3年前にも召喚された聖女ですが、仕事を終えたので早く帰らせてもらえますか?

せいめ

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帰りたいのに

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 私の部屋に行くのかと思っていたら、陛下の部屋に連れて行かれる。

「人払いを頼む。」

 護衛騎士や従者達は部屋の外に出て行ってしまった。
 部屋に2人きり。…これはコレで気まずいぞ。
 陛下はそっとソファーに私を下ろしてくれた。そして私の隣にピタッと座る。

「あの…、服を着たいので部屋に戻りたいのですが。」

「ああ。すまない。先に大切な話をさせて欲しいのだ。」

「分かりました。」

「……リーナ。弟が君に酷いことをしてしまって、申し訳ない。私が謝って済む問題でないのは理解している。しかし昨日のパーティーで、君のことを弟に頼んだのは私だ。本当に何と詫びていいのか…。」

 陛下は両手で私の手を握りしめ、真っ直ぐに見つめて謝ってくれた。

「陛下は悪くありません。私もお酒を飲み過ぎないようにと言われておきながら、飲んでしまって、酔ってしまいましたから。それで…、その、お願いが。」

「ああ、言ってくれ。」

「早く元の世界に帰りたいと思います。こんな醜態を晒して、ここに居続けるのは辛いのです。ただ、カーティスのことが心配で…。陛下に彼のことをお願いしたいのです。王弟殿下には助けて欲しいと話をしたのですが、駄目みたいでした。私には陛下にお願することしか思い浮かばなくて。」

「リーナ、本当に悪かった。醜態だなんて思わないでくれ。リーナは悪くないのだから。弟が酒に酔った君を転移魔法で連れ去ったのは分かっているのだ。君は被害者だ。…まさか、アレクがあそこまでするとは…。」

 泣きそうな表情の陛下だった。

「リーナ。この国では、王や王位継承権が3位までの者が女と体の関係を持った場合、その女は妃か愛妾にしなければならない決まりがあるのだ。王位継承を持つ子を孕む可能性があるからな。例外なのは、相手の女が閨の指導の者か、既婚者、平民または娼婦であった場合のみ。…この意味が分かるな?」

 何を言ってるの?頭の中が真っ白になる。それって、もしかして…。

「私は王弟殿下と………、」

「そういうことになる。」

「帰れないのですか?」

「…帰りたいだなんて言わないでくれ。」

「わ、私は帰りたいです。…っ、うっ。王弟殿下と…、そんな関係にはなれませ…ん。うっ。うっ。」

 死刑宣告されたような気分だった…。涙が溢れて止まらない。

「リーナ、泣かないでくれ。……愛しているんだ。」

 えっ、愛してるって言った?こんな時に?
 陛下は私をギュッと抱きしめる。



 気付くと、ソファーに押し倒されていた。

 後で反省することになるが、私は流されやすい性格だと思う。陛下も、さっきまで弟と体の関係があった私に手を出すなんて…。
 同じ日に2人の男性とするなんて、今までの私ならあり得ないことだと思う。



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