3年前にも召喚された聖女ですが、仕事を終えたので早く帰らせてもらえますか?

せいめ

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閑話 王弟アレクシス

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 前世の記憶を思い出した私だが、特に何も変わらず今まで通りの日々を送っていた。

 記憶のことについては誰にも打ち明けることはしなかった。言っても信用してもらえる自信はなかったし、言う必要性も感じなかったからだ。

 兄上とは相変わらず仲が良かったし、国王と王妃でもある両親は、私達が仲が良いことを喜んでいた。
 両親は、将来、国王になる兄上を1番に支えることが出来るようにと、私に対しても厳しい教育を施す。厳しく感じても、私のことを大切に考えてくれているのは伝わって来たので、何の不満もなく、第二王子として育てられた。

 兄が成人を迎えた頃、父である国王陛下が体調を崩すことが多くなってきた。そのことで、まだ若い兄上が王位を継ぐことになる。

 しかし、兄上が王位を継承して2、3年経つ頃だったと思う。元気だった兄上も体調を崩すことが多くなったのだ。原因が分からず、どうしようかという時だった。国境沿いに張られていた結界の効果が消えつつあることが判明する。あの頃に、リーナが張ってくれた、私にとって特別な結界。

 結界がなくなると、魔物が増え出したり、他国が攻め込んで来たりする危険性が高くなる。あの時もそうだった。

「兄上。新しい結界を張るために、急いで聖女を召喚するべきです。」

「分かった。神殿に協力を求めよう。」

 しかし、聖女を召喚出来る程の、強い魔力を持つ神官を探すことに難航するのである。

 その頃からだと思う。国境付近で他国との小競り合いが増えるようになるのだ。…何かがおかしい。このタイミングで、色々なことが起こり過ぎている。

 国境付近で隣国の動きが活発となり、私自身が騎士団を引き連れて出征することになった。

「アレク。私がこんな体で、何も出来ずに申し訳ない。気を付けて行って来てくれ!神官が見つかり次第、すぐに聖女を召喚する。必ず、生きて帰って来い!」

 兄上は体調を崩すことが増えて、とても戦地には行けそうにない。そのことを、とにかく気にしていたのだ。 

「兄上、どうかお身体を大切に。そして、アレには注意して下さい。命懸けで戦って来ます!行って来ます!」

 戦地に旅立つが、魔物や敵の数が多すぎて、戦いはとても厳しいものであった。
 
 王都にいる兄上とは、定期的に手紙のやり取りは行っていた。
 出征して数ヶ月経つ頃。兄上からの手紙に、魔力の強い神官が見つかり、聖女を召喚したと書かれている。
 とても喜ばしいことだったが、聖女がここに来れるまで私達の力が持つのか、その時の私は自信がなかった。数の多すぎる敵に、みんな疲れが出てきているのだ。

 聖女として召喚されて、聖女教育をして、聖女の能力を使いこなすのに、恐らくは半年以上はかかるだろう。召喚された聖女がリーナのように、真面目で努力家ならばよいが…。

 しかし、その後の兄上からの手紙には驚くことが書いてあったのだ。

〝異世界から来た聖女は、リーナと言う名の、150年前の聖女によく似た少女だ。彼女は心優しく、私の呪いに気づくと、すぐに呪いを解いてくれた。真面目で優秀なリーナは、もうすぐ聖女教育を終えて、すぐに戦地に向かいたいと言っている。アレク、後少しの辛抱だ。〟
 

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