元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

文字の大きさ
上 下
6 / 161
アンネマリー編〜転生に気付いたのでやり直します

学園と私の親友たち

しおりを挟む
「行ってらっしゃいませ。」

 学園の正門の前で馬車を降り、アルから鞄を手渡される。

「行って来るわね。」

 友人に久しぶりに会うのが嬉しくて、ルンルンして歩く。

「アン、もう大丈夫なの?」
 
 教室に入るなり、すぐに声を掛けてくれる私の親友であるレベッカ。国の司法を司る家門の侯爵令嬢で、赤い髪にぱっちり黒目の、ゴージャス系の美人だ。
 ん、なんで私の髪をいじってるのアナタ?

「高熱がひどかったけど、元気になったわよ。なぜ私の髪で遊んでいるのかしら?」

「綺麗だから触りたくなっただけよ。よく似合っているわ。ただ、痩せたわね。」

 さすがよく見てるわ。
 二人で話をしていると、

「ご機嫌よう。」

 綺麗な金髪に青い瞳の凛々しい美人、辺境伯の令嬢のローズと、チョコレートブラウンの髪にゴールドの瞳、人形のようなかわいい容姿を持ち、実家は外国とも手広く取り引きをしている大商会を経営する金持ち伯爵令嬢のリーゼが登校してきたようだ。

 いつも私とこの3人でいることが多い。親友3人は私が痩せ細る程、大病を患ったことを知ると、なぜ知らせなかったのか、お見舞いに行きたかったなど言っていた。うつると悪いから、連絡を遠慮させてもらったことを話すと、連絡くらいは何でもいいから寄越せだそうだ。3人共、高位の貴族令嬢だから腹黒な所もあるが、根は優しいコたちなのだ。私は友人には恵まれていると思う。
 
 約2週間休んだ分、授業が遅れているのでノートを見せてもらったりして忙しくしていると、あっという間にお昼になる。

 学園での昼食は広い高級レストランのような食堂に移動し、円卓テーブルの席に着くと、給仕がやって来て、ランチの日替わりコースメニューを出してくれるシステムになっている。希望すれば、テイクアウト用に包んでくれ、割と便利である。

 4人で空いているテーブルを探していると、少し離れた所に、今の所はまだ婚約者の彼の姿が見える。その事に気付いたレベッカが視線で訴えながら、

「挨拶に行かなくていいのかしら?」

「そういうのはもうやめて、極力関わらないで生きて行く事に決めたから、あのお方から離れて見えなそうなテーブルに座りたいのだけど。」

 レベッカは目をまん丸にして私を見つめる。ローズとリーゼは、面白そうな物を見る目で、私を見つめ、

「それは、事情を聞かないとね。」

「可愛くイメチェンしたと思ったら、そういう事なのね。」

 明らかに楽しんでますよね。あなた達。

 隅のあまり人目につかないテーブルを見つけ、前菜のサラダを食べていると、三人の視線が痛い。あぁ、早く教えろって言う無言の圧力ですね。

 そこで私は、アルに話したように、病気で生死を彷徨ったことをきっかけに、今までの自分の人生に疑問を持ったこと、関係を改善しようとしない婚約者に疲れたこと、両親のような愛のある結婚がしたいこと。それに、実は仮の婚約であったので、白紙にしたいということを話した。周りに聞こえないようにね。

 3人とも、私の急な心境の変化に戸惑いつつも、今までの婚約者の私への態度は思うところがあるらしく、私の仮の婚約の白紙については理解してくれた。

 ローズが教えてくれた話によると、実は仮の婚約ってカタチは、特別珍しい訳では無いらしい。また婚約者を子供の頃につくらない貴族も珍しくは無くなってきているという。

 少し昔、学園で爵位の低い男爵令嬢が、高位の貴族令息を誘惑して、令息が子供の頃からの婚約者に婚約破棄を言い渡し、揉めた事が沢山あったらしく、子供の頃から婚約者を決めることに対して、不安を持つ人がいるようだ。
 実際、ローズとリーゼには決まった婚約者はいない。割と好きにやっていて、羨ましいと思ってはいたのだ。

 なるほどね…。高位の貴族令息を誘惑する男爵令嬢ねぇ。たぶん、今現在も存在してますよね!

 そういえば、お父様にあの方と話をするようには言われたけど、どうしようかな。今更、面倒だわ。

 


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
【完結しました】 王立騎士団団長を務めるランスロットと事務官であるシャーリーの結婚式。 しかしその結婚式で、ランスロットに恨みを持つ賊が襲い掛かり、彼を庇ったシャーリーは階段から落ちて気を失ってしまった。 「君は俺と結婚したんだ」 「『愛している』と、言ってくれないだろうか……」 目を覚ましたシャーリーには、目の前の男と結婚した記憶が無かった。 どうやら、今から二年前までの記憶を失ってしまったらしい――。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~

百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!? 男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!? ※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...