3年前にも召喚された聖女ですが、仕事を終えたので早く帰らせてもらえますか?

せいめ

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慣れない異世界で

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 しばらく寝込んでしまった私は、ゲッソリしてしまった。
 とにかく頭痛や怠さが続いて食欲が無く、寝込む日々だ。突然自分の知らない世界に来て、知り合いもいない孤独感が、更に体調を悪くさせていたのかもしれない。精神的にも参ってしまっていた。

 そんな私のところに、毎日、王太子殿下は側近を連れて見舞いに来てくれた。
 この国の為に、私みたいな小娘の機嫌を取っているんだろうな…。
 具合が悪い時に、家族や親友でもないのに、毎日来られるのは苦痛だった私。だから、メイドを通して、元気になるまでは見舞いは遠慮することを伝えてもらった。
 すると殿下からは毎日、綺麗な花や可愛いスイーツなどが届けられるようになる。気遣いの出来る男なのか、側近が気が利くタイプなのは分からないが、今まで男の子から、まともにプレゼントを貰ったことがなかった私は嬉しく感じた。

 私に付けてくれたメイド達は、とにかく親切で優秀だった。知り合いがいなくて寂しい私が、立ち直れたのは彼女達のおかげだと思う。さり気なく話しかけてくれたり、この世界のことを教えてくれたり、王宮のことや、この国の民達のことも教えてくれた。彼女達がそうやって色々な話をしてくれたので、この国にも親近感を持つことが出来たのだと思う。
 メイド達と仲良くなって来た頃、体調も良くなって来たので、久しぶりに殿下達に面会することになった。

 ただの面会なのに、メイド達はなぜか張り切って、私を磨いていた。サラサラの黒髪に仕上げ、白の清楚なドレスを着せられた私。自分ではこのカッコは無理し過ぎな気がしたが……。
 殿下達のいる執務室まで、初めて王宮内をまともに歩いた私は、痛いほどの視線に困っていた。

「ふふっ!やはりみんな聖女様の美しさに驚いてますわ!」

「当たり前よ!聖女様は磨かなくてもお美しいのに、今日は更に磨いて、眩しいくらいなのですから!」

 付き添ってくれているメイド達が、誇らしそうに話しているが、自分の容姿が特別じゃないのは自分が一番知っているからやめて欲しかった。

「あの…、私は自分がそこまで綺麗じゃないのはよく知ってますから、あまり無理に褒めないでください。」

 この一言が、更にメイド魂に火をつけてしまったようで、今後は更に磨かれて過ごすことになる。

 執務室に案内されると、すでに殿下や側近達は待ってくれていたようだったが、私を見て固まる殿下達。やっぱり、この気合いの入った服装に引いている…。

「……あっ!失礼。聖女殿、元気になられて良かった。何か不便な事はなかったかな?」

 うーん?この人達が何を考えているのか分からないな。しかし、優しい人達ではあるのかな。

 殿下達には、この世界で私に求められていることを詳しく教えてもらうことになる。

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