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閑話 王弟アレクシス

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 ある日、いつものように執務室で夕食を食べている日のことだった。

「失礼します!王弟殿下、大変です。」

 側近の1人が、慌てて私の執務室に入ってくる。普段は感情を表情に出さない、切れ者の側近なのに、珍しいこともある。

「どうした?」

「聖女様が…。聖女様が毒を盛られました。」

 手に持っていたフォークが落ちる音がする。…リーナが毒?

「何だって?」

「陛下とディナーをしていたようなのですが、ワインを口にした後に、吐血して倒れられたようです。」

 やっと再会出来たのに…。どうして?

「今から陛下の所へ行く!」

「はい!」




 兄上は悲痛な表情で、ベッドに寝かされているリーナの手を握りしめていた。

 リーナ…。こんなに顔色を悪くして。
 まだ再会して、きちんと言葉も交わしていないのに。
 今の私は、リーナの手を握ることも、頭や頬に触れることも許される立場ではない。そのことが、こんなに辛いとは…。

「兄上。…大丈夫ですか?」

「アレクか。わざわざ来てくれたのだな。
 …リーナとディナーを楽しんでいたのだが、ワイングラスに毒が塗られていたようだ。…私はリーナを守れなかった。」

「兄上。聖女様の毒の調査は私達に任せて下さいませんか?私達の命の恩人である聖女様に、このような危害を加えた人間を必ず捕まえてみせます。」

「アレク、お前は戦後処理や他の執務で多忙だろう。だから、これは私と側近達で調べるから大丈夫だ。」

「兄上、お願いします!今回、私達騎士は聖女様のおかげで命拾いしたのです。その聖女様の命を狙った者に報復したい。兄上こそ、執務が忙しいのは知っています。ですから、私にやらせて下さい!」

 リーナの命を狙ったヤツは絶対に許さない!

「…そうか。アレクがそこまで言うなら、アレク達に託すか。よろしく頼む。」

「ありがとうございます。では、私は今からすぐに調査に向かいます。兄上は、聖女様の側に付いてあげてください。では、失礼します!」

 1分・1秒でも早く犯人を捕らえる為に、今すぐに動こう。

 恐らく、犯人は大公か公女あたりだとは思うが、証拠が無ければ罰することは出来ない。
 最悪、暗殺してでも消してやろう。

 私のリーナに手出ししたことを後悔させてやる。


 だから、リーナ…。早く目覚めてくれ。
 今度こそ、君に私の想いを伝えたいのだから。


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