元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

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アンネマリー編〜転生に気付いたのでやり直します

両親に打ち明けました

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 療養生活にも飽きて、自室でぐうたら、食っちゃ寝をしていると、

「お嬢様、旦那様がお呼びです。」

何というタイミングでしょう。

 お父様の書斎に入ると、うちの麗しいボス(母)が、恐ろしい笑顔で迎えてくれる。お父様の書斎のはずなのに、この部屋はお母様のテリトリーにしか見えません。

「お呼びでしょうか?」

 思わず笑顔が引き攣る私です。

 ここで、やっと存在感を発揮したお父様が口を開きます。

「アン、お父様たちに何か話すことがあるのかな?」

 いつもと変わらず優しい口調なのに、なぜこんなに恐いのか。

 ここで負ける訳にはいきません。話をさせていただきましょう。

「あの方との婚約を解消したいのです。お許しいただけますか?」

 ついに言ってしまいました。


「……わかった。」

 えっ!わかったって言った?

「いいのですか?」

 こんなあっさりいいの?

「学園を卒業する18歳までは仮婚約として、それまでにどちらかが婚約を拒否するようなら、婚約を白紙にすると誓約書で交わしているから、問題はないよ。」

 そんなの初耳なんですけど!早く言ってよー。
 私が言葉を失っているとお父様は、

「政略結婚をしなくてはいけないほど、生活に困ってないし、婚約の話が無くなったからといって、公爵家と気まずくなるような関係でもない。この婚約はお互いの虫除けという、利害関係の一致からきたものだ。」

「虫除けですか。」

「うちも公爵家もそれなりの権力も財もある。子供を使って取り入ろうとする者は沢山いる。婚約をしつこく迫ってきたり面倒だからね。公爵家の嫡男が婚約者なんて、最高の虫除けになるだろう。」

 お父様、笑顔が黒いです。
 虫除けどころか、良縁まで避けられましたが。しかも、婚約者の取り巻き令嬢方のやっかみというおまけつきで。


「婚約というのは、お互い思いあっていれば幸せだが、そうでなければただの足枷にしかならない。子供の時は問題なくても、大人になるに連れて、気持ちが離れることもある。だから、誓約書を交わして18歳までは仮婚約ということにした。それに…、アンはお父様みたいな人と愛のある結婚をしたいのだろう?そう聞いたよ。」

 ん?最後何だって?誰に何を聞いた?

 部屋の隅で空気のように振る舞う、猫被り護衛騎士め!余計なこと言ったな!あっ、目を逸らした!

 まぁ、父の名誉の為にもそういうことにしておきましょう。

「お父様とお母様のような夫婦が私の理想ですから。あのお方とは、それは無理だと判断しました。」

 ここで、パチンと扇子を閉じる音が。今日も素晴らしい扇子さばきです、お母様。

「アン!女性は愛されてこそ輝くし、幸せなのよ。あなたが、無理と言うなら婚約解消はお母様は反対しないわ。」

 それは、ボスも婚約解消を許してくれるという事でよろしいのですね。

「ありがとうございます。しかし、仮とは言え、婚約の話が無くなった事によって、家の醜聞になってしまうのが心配なのですが。」

 私としてはそこが一番心配なのである。

「良からぬ噂を立てる者はいるだろうが、そんな噂など、簡単に潰せる力くらい持っているつもりだ。」
お父様が頼もしく見えてきたぞ!

「うちの娘を悪く言うようなら、社交界を追放して差し上げるわ。」

さすが、社交界の女ボスです。サラッと怖いことを言います。

「それと、最近はずいぶんと自分を押し殺して、我慢していたみたいだけど、あなたに仇なすものがいたら、遠慮しないで潰していいのよ。」

 お母様!綺麗な顔して物騒なことをおっしゃいますね。
 学園での、婚約者の取り巻き令嬢達からの嫌味のことかしら。今まで何も口にしなかっけど、知っていたのね。

「そうですね。今のままでいるのは、もうやめることにします。それと、私の今後ですが、婚約者がいないので、新たにだれか探すのでしょうか?それとも、修道院行きですか?絶縁で平民に落ちるのでしょうか?」

 お父様もお母様も、「えっ?」という表情だ。

「アンはロマンス小説の読み過ぎじゃないのか?」

 お父様ったら、私の趣味を知っていたのですか。

「かわいいウチの一人娘をそんな風にする訳ないわ。しかも、もしあなたに何かあれば、お爺さまが出て来て、面倒よ。」

 この国の元国王陛下であるお爺さまを、面倒などと言い切ることが出来るのは、娘で王女だったお母様か、元王妃のお婆さまくらいでしょうね。元国王陛下の孫は皆んな男子で、女子は私だけ。しかも娘によく似ていると言われる孫娘。自分でも可愛がられてる自覚はあります。

「あなたは、王家の血を引いているの。腐っても姫なのよ。婚約が白紙になったと知れたら、新しい縁談の申し込みがくると思うわ。いい殿方がいれば良いけど、よろしくない殿方や家門の方もいると思うから、気を付けて生活しなさい。」

 今はまだ腐っているつもりはないのですが
「わかりました。」

「アン、それはそうと、仮の婚約を白紙にするにしても、婚約者殿と話はしなくていいのかい?最近は顔を合わせて話すことも無かったのだろう。」

 そこまでバレていたのか!

「あまり話すこともありませんが。」

「今は拗らせているが、子供の頃は仲が良かったし、それなりに情みたいなのもあるかもしれないよ。婚約を白紙にする前に話す機会があってもいいと思う。」

 男性目線のアドバイスでしょうかね。拗らせるなんてかわいいレベルではないように思いますが。

「そうですね。機会があれば話してみて、よく考えてみます。」
 
 思っていた以上にスムーズに話が進み、気が抜ける私であった。




  





 
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