上 下
2 / 39

プロローグ 2

しおりを挟む
 隣国との戦争を終え、国に強力な結界を張り、怪我をした騎士達の怪我を治し、聖女の仕事を全うした私。

 非常に強い魔力を持ち、完璧な光魔法を使いこなす、聡明な聖女様というのが、私のこの世界での評価らしい。
 普通なら2、3年かかる仕事を半年で終わらせたからだろう。
 そりゃあ、早く終わらせることは出来るよ。だって、私の中では3年前にも召喚されて来たから、聖女は2度目なんだもん。慣れたもんよ!こっちの世界では150年経っていたけどね。
 しかも2度目だからか、前回より更に魔力が強くなってるような気がする。魔力が強くなった分、結界を張るのは簡単だったし、戦争で怪我をした騎士達も沢山助けることが出来たから良かった。

 この国のマナーやダンス、文化なんかも覚えていた私はすぐに適応出来たから、あの聖女様は優等生だって見えたらしい。

 1度目の聖女をやった時は、友人が沢山できて、親しく付き合い過ぎた結果、別れが大変だった。
 だから、今回は自分の身の回りのお世話をしてくれたメイド達と、護衛騎士以外とは深くは付き合わないようにした。
 さっさと仕事を終わらせて、すぐに帰るつもりなのだからそこまで人と深く付き合うつもりはなかった。

 護衛騎士は、国王陛下が手練れの騎士数人から選ばせてくれたが、若いイケメン騎士は選ばず、ベテランの強面のオジ様の騎士を選んだ。
 同年代の騎士だと恋愛関係になったり、距離が近くなり、親しい友人になってしまうかもしれないから、あえて避けたのだ。オジ様騎士なら、家族がいるだろうし、いい距離感で付き合ってくれるだろうと考えた。

 あまり顔を覚えられたくない私は、童話の魔法使いのように、いつもフードを深く被って、素顔を見せずにいた。私なりの一歩引いた付き合い方のつもりだったが、知らない人からするとミステリアスに見えていたようだ。
 そんな私が強面のオジ様騎士と行動する姿は、どのように見えていたのか分からないが、まあいいや。

 2度目の聖女の仕事も無事に終えた私は、国王陛下主催の戦勝パーティーに参加することになる。
 正直面倒だったが、最後くらいは聖女を正式にお披露目して、国内の貴族達と交流して欲しいと、まだ独身イケメンの国王陛下に頼まれてしまったのだ。
 最後だからしょうがない。これが終わったら、さっさと日本に帰してもらおう。

 メイド達はパーティーの数日前から、非常に張り切って私を磨いていた。
 若いのにおしゃれをしないで、美しい顔をフードで隠し、質素で地味な格好をなさっていた聖女様は、実はこんなに美しい方なのだと、貴族達を驚かせたいのだとメイド達は言っていた。

 そう。実はこの世界で、私は美女に見えるらしいのだ。
 日本にいる時は、普通よりは可愛いかな? くらいのレベルで、そこまで絶賛される程ではなかった。
 バレエをやっていたから姿勢が綺麗で、人より少しスレンダーなくらい。しかし、世界が変わり文化の違う国に来ると、ここでは美女に見えるらしい。
 しかも、日本人の黒髪は高貴な色らしく、メイド達は綺麗だといつも褒めてくれた。
 これに慣れてはダメ。私はすぐに日本に帰るから、自惚れないで謙虚にいかないとね。


 メイド達が張り切っていた戦勝パーティーで、かつての友人達と再会し、今後の予定が大きく変わっていくことになることを、その時の私はまだ知らない。


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

結婚したら、愛する夫が前世の憎い婚約者だったことに気付いてしまいました

せいめ
恋愛
伯爵家の私生児として冷遇されて育ったアリシアは、行儀見習いがきっかけで年の差17歳の公爵と出会って結婚。 夫の公爵は家族からの愛を知らずに育ったアリシアを溺愛し、結婚生活は幸せだった。 ところが、幸せを僻んだ姉に階段から突き落とされ、頭を強く打ったことで前世の記憶を思い出してしまう。 前世のアリシアは、アリスという侯爵令嬢で家族から愛されていた。 しかし婚約者の公爵令息とは冷めきった関係で、婚約解消したいと望んでいたが、不慮の事故によりあっさり死んでしまう残念な人生だった。 意識を失っていたアリシアが目覚めると、そこには今世の最愛の夫がいた。 その顔を見たアリシアは…… 逃げ出したいアリシアと彼女を絶対に離さない公爵の話。 誤字脱字申し訳ありません。 ご都合主義です。

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

モブに転生したので前世の好みで選んだモブに求婚しても良いよね?

狗沙萌稚
恋愛
乙女ゲーム大好き!漫画大好き!な普通の平凡の女子大生、水野幸子はなんと大好きだった乙女ゲームの世界に転生?! 悪役令嬢だったらどうしよう〜!! ……あっ、ただのモブですか。 いや、良いんですけどね…婚約破棄とか断罪されたりとか嫌だから……。 じゃあヒロインでも悪役令嬢でもないなら 乙女ゲームのキャラとは関係無いモブ君にアタックしても良いですよね?

転生したら攻略対象者の母親(王妃)でした

黒木寿々
恋愛
我儘な公爵令嬢リザベル・フォリス、7歳。弟が産まれたことで前世の記憶を思い出したけど、この世界って前世でハマっていた乙女ゲームの世界!?私の未来って物凄く性悪な王妃様じゃん! しかもゲーム本編が始まる時点ですでに亡くなってるし・・・。 ゲームの中ではことごとく酷いことをしていたみたいだけど、私はそんなことしない! 清く正しい心で、未来の息子(攻略対象者)を愛でまくるぞ!!! *R15は保険です。小説家になろう様でも掲載しています。

元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ
恋愛
 侯爵令嬢のアンネマリーは流行り病で生死を彷徨った際に、前世の記憶を思い出す。前世では地球の日本という国で、婚活に勤しむアラサー女子の杏奈であった自分を。  病から回復し、今まで家や家族の為に我慢し、貴族令嬢らしく過ごしてきたことがバカらしくなる。  また、自分を蔑ろにする婚約者の存在を疑問に感じる。 「あんな奴と結婚なんて無理だわー。」  無事に婚約を解消し、自分らしく生きていこうとしたところであったが、不慮の事故で亡くなってしまう。  そして、死んだはずのアンネマリーは、また違う人物にまた生まれ変わる。アンネマリーの記憶は殆ど無く、杏奈の記憶が強く残った状態で。  生まれ変わったのは、アンネマリーが亡くなってすぐ、アンネマリーの従姉妹のマリーベルとしてだった。  マリーベルはアンネマリーの記憶がほぼ無いので気付かないが、見た目だけでなく言動や所作がアンネマリーにとても似ていることで、かつての家族や親族、友人が興味を持つようになる。 「従姉妹だし、多少は似ていたっておかしくないじゃない。」  三度目の人生はどうなる⁈  まずはアンネマリー編から。 誤字脱字、お許しください。 素人のご都合主義の小説です。申し訳ありません。

転生したら避けてきた攻略対象にすでにロックオンされていました

みなみ抄花
恋愛
睦見 香桜(むつみ かお)は今年で19歳。 日本で普通に生まれ日本で育った少し田舎の町の娘であったが、都内の大学に無事合格し春からは学生寮で新生活がスタートするはず、だった。 引越しの前日、生まれ育った町を離れることに、少し名残惜しさを感じた香桜は、子どもの頃によく遊んだ川まで一人で歩いていた。 そこで子犬が溺れているのが目に入り、助けるためいきなり川に飛び込んでしまう。 香桜は必死の力で子犬を岸にあげるも、そこで力尽きてしまい……

ヒロインではないので婚約解消を求めたら、逆に追われ監禁されました。

曼珠沙華
恋愛
「運命の人?そんなの君以外に誰がいるというの?」 きっかけは幼い頃の出来事だった。 ある豪雨の夜、窓の外を眺めていると目の前に雷が落ちた。 その光と音の刺激のせいなのか、ふと前世の記憶が蘇った。 あ、ここは前世の私がはまっていた乙女ゲームの世界。 そしてローズという自分の名前。 よりにもよって悪役令嬢に転生していた。 攻略対象たちと恋をできないのは残念だけど仕方がない。 婚約者であるウィリアムに婚約破棄される前に、自ら婚約解消を願い出た。 するとウィリアムだけでなく、護衛騎士ライリー、義弟ニコルまで様子がおかしくなり……?

処理中です...