元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

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マリーベル編〜楽しく長生きしたい私

まだまだ頑張ります

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 仲の良い友人も出来て、それなりに充実した学園生活を送っている。

 そして私の好きな魔術だが、講師のシスターの中に、治癒魔法が得意な方がいて、魔術の時間はそのシスターにマンツーマンで教えてもらえる事になったのだ。治癒魔法が得意な人って少ないから、教えて貰えるなんてラッキー!
 シスターの指導がいいのか、前よりも力が込めやすくなって来たような気がする。魔力も魔術を始めた頃に比べて、強くなって来たようだ。やはり、コントロールとイメージが大切らしいが、経験も必要との事で、今度シスターが街の病院に慰問に行く時に、一緒に連れて行って貰える事になった。

 休日の日にシスターと馬車に乗って、学園と同じ街にある病院へ行く。入院患者がいる病棟へ移動すると、よく慰問に来ているシスターは、患者さんに慕われているようで、子供達を中心にシスターに声をかけてくれる。元貴族だったというシスターは、ご主人を病気で亡くされてから、修道院に入ったと言ってた。学園では厳しいけど、病院ではこんなに優しく微笑まれるのね。
 病院とは言っても、ここに入院している方は、ほとんどが長期で入院している方ばかりらしい。恐らく、この世界の医学で治すのが困難で、自宅で生活する事が出来ないような人達に見える。
 シスターは、薬で治せないような人を中心に、痛みを和らげる治癒魔法をかけていく。医学は素人の私から見ても、恐らく末期癌のような方達だ。完治は難しくても、痛みを抑える事で多少は穏やかに過ごせるものね。私はシスターの助言を受けながら、患者さんの痛みを和らげるように、患部に手をかざす。痛みがとれますようにと、心の中で唱えながら。どのくらい効いているのか分からないが、患者さんは痛みが無くなったと言ってくれたので、とりあえず安心。そんな感じで数人の患者さんに治癒魔法を掛けた。
 
 初日で慣れてないので、病棟の食堂で休憩を取らせてもらうと、古いピアノが置いてあるのを見つける。病棟の責任者の人に弾いてみてもよいか聴くと、是非と言ってくれたので、久しぶりに弾いてみる事にした。何を弾こう?杏奈の時に好きだった、ブラームスの子守り歌と、愛のワルツにしようか。優しい気持ちになれる気がして好きだったのよね。
 病気が良くなるように祈りながら、弾いてみる。久しぶりに弾いたから、緊張したけど大丈夫だったかな?…と思ったら、患者さん達が聴いてくれていて、喜んでくれたから良かった。長期で病院に入院しているので、なかなか毎日の楽しみを見つけるのも難しいらしく、ピアノの音楽を聴くだけでも、気分転換になるらしい。また弾きに来てねと子供達が言ってくれたので、また来るねと伝えた。
 学園に戻る馬車の中で、いつも厳しいシスターが珍しく褒めてくれた。初めて行ったけど、落ち着いて患者さんに向き合えていたと。見た目10代でも中身はアラサーだしね。でも褒められるのは嬉しい。また、病院に連れて行って欲しいとお願いすると、シスターは喜んでくれたのだった。経験を積まないとね。早く実家から自立したいから!

 そんな感じで、シスターと一緒に病院に定期的に行くようにしていたら、段々と患者さんとも仲良くなってきて、子供達も私が行くのを待っててくれるようになった。ピアノは行くといつも弾かされるようになってて、何か気分が良くなるとか、食欲が出るとか、痛みを忘れるとか言ってくれるので、まぁいいか。
 治癒魔法も同じ患者さんに何度か掛けていたら、かなり効いてきているみたいで、最近調子がいいといわれた。シスターは治癒の力が強くなってきているのかもと言っていたので、正直、ラッキーだ。もしかして、本気で、治癒魔法で食べていける様になれる?

 しかし、私はそれだけで満足はしないのだ。いつ断罪されて、命に危険が及ぶのか分からないから、自分の命は守れるように、ある程度は強くなりたい。毎日のレジーナとの剣の鍛練は欠かさないし、攻撃魔法も強くなりたいのよね。ミハエル先生に基本は習ったけど、まだ魔術師団に入れるという、お墨付きは貰っていなかったので、二年生の選択授業は攻撃魔法を選択しよう。


 そして、もうすぐ学期末のテストである。その為、今はみんなガリ勉モードに入っているのだ。実力がモノを言う学園なので、テスト勉強はみんな必死なのだ。私も転生チートをアテにしないで、必死に勉強をしたのだったが…。なんと二位になれました。良かった!一位はミッシェルです。彼女は努力家だから、素直に祝福できる。ちなみにレジーナは5位でエリーゼは6位ね。みんな頑張ったよ。

 学期末のテストが終わったら、長期休暇に入るのだが、ここで両親から王都のタウンハウスに来ないかとお誘いが。私は両親に会いたい気持ちがあるものの、王都には行きたくなかった。義兄や攻略対象者に会いたくないし。どうしようか困っていたら、レジーナが実家の辺境伯領に一緒に来ないかと誘ってくれた。ちなみにレジーナは私が義兄に会いたくないのは知っている。(理由は跡目争いをしたくないから、あまり関わらないようにしているという事にして。)
 辺境伯の領地は国境を守るだけでなく、魔物も出るので、魔物の討伐に行って過ごすらしく、剣術も、馬術も、治癒魔法も一応できる私なら歓迎すると言ってくれたのだ。えっ、いいの?じゃあ、辺境伯領に修行に行くと言う事で、お父様に手紙で許可をお願いした。お父様は、とても残念だが、今しか出来ない事だから、大目にみて許可しようと書いてあった。そのかわり、無茶をしないこと、辺境伯爵やその騎士達の言うことを守って行動するようにとのことだった。

 お父様、長期休暇に辺境伯領に修行に行くような、破天荒な令嬢でごめんなさい。
 
 
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