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マリーベル編〜楽しく長生きしたい私

想像と違う悪役令嬢

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 次の日、レジーナ達と寮を出て、校舎に入ろうとすると、校舎入口に義兄がいる。丁度良かった!義兄の持っている、あのボロボロノートを返して欲しいのよ。今後の為に証拠品として手元に置いておきたい。うーん、何で言おうか?と考えていると、

「マリー、待っていたよ。一緒に行こう。」

 えっ?待ってたの?私、レジーナ達と一緒に来てるのに。

「お兄様、わざわざ待っていて下さるなんて申し訳ないですわ。教室で顔を合わせるのですから。それに、友人達も一緒ですし。」

「フォーレス様、私達の事は気になさらないで下さいませ。マリー、せっかく優しいお兄様がお待ちになってくれたのだから、ねぇ?ミッシェル?」

「そうよ。せっかくだから、お兄様と一緒に来なさい。私達は平気だから。」

 ちっ!あの2人、私がドナドナされるところを見たいって言ってたし、楽しんでるな。目が笑ってるわ。腹黒めー!

「お気遣いありがとう。マリー、行くよ。」

 義兄は当たり前のように私の手を拘束じゃなくて、繋ぐ。今日の1日はドナドナから始まるようだ。

 あぁ、周りの視線が痛いわ。義兄は何でこんな事するのかしら。もしかして、義兄はモテるから女避けに私を使ってる?でも義妹では、女避けとしてはそこまで効果は期待できないよね。そこそこ身長が高くて、サラサラのストロベリーブロンドに、綺麗な顔立ちの侯爵令息様は一体何を考えているのかしら。
 その時、私は恐ろしい視線を感じる。ん?誰かに見られているわね。不意に後ろを振り返ると、少し離れて後を歩く令嬢とバチっと目が合ってしまった。あの視線には憎悪が込められているわね。

 ふふっ。もしかして彼女かしら?私の救世主兼、聖女子メンバーが見せしめとして報復することになる令嬢は。
 私が後ろを見ている事に気付いた義兄も、釣られて後ろを振り向く。すると、義兄の表情が氷点下レベルに冷たい表情になる。
 ひぃー、怖いわ!思わず繋いだ手を離そうと引くと、手をぐいっと引っ張られ、腰を抱かれる。何なのよー!兄弟でも近いわ。

「手出ししてはいけない人に、手を出した事を後悔するんだな。」

 怒りを含んだような、冷たく低い声。義兄のこんな声は出会って日は浅いが、初めて聞いた。だから、怖すぎだから。

「アル、どうして私を怒っているの?」

 おおー!悪役令嬢頑張れーー!無意識に応援している私。そして、目をキラキラさせて傍観するレジーナとミッシェル。確実に楽しんでるわね。

「名前を呼ぶな!言わなくても分かるだろう?今までも、他の令嬢に嫌がらせをしていたようだが、何も知らないと思ったか。今回だけは許さないぞ。これ以上何かするなら、家ごと潰される覚悟で来るんだな。」

「本当になんのことやら。酷いですわ。私と貴方は昔からの付き合いなのに。」

 うん!義兄vs悪役令嬢になってしまったわね。しかも、また他の生徒達に注目されてるじゃないの!!今日のところは停戦でお願いします。

「お兄様、こちらの御令嬢はお兄様のお知り合いでしょうか?」

 とりあえず、誰なのか知りたいわね。愛称で呼ばれるくらいの仲だったのかしら?でも、これから頑張って欲しいわ。

 義兄の表情が少しだけ優しくなるが、目は笑ってない。

「知る価値もない人間だから、マリーは気にしなくていいよ。」

 ひぃー。優しいようで、怖いわ。義兄はやっぱり怒らせては駄目な人なのね。私の顔から血の気が引く。

「マリー、朝から見たくもない人間を見たからか、顔色が悪いな。大丈夫か?医務室に行こうか。」

 義兄は私の頬に手を当てながら、心配そうに話す。近いぞ!怖いぞ!

「お、お兄様。私は大丈夫ですから…。き、教室に行きましょう。」

 悪役令嬢の私を見る目が凄いが、それより義兄の目が怖すぎる。そんな義兄にドナドナされ、教室に向かうのであった。
 しかし、あの人が悪役令嬢なの?何と言うか、特別綺麗じゃなかったし、肌荒れしたぽっちゃり令嬢だったわね。てっきり、すごい美人の悪女かと思い込んでいたから、想像と違うのですが。

 教室に入ると、他の聖女子メンバーの腹黒い笑みと、クラスメイトの令息達の何とも言えない視線が痛い。クラスに着いたんだから、手を離そうよ。

「お、お兄様、もう手を離して頂いても?」

「…ああ。マリー、あまり無理をしないで、気分が悪いようなら、私に教えるように。」

 貴方から解放されたので、大丈夫ですとは言えない。

「私は大丈夫ですわ。お兄様、心配掛けて申し訳ありませんでした。」

 ふぅー。朝から疲れたわ。グッタリね。

 そう言えば、私の机はどうなっているかしら?ふふっ。まるで、狩の仕掛けを見に行く気分ね。どれどれ?
 あれ、机が綺麗になっているわね。聖女子メンバーが何かを言いたそうだわ。

「マリー、朝来たら机に落書きがされていたのだけど、それを見たルーベンス先生が綺麗にしてくださったの。少し恐ろしかったけどね。」

 えー、落書き見たかったのに。ルーベンス先生にお礼を言いに行かないとなぁ。
 で、机の中はどうでしょう?ノートは無事ね。全部残っているわ。パクられてないわね。今日は落書きだけかー。ざんねーん!

 朝礼までまだ時間があるから、ルーベンス先生のところに行ってこよう。確か、文系準備室にいるって言ってたわよね。席を立ち上がり、友人達にその事を話すと、念のために3人はついて来てくれるようだが…

「マリー、どこに行くんだ?」

「お、お兄様、ちょっとルーベンス先生のところに行って来ますわ。」

「私も一緒に行こう。」

「大丈夫ですわ。友人達も来てくれるようですし。」

「まぁ、優しいお兄様で羨ましいですわ。マリー、私達は待っているから、フォーレス様と行ってらっしゃいな。」

 登校時のドナドナを見れなかったからって、強引に押し付けたな。エリーゼめ!

 聖女子メンバーは、楽しんでるわね!あの腹黒軍団め!
 また義兄に手を繋がれてドナドナされる私。いい加減、疲れが表情に出てくる。
 ルーベンス先生のところに行くと、昨日、今日と、とても心配してくれたようだ。何となく、こんな事をする生徒は決まっているので、学園でも調査してくれるようだ。ルーベンス先生は相変わらず優しい。子供の頃から知っている先生の顔を見ていると、なんだか安心して涙が。イジメとかじゃなくて、環境の変化で疲れているみたい。
 先生は私が涙を流している姿に驚いているようであったが、慣れない環境の中で、子供の頃から知っている先生の顔を見ると、安心して涙が出てきてしまった事を話すと優しく微笑んで、頭を撫でてくれる。あーあ、こんな優しくて大好きな先生が、攻略対象者だったら嫌だな。
 
 涙が止まり、教室に戻る途中で、

「マリーは、ルーベンス先生が好きなのか?」

「はい。昔から優しくて大好きでした。ルーベンス先生や他の家庭教師の先生方がいたから、両親と離れて寂しくても、頑張ってこれたのです。」

「……そうか。」

 そう。ルーベンス先生と話をしている後ろに義兄もいたのよね。

 毎日それなりに楽しいけど、疲れが溜まってきたわね。









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