元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

文字の大きさ
上 下
36 / 161
マリーベル編〜楽しく長生きしたい私

閑話 断罪 2

しおりを挟む
 次は、エベスト公爵令嬢に自白剤を飲ませる事に決めた。すっかり、私に心を許しているので、2人になっても警戒されないだろう。

 いつものように殿下に強引に会いに来た時に、冷たく突き放されて、気落ちしているエベスト公爵令嬢を馬車に送る時に、庭園の薔薇が綺麗なので、気分転換に見てから帰りませんかと提案し、庭園奥の人気の無い所まで連れて行くことに成功した。そこで強引に背後から抱きしめるように押さえつけ、そのタイミングで影に出てきてもらい、自白剤を飲ませてもらった。

 …殺意を抑えるのに苦労した。途中で執務を抜けてきた殿下が合流してくれたので、冷静に戻れたと思う。
 アンネマリーの暗殺を指示したのは、この女であった。王太子妃になる為に邪魔になりそうだから、自国に来る前に消しておきたかったと。留学と言って来るのに、なぜ子供の頃からの婚約者と婚約解消してくる必要があるのか。表向きは留学と言って来て、実は王太子妃を狙っていたに違いない。だから、始末したと。

 私と婚約の話が白紙になったから?お前に私達の何が分かると言うのだ!

 今すぐ、ここで処刑してやろうと思うほどの感情。この女だけは、死んでも許さないと思った。そんな私に殿下は、今はまだその時でないので落ち着けと。殿下からも殺気が漂っているが、堪えているようだ。
 この女は公爵の不穏な動きを探る為の駒として使う為に、今は利用する為だけに生かしておく。魔導師にいつも通りに、自白剤の記憶を消してもらい、庭園奥の東屋で、殿下に呼び出されて待っている時に、うたた寝してしまったように、本人に思い込ませた。そして、公爵の動きや見聞きした事などを無意識に探るように、魔法をかけ、公爵邸に帰したのだった。

 あの女が王宮に来た時に、魔導師から魔法をかけてもらい、公爵邸での見聞きしたことや出来事、公爵邸に出入りしている貴族のことなど情報を聞く。最近は同じ貴族派の3名の貴族が頻繁にきているらしい。公爵邸の警備のレベルはかなり高く、隙がないので、影でも内部まで調べるのはなかなか難しい。この女を使うことで、貴重な情報を得る事が出来る。
 影には公爵の仲の良い分家の動きを探って貰っている。やはり、騎士や傭兵を集めているようだ。武器も買い漁っているらしい。そろそろ、大きく動きがありそうなので、私達の今後の動きを殿下と相談だな。

 エベスト公爵家に出入りしていた、貴族の騎士団が訓練で領地から王都に来ていると聞き、殿下はそのタイミングで発表することがあると、王宮に国内の貴族を集めることにした。王太子殿下が婚約者を決めたらしいと噂を流して…。

 王宮の大広間に集まる貴族達。エベスト公爵とあの貴族派の3人と、公爵の分家の貴族は、お互いが近くにいる。やはり動きやすいドアの近くを陣取っているな。予想通りだ。公爵の近くにいるエベスト公爵令嬢は、表情が無い。他の令嬢が婚約者に選ばれていると思って気落ちしているのだろう。王太子妃になることを目的として生きて来たのに選ばれなかったから、今までの自分の生き方を否定されたようで、ショックだろうな。ふっ。

 その時、殿下の影から拘束したようですと報告がある。この時を待っていた。

 断罪の始まりだ!

 国王陛下が短く挨拶をし終わったタイミングで、大広間の扉がバーンと勢いよく開かれる。殿下の従者の1人が大声で叫ぶ。

「陛下!王宮に反乱軍と思われる賊が向かって来ています。」

 近衛騎士10数名が広間に駆けつける。陛下を守るはずの近衛騎士だが、なぜか公爵の周りに。あの近衛達は公爵の息のかかった者たちだ。想定済みなので、今は泳がしておこう。
 そこで、公爵が満面の笑みで口を開いた。

「陛下、貴方達王族には、今日で王族を辞めていただく。貴方達には、もう家臣として支える価値がないのですよ。」
「殿下、我が娘はお気に召さなかったようで、残念でなりません。我が娘を選んでくださっていたら、こんな事にはならなかったかもしれないのですが。」

「エベスト公爵、其方は反逆を企てたのだな?」

 殿下が無表情で尋ねる。反逆なのかを。

「殿下がそう思われても仕方ありません。私は貴方達に王族をやめてもらう為に、ここに来たのですから。」

 反逆を認めたな。よし、今だ。私は扉に向かって、連れて来いと叫んだ。

 扉を開けて入って来たのは、表向きは休暇となっていた、近衛騎士団長を始めとする近衛騎士達が沢山。彼らは氷漬けにされた状態のエベスト公爵家の騎士団長、公爵家に出入りしていた貴族の騎士団長と幹部、傭兵団の団長を引きずって連れてきたのだ。

 そこで、殿下が

「エベスト公爵の兵達は、王宮近くまで来たのに、精神が錯乱状態に陥って、戦えなくなってしまったようだ。危険なので、氷の囲いの中で待っていてもらっているぞ。せっかく手練れを集めて来たのに、残念だったな。」

 公爵から笑みが消えて、絶望の表情になるのに時間はかからなかった。
 そこで私は影にいた魔導師達を呼ぶ。魔導師は、公爵を囲んでいた近衛騎士達10数名を、一瞬で氷漬けにしてしまった。すごい力だ。大広間にいた貴族達も氷漬けの近衛騎士達を見て、引いているのが分かる。でも、広間に沢山人がいる中で、抜刀して騎士同士が戦うのは危険なので、分かって欲しい。
 公爵達を守る者がいなくなった状態で、近衛騎士団長に公爵を拘束してもらう。一応、この国の近衛騎士も立てないといけないからな。

 拘束だけでは終わらせない。みんなの前で、いつものアレを飲んで貰おうか。


 国内の貴族達が見ている前で、自白剤を飲まされた公爵から、今回の反逆に関わっている貴族全員の名前を自白してもらい、その場で拘束させた。その貴族達も近いうちに、自白剤を飲まされるだろう。
 また、今まで公爵が関わっていたであろう未解決事件と、王妃殿下が何度も毒を盛られた事も、公爵が絡んでいた事を自白させた。これで、国家反逆罪と王妃殺害未遂で公爵家の取り潰しと死刑が決まる。公爵本人がすべて目の前で話して認めていることなので、同じ貴族派の貴族達も庇うことは出来なかった。
 この公爵は他の貴族に対して、かなりの影響を持っているので、生かしておくのは危険だと判断し、即刻、毒杯を賜ることになった。
 更に今回の反逆に直接関わっている貴族3名と、公爵の分家、数人の処刑と家の取り潰しが決まる。貴族派の中心人物を大量に失う事になったのだった。

 

 

 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したので前世の大切な人に会いに行きます!

本見りん
恋愛
 魔法大国と呼ばれるレーベン王国。  家族の中でただ一人弱い治療魔法しか使えなかったセリーナ。ある出来事によりセリーナが王都から離れた領地で暮らす事が決まったその夜、国を揺るがす未曾有の大事件が起きた。  ……その時、眠っていた魔法が覚醒し更に自分の前世を思い出し死んですぐに生まれ変わったと気付いたセリーナ。  自分は今の家族に必要とされていない。……それなら、前世の自分の大切な人達に会いに行こう。そうして『少年セリ』として旅に出た。そこで出会った、大切な仲間たち。  ……しかし一年後祖国レーベン王国では、セリーナの生死についての議論がされる事態になっていたのである。   『小説家になろう』様にも投稿しています。 『誰もが秘密を持っている 〜『治療魔法』使いセリの事情 転生したので前世の大切な人に会いに行きます!〜』 でしたが、今回は大幅にお直しした改稿版となります。楽しんでいただければ幸いです。

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

3年前にも召喚された聖女ですが、仕事を終えたので早く帰らせてもらえますか?

せいめ
恋愛
 女子大生の莉奈は、高校生だった頃に異世界に聖女として召喚されたことがある。  大量に発生した魔物の討伐と、国に強力な結界を張った後、聖女の仕事を無事に終えた莉奈。  親しくなった仲間達に引き留められて、別れは辛かったが、元の世界でやりたい事があるからと日本に戻ってきた。 「だって私は、受験の為に今まで頑張ってきたの。いい大学に入って、そこそこの企業に就職するのが夢だったんだから。治安が良くて、美味しい物が沢山ある日本の方が最高よ。」  その後、無事に大学生になった莉奈はまた召喚されてしまう。  召喚されたのは、高校生の時に召喚された異世界の国と同じであった。しかし、あの時から3年しか経ってないはずなのに、こっちの世界では150年も経っていた。 「聖女も2回目だから、さっさと仕事を終わらせて、早く帰らないとね!」  今回は無事に帰れるのか…?  ご都合主義です。  誤字脱字お許しください。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。

氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。 聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。 でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。 「婚約してほしい」 「いえ、責任を取らせるわけには」 守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。 元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。 小説家になろう様にも、投稿しています。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

処理中です...