3年前にも召喚された聖女ですが、仕事を終えたので早く帰らせてもらえますか？

1度目

約束のために

　殿下から、この国で魔物が大量に発生していることや、周辺国からの侵略の可能性、その為に戦っている騎士達を助けて欲しいことと、国に結界を張って欲しいことをお願いされる。
　正直、ファンタジーとかゲームの世界かよ？って思う話だったけど、メイド達から何となくそのような話を聞いてはいたから、割と冷静に聞けた私だった。

　全て終われば私の希望を叶えてくれると言う。私は迷わず、終わったら早く元の世界に帰して欲しいことを話した。殿下や側近の方達は驚いていたが、私は早く家に帰りたい、元の世界でやりたいことがあると言うと殿下達は理解してくれ、終わればすぐに帰してくれると約束をしてくれた。

　次の日からは、聖女として必要な知識と魔法の練習、この国の文化やマナーなどを学ぶ日々だった。
　元々私は毎日勉強漬けの生活だったから、この生活は苦には感じなかった。空いている時間にも本を広げて勉強をする私に、殿下やその側近たち、メイドや護衛騎士たちは驚いていた。そこまで必死にやるなんてと…。
　でも、受験勉強してきた人なら特別なことではないと思うの。
　それに私は、早く終わらせてさっさと帰りたかった。楽しい大学生活を夢見て今まで頑張って来たんだから。
　そして、そこそこの会社に就職し好きに生きて、楽しい独身生活をしたいの！
　こんな魔物が出るような異世界にずっとはいたくない。スマホもないし、ゲームもマンガもない世界なんてイヤ！

　そんな私を見た王宮の騎士やメイド達、そして殿下や側近の人達は、頑張る私を評価してくれたようで、知らないうちに沢山の友人ができて仲良くなって行った。

　苦労が報われて、聖女の能力や知識を得た私は、護衛騎士達と専属メイド、そして王太子殿下とその側近達と、魔物討伐と結界を張る旅に出ることになる。

　国境の境目を移動しながら結界を張る仕事はスムーズに行ったが、国境付近の魔物は上級魔物が多くて、怪我をする騎士が沢山いた。騎士達の怪我を治し、更に、病気や怪我で苦しんでいる住民も治療しながらの旅は大変だったけど、やり甲斐はあって充実はしていたと思う。
　そしてやっと結界を張り終わる。すると魔物は一気に減り出した。私の仕事はこれで終わりだ……。

　その頃には仲間達とかなり親しくなり、親友のような存在になっていた。

　結界を張る旅を終えて王宮に戻る頃には、国王陛下や国の貴族達、友人達から、本当に元の世界に戻るのかと何度も聞かれるようになる。結界を張り終えて魔物は減り、他国からの侵略の心配は無くなったが、残ってくれた方が心強いと言ってくれた。
　
　しかし、私は早く帰りたいから頑張ってこれたのだと話すと、みんなそれ以上のことは何も言わなくなっていた。