になっているから、編み込みとハーフアップを組み合わせた髪型にしてくれた。メイクと着付けが終わったら、メイドが義兄を呼びに行く。義兄がアクセサリーを持ってくるようだ。
 義兄が部屋に入ってくる。私を見た義兄は

「マリー、とっても綺麗だ…。」

 また複雑そうな、寂しそうな、そんな表情になる義兄。そして、私を抱きしめて、おでこにキスをする。……最近、また義兄の距離が近くなってきた。義兄はシスコンにでも憧れていたのだろうか。妹ができたぞ!イェーイ、俺はお兄ちゃんだ!みたいな。

「お兄様、みんな見ているので、あまりベタベタされたら、恥ずかしいですわ。」

 一応、やんわりと注意はしておこう。

「マリーが可愛いのが悪い。」

 うん。全く気にしないのよ。この人は。

 義兄は、自分がデザインしたんだよと髪飾りとネックレスを見せてくれた。そこには、ダイヤモンドをメインに、所々にエメラルドがあしらわれた蝶々の髪飾りがある。わー!私好み。ネックレスも大きな一粒ダイヤとエメラルドが組合せられたものだ。すごい!義兄のセンスは私好みだわ。

「お兄様、私、蝶々のアクセサリーが好きなので、とても嬉しいですわ。大切にしますね。ありがとうございます。」

 本当に嬉しかったので、素直に喜びを表現してお礼を言った。

「それは、良かった…。ネックレスは私が着けてあげよう。」

 そう言って義兄はネックレスを着けてくれた。これだけ女性の扱いが出来れば、義兄はステキな結婚が出来そうね。うんうん。
 その後、アリーが髪飾りを着けてくれた後、2人で出発する。見送ってくれた母が義兄に、あまり私にべたべたしていると、いい出会いを逃してしまうから、ほどほどにしなさいと言っていた。もっと言ってやってー!!

 馬車の中では、パーティーは危険だから必ず義兄の側にいるようにと、しつこく言われた。最近、小言が多いのよ。

 学園のパーティー会場に着くと、いつものように、義兄がエスコート?してくれる。義兄は、黒のフロックコートに、水色のネクタイをしている。ほどほどに背が高くて、綺麗な顔をした義兄は、黙っていればカッコいいのだ。会場で義兄を見つめている令嬢が多いから、モテるんだろうね。みんな頑張って!義兄を何とかしてやってね。

 レジーナ達や他の聖女子メンバーがいたのでそこに行くと、クラスメイトの子息達も一緒にいる。最近、クラスメイトの子息達とも、それなりに仲良くなったのよね。それぞれ、ダンスを踊る約束をしているようだ。
 みんな、ドレスがステキだねーと話していると、何だか鋭い視線を感じる。ん?あれはもしかして……、悪役令嬢さん?
 リボンがゴテゴテついた、ボリュームのある、どピンクのドレスを着て、しっかりすぎるメイクと、縦ロールをした悪役令嬢がいた。うん。目立つわー!レジーナやミッシェル達も彼女に気付く。クラスの令息や義兄も。
 ………。みんな無言になってしまった。

 今まで私達に色々と仕掛けて来た令嬢達は、静かになって、私達を避けるようになってしまったのに、彼女は根性があるのか、たった一人でいるにもかかわらず、私達を睨んでくる強さがある。さすが、悪役令嬢ね。でも、そこまで義兄のことが好きなのね。小言が煩い、過保護なシスコンに成り下がった義兄をそこまで…。何だか切なくなってきたわね。私は思わずため息が出てしまった。すると

「マリー、大丈夫か?気分が悪いなら先に帰ろうか?無理はしなくていいのだから。」

 義兄はそう言って私を抱き寄せる。レジーナ達やクラスメイト達はもう見慣れているから、今更な感じだが、他のクラスや学年の先輩達は、「まぁ!」とか言って驚いて見ている。…もうね、何というかね、抵抗するのも疲れてしまったというかね。死んだ目をした私を、笑いを堪えて見つめる聖女子メンバー。おい!笑ってんなよ!
 その時、義兄から殺気が。悪役令嬢がこっちに来たぞ!頑張れー!

「アル、ご機嫌よう。貴方が抱き寄せている御令嬢が貴方の義妹さん?恋人同士でもないのに、そんなにベタベタするなんて。貴方らしくないじゃない。その女に、たぶらかされているのではなくて。」

 悪役令嬢がすごい。香水の匂いがキツいが。
 いいぞ!頑張れー!あれっ?レジーナ達、聖女子メンバーが……笑いを堪えているわね。扇子で顔を隠すのは反則よ!でも、分かる。私も吹き出しそう。堪えなきゃ!笑いを堪えると、涙もでるし、肩が震えちゃう。すると、私を抱き寄せていた義兄が

「マリー、大丈夫か?泣いているのか?」

 お兄様、今の私には貴方の真顔がキツいのです。

 もうダメー!戦略的撤退ね!

「お、お兄様、私、ちょっと…お花摘みに……行ってまいり…ます。」

 顔を上げれないので、下を向いたまま、口を押さえて、急いでその場を抜ける私。会場の外へ急いで出て、トイレを目指す。その時、角を曲がったところで、ドスっと誰かに正面衝突してしまった。
 やっちまったわね。恥ずかしいわ。一気に笑いが引いたわ。とりあえず、謝らないとね。

「申し訳ありません。」

 その時に初めて顔を上げると、そこには20代後半位に見える眼鏡をかけた美丈夫が。パーティーの来賓かしら、きっとエライ人よね。目を見開いてすごく驚いているわ。
 もう一度、ちゃんと謝ろうか…


 
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