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アンネマリー編〜転生に気付いたのでやり直します

パーティー1

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 学園のパーティーホールに着くと、他の生徒たちからの視線が痛い。
 目立っているのは分かってますからね!だって、こんなにかっこいい大物がエスコートしてくれているのですから。

 こんな時でも、シリル様といると悪意を持って絡んでくる令嬢はいないので安心できる。変に絡むと倍返しでシリル様が退治してくれるからだ。

 元婚約者の時には無かったよね。むしろ、蔑ろにされて、取り巻き令嬢にバカにされて、もっと早く婚約の話を白紙にしておけば良かった。

 なんて考えていると、辺境伯令嬢のローズに会いました。
 女性でありながら、剣術にもすぐれ、長身美人で、まるでオス○ルのよう。濃い夜空のようなブルーのマーメイドラインのドレスに綺麗な金髪が映えて。あのコ、私の親友なのって自慢したくなる。隣には、騎士志望の一つ上の幼馴染が。長身で爽やか系の彼とはお似合いだ。まだ、幼馴染?らしいが。

 あっ!近くにリーゼいる。淡いピンクのふんわりしたドレス。かわいいお人形さんっぽいリーゼによく似合っている。怒らなければ、こんなに可愛いのに。隣には、最近いい感じのクラスメイトの子爵家の子息。彼も文官志望で優秀なんだよね、誠実そうだし。将来は嫁に行くより、実家の大商会の支店を切り盛りしたいリーゼには理想的な彼かも。

 ええと、レベッカはどこかな。今来たわね。一つ上の魔術師団長の子息である婚約者と一緒に。あの2人は仲良しで、本当に羨ましかったな。
 細かく複雑な刺繍が沢山入ったグリーンのドレスは、大人っぽくて、華やか美人のレベッカにぴったりね。

 私たちは、それぞれのパートナーやドレスの話で盛り上がるのだった。

 すると、パーティー開始の時間になったのか、学園長や理事など、学園のお偉いさん数名に、あれは王太子殿下?がホールの壇上に現れた。

 殿下は入学式や卒業式のパーティーじゃないのに、わざわざ何しに来たのかしら。婚約者のソフィア様とただダンスしに来た訳じゃないわよね。
 
 長期休暇前の学園のパーティーに王太子殿下がいるなんて珍しいので、会場は少しだけザワつく。すると、バチっと目が合ってしまった。私と同じ色の髪と目に、王妃様譲りの美形は、今日も腹黒を感じさせる胡散臭い笑顔で微笑まれる。隣で「ふっ」っと、シリル様が笑いを堪えている。
 さすが、側近!あの胡散臭い笑顔は何か企んでいることにお気づきですね。

 すると学園長に名前を呼ばれ、登壇するように言われる。

 目立つの嫌だなぁと思っていると、シリル様が手を差し出してくれる。壇上の近くまでエスコートしてくれるようだ。少し緊張してきた私にとって、とても心強い。優しい瞳で私を真っ直ぐに見つめるシリル様に、私は微笑み返し、手を取った。
 
 私達2人が歩き出すと、スッと道ができる。そうよねー、大物シリル様の道を阻んだら、倍返しされちゃうからね。

 壇上に上がると、学園長が会場の在校生に向けて、私を紹介したので、私は会場に向かってカーテシーをする。学園長が、私が飛び級制度を利用し、卒業認定試験に合格したので、本日をもって卒業する事を正式に発表された。

 会場がザワっとする。みんな、初耳と言ったような反応だ。

 クラスメイトも親友達もシリル様も、事情を知る人達は、ちゃんと秘密にしてくれていたのね。私が要らぬ僻みや中傷を受けないように。勉強に集中出来るように、影で色々と守ってくれていた。何も知らない令嬢達には、勉強するフリをして、シリル様に近づいたみたいに言われたこともあったけど。

 学校長から卒業証明書を渡されて、おめでとうございますと労いの言葉をいただき、これで終わりかなと思い微笑んだその時、このタイミングで腹黒が横からしゃしゃり出てきたのであった。

「アンネマリー嬢、卒業おめでとう。」

 王太子殿下から、大きな花束を渡される。あら、スイトピー、ガーベラ、かすみ草、私が好きなかわいい花ばかり。

「王太子殿下、ありがとうございます。」

「せっかくだから、皆んなより先に学園を去る、アンネマリー嬢から、一言もらおうか。」

 そう来たか、腹黒殿下め!私が目立つのが嫌いなのを知っているくせに。

 私は笑顔が引き攣るのを我慢した。

「このような場で私のような者が発言することを、どうかお許しくださいませ。」
「この学園で沢山のことを学ぶことが出来たこと、素晴らしい先生方、尊敬できる先輩方、私をいつも支えてくれた友人達に出会えたことに感謝致します。そしてここで学んだ事を、この先の私の人生においての糧にし、生きて行きたいと思っております。本当にありがとうございました。」

 私は非常に当たり障りのない言葉を述べて、カーテシーをし、シリル様の所に戻った。

 王太子殿下は物足りなそうな表情をしていた。
 ふふっ。私、こんな場所で余計な事は喋りませんから。

 ダンスの音楽が始まる。王太子殿下と婚約者のソフィア様がいるので、一曲目は2人だけで踊るのかなぁと思っていたら…。殿下とソフィア様が笑顔で私たちを手招きしている。えっ?と思っていると、殿下の従者の方が来て、

「殿下が、お二人も一緒に踊るようにとのことです。」

 あぁー。そう来たの!私が目立つの嫌いなのを知っていて、本当に腹黒だわ。
 するとシリル様が真顔で跪いて

「アンネマリー嬢、私と踊って頂けますか?」

 そんなの決まっている。

「はい。喜んで。」

 私達のやりとりを聞いていた、レベッカ達や近くにいた令嬢達が、まぁーとか、きゃーって声を上げていたが、ごめん。今はそれに反応出来る余裕がありません。

 ホール中央で先に踊っている殿下達から、少しだけ離れた横で踊り始める私達。

 シリル様って、勉強だけじゃなくてダンスも出来るのね。初めて一緒に踊るのに、すごく踊りやすい。

 殿下達と私達の2組だけが踊っていて、とても目立って、周りからの視線が痛いはずなのに、全然辛くないし、安心して踊れている気がする。多分これはシリル様パワーだろうな。

「シリル様はダンスがお上手ですね。とても踊りやすいですわ。」

「そうか?昔、厳しいレッスンは受けたが、最近は殆ど踊ってなかったから、少し不安だったのだが。それより、アンネマリー嬢はさすがダンスは上手だな。」

「それは、パートナーがシリル様だからですわ。シリル様でなかったら、こんな沢山の人に注目されたら、緊張して上手く踊れてなかったと思います。今日はシリル様がパートナーで心強いですし、今まで楽しくなかったパーティーが楽しいのです。」

「…そこまで言われてしまうと、勘違いしてしまいそうだ。」

「えっ?」

「いや、そこまで褒められてしまうと、恥ずかしいな。」

 シリル様の顔が少し赤くなってるような…。と思ったら、ん?
 腹黒とソフィアさまが、2人でこっちを見てニヤニヤしている。おい、こっち見んな!っていう笑顔で見つめ返す私。そんな私と殿下達を見て、何かを悟ってため息をつくシリル様。
 
 緊張していたはずのパーティーは意外にも楽しく過ぎて行くのであった。




 だから私は気付かなかった。離れた場所から、悲痛な表情で私を見つめる人がいたことに…。




 
 

 

 
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