3年前にも召喚された聖女ですが、仕事を終えたので早く帰らせてもらえますか?

せいめ

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 王弟殿下とのダンスはとにかく緊張した。足を踏まないように慎重にダンスする私。話をすることも、笑顔を作ることも、そんな余裕はなかった。

 それなのに、王弟殿下は楽しそうにしていた。こんなダンスの何が楽しいのか、全く理解出来ないわ!もしかして、焦っている私を見て楽しんでいるとか?
 …腹黒か?

 ふぅー。何とか一曲踊り終えた私。ほっとしたのが表情に出てしまっていたようだ。

「リーナは慣れないダンスを一生懸命踊っていて、とても可愛いですね。…頑張り屋なところは、全然変わってないな。」

 変わってないって言った??この人何者なの?

 カーティス!助けてぇー!

 ああ、やっぱり私の心の友?じゃなくて、私の護衛騎士にカーティスも入って欲しいわ!

「リーナ?慣れない場で疲れたかな。表情が固いようだ。すこし、休憩してこようか。何か美味しいものでも食べれば、気分も落ち着くと思うから。」

 えっ?こんな怖い人達と何か食べても、美味しくないから!

「殿下、少し壁際で休めば大丈夫です。それよりも、私が殿下を独占したら、殿下と踊りたがっている御令嬢の方々に申し訳ないです。私は平気ですから、ぜひ他の御令嬢たちとも交流をしてください。」

「そんな必要は無いかな…。せっかくだから、君が助けて欲しいって陛下にお願いしている、将軍の今後の話とかしたいと思っていたのだけど…。」

 ひぃー、腹黒だ!王弟殿下は腹黒で危険。しかし、カーティスのことは絶対に助けたい。

「…分かりました。」

「リーナ、分かってくれて嬉しいよ。じゃあ、別室に行こうか。」

 王弟殿下に腰を抱かれ、殿下の側近達に周りを囲まれた私は、別室に案内されるのであった。

 部屋に案内されると、すぐに色々な料理やスイーツが運ばれて来る。
 うっ!食べる気はなかったのに、美味しそう。しかも、私の好きな物ばかりじゃん!

「リーナ、私がリーナの好きそうな物をとってあげよう。」

 胡散臭い笑顔の王弟殿下。

「はい!リーナ、沢山食べて。」

 うわ!何で私がパイ包みが好きなの知ってるの?しかも、キッシュによく似たタルトも好きだし、ビーフシチューに似た、肉の煮込み料理も好き。

「…殿下、いただきます。」

 食べ物の誘惑に簡単に負けた私だった。

「殿下!とても美味しいです。ありがとうございます。」

 ああ、情けない。美味しい物で手懐けられられてしまっているみたい。
 大切なお願いもしないと…。

「殿下、このような場でこんなお願いをする失礼をお許し下さい。どうか、将軍様を助けて頂けませんか?あの方は、私の大切な友人なのです。」

 殿下の目が一瞬冷たく見えたような気がする。やはり、この人は怖い。
 そして、カーティスを助けるということは、私が思っている以上に難しいことなのだと、直感的に思ったのであった。



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