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マリーベル編〜楽しく長生きしたい私

義兄ができました

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 10歳になった私は、今まで地味に頑張ってきたものが花開いてきたように思う。
 
 外国語はとりあえず3カ国語覚え、学習も貴族学園のレベルは何となく理解しているので、今は読書にハマってます。ルーベンス先生は私の学習が落ち着いたタイミングで、外交官をしている家族の手伝いとして、他国に行く事になったので、家庭教師の仕事は辞める事になった。大好きな先生だったので、寂しくて泣いてしまったが、手紙をやり取りする約束をした。また会いましょうと優しく微笑んで、先生は旅立って行った。最後までイケメンだったわ。

 そして、今は読書の中でもロマンス小説にハマっている。漫画もスマホもないから、貴重な娯楽だと思う。最近はかっこいい騎士様と、姫様の身分違いの恋を描いた物語が好きになった。こんな騎士様がいたら好きになっちゃうよね。

 それと淑女の嗜み、刺繍もレベルアップしたと思う。完全に杏奈の知識と自己流ですけどね。なので、お父様とお母様に今更だが、プレゼントすることにした。
 なんかこの世界の刺繍って、みんな同じような作品ばかりで、個性を感じないの。だから私は、あえて日本人の誇り、着物をイメージした模様にする事に決めました。メインはやっぱり桜ね。綺麗だし、みんな好きだったし。

 お父様には、黒いハンカチに淡いピンクの桜と花びらを刺繍。夜桜のイメージね。お母様には、白いストールにお父様とお揃いの糸で桜と花びらと、緑の葉っぱも刺繍して、昼の桜をイメージしてみました。時間はかかったけど、私にしては良く出来たと思うの。身内贔屓かもしれないけど、アリーやレン、セバスチャンが褒めてくれたし、これでいいよね。それに最近、腕を上げたクッキーも付けて、タウンハウスに届けて貰った。
 お父様もお母様も、刺繍を贈ったのは初めてだったので、すごく喜んでくれたようだ。

 お父様が親バカ丸出しで、王宮の執務室にハンカチを額に入れて飾った事で、王宮でそのことが話題になっていたのと、お母様がお茶会に行くのに、ストールを身に付けて行ったことで、他の夫人達の目に留まることになったのを、私は知らないまま過ごすのであった。
 桜はこの国には存在しないこと、着物をイメージして刺繍した事で、異国風な仕上がりになり、新しい物に敏感な貴族達の間で噂になっていたようだ。


 ある日、王都のお父様とお母様から、手紙と私の好きなロマンス小説が届く。あっ!これは新作ね。ラッキーと喜ぶ私は、その後に手紙を読んで、すぐに寝込む事になるのだった。

 手紙には、お母様の仲の良かった従姉妹の伯爵夫婦が、少し前に馬車事故で亡くなったこと。伯爵の爵位は弟夫婦が継ぎ、亡くなった夫婦の一人息子も引き取ったが、弟夫婦の子供と差別され、一人息子が蔑ろにされており、とてもかわいそうなので、養子として引き取ることにしたこと。私と同じ年で、誕生日が私より早いので義理の兄になること。すでに王都のタウンハウスで一緒に生活していることが書いてあった。

 スーッと血の気が引く。
 義理の兄ができる?それってやっぱり、乙女ゲームの攻略対象者じゃないの?やっぱり、私は悪役令嬢なの?

 私は過呼吸を起こして、倒れたのだった。


 気がつくと、ベッドに寝かされていた。すぐにアリーが来てくれる。最近はずっと元気だった私が倒れたので、かなり心配を掛けてしまったようだ。こんなときに、いつも側にいてくれるアリーの存在が有難い。
 もう平気だと言ったが、アリーもレンもセバスチャンも過保護で、しばらくは無理をしないでゆっくり過ごすという約束をさせられてしまった。

 一人ゆっくり部屋で過ごして考えたこと。
 もう、揉める前に白旗を掲げよう。一応、世間には病弱で領地で療養中の令嬢となっているはずなので、侯爵家は義兄に継いでもらいたいと言う意思表示をして、両親には傷ついた義兄を私にしてくれたように、愛情を持って大切にして欲しいことを伝えて、義兄の性格が歪まない様に頑張って貰おう。
 そして、私は病弱を理由に極力領地から出ないで、義兄ともあまり関わらず、嫌われないように気を付けて生活をする。
 時期が来たら、急に元気になったので、冒険者になるか、治療士として騎士団か魔術師団あたりに入るので、家を出ますと。それが無理なら、得意の刺繍かお菓子作りでどこかの店で雇ってもらうか、または王宮の文官あたり目指す?確か、寮があるよね。
 とりあえず、体調が戻ったらまた、剣術・馬術・魔法・勉強と頑張らないとね。自分の将来の為に!
 今回は楽しく長生きしたいのよ!早死にしたくないの!アラサーは負けないわ!

 そう思った私は、早速、両親に手紙を書く事にした。傷ついた義兄を、愛して大切にしてあげて欲しいこと。しばらくは大変だろうから、私は平気なので、義兄を優先してあげて欲しいこと。私は体の関係で領地を出れないので、義兄さえ良ければ、侯爵家は義兄に継いで欲しい事を書き、いつか家族みんなで会える日を楽しみにしていると、手紙を締めくくった。

 そして、義兄にもごますりの為に手紙を書いてみた。今まで1人だったので、兄が出来てとても嬉しいこと。両親も家族が増えて喜んでいるだろうから、仲良くしてくれたら嬉しい事。私は病弱で、領地で生活している身なので、侯爵家を継ぐことは難しく、将来が不安であったが、義兄が来てくれて安心したこと。侯爵家はぜひ義兄に継いでもらいたいと書いてみた。いつかお会い出来る日が来る事を、楽しみにしていると手紙を締めくくった。
 そして、手作りのクッキーと一緒に届けてもらった。


 この手紙を読んだお母様が泣き出してしまったことを私は知らない。
 また両親は義兄に、私が馬車が苦手で、長時間の馬車移動が難しいことで、領地で生活していることと、少し前は病弱だったが、今は元気で魔法と刺繍が得意で、剣術と馬術を嗜むということを、すでに話していたのであった。
 手紙を読んだ父と義兄に、ここまで跡取りになりたくなかったのかと、思われてしまったことを私は知らないのであった。


 
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