記憶喪失になったら、義兄に溺愛されました。

せいめ

文字の大きさ
表紙へ
上 下
3 / 33
1巻

1-3

しおりを挟む
 しかし、ある時からレティーに変化が表れる。
 ロバーツ侯爵家が跡取りとして親戚から養子に迎えた、義兄あにのクリストファーが来てからのことだ。
 レティシアは何かにつけて『お義兄にい様が……』と、義兄あにの話ばかりをするようになる。
 義兄妹同士で手を繋いでいたり、仲良く微笑み合ったり、両親が多忙なので、食事はいつも二人で食べていると聞いた。
 私の心の中が真っ黒に染まっていく。イライラするし、義兄あにの存在が面白くない。
 我慢のできなかった私は、レティーに話をすることにした。
『あまり義兄あに上と仲良くしないでね』と。
 婚約者である私の願いをレティーは理解してくれたようで、その後にレティーから義兄あにの話を聞くことがなくなった。義兄あにも私達を気遣って、あまり近づいて来なくなった気がする。
 ……それでいいんだ。私達は婚約者なのだから。
 義理の兄と仲が良すぎるなんて、周りから何と思われるかわからないのだから。


 レティーは、高位貴族専門のマナー講師をしている彼女の母君から、貴族令嬢としての行儀作法を厳しく躾けられ、誰もが認める令嬢となった。
 幼い頃のように顔を赤くしたり、恥ずかしがったりと感情を表に出さなくなり、レティーの可愛さがなくなってしまった気はしたが、相変わらず美しくて聡明で、優しいレティーを私は深く愛していた。
 私が一年先に貴族学園に入学してからも、休日には会う約束をして私達は仲良く過ごしていた。
 そして一年が経過し、レティーが入学する年になった。


「リアン。今度、うちの遠縁で田舎の男爵家の令嬢が来ることになったわ。うちに住んで、やしきから貴族学園に通うことになるから、面倒を見てあげなさい」

 母から呼び出された私は、遠縁の令嬢の話を聞かされる。

「遠縁の男爵令嬢ですか?」
「かなり遠縁で、ほぼ他人よ! お父様が男爵に頼まれて、うっかり引き受けてしまったらしいの。貧しくて寮費を払うこともできないらしくてね。あまり評判の良くない男爵家だから、令嬢にも注意はした方がいいわ」

 母は令嬢を預かることに乗り気ではないようだった。
 数日後、その令嬢がうちのやしきに来て、母が乗り気でない理由がすぐにわかった。

「ミリア・ゾグラフです。ミアって呼んでくださいね」

 母の彼女を見る目が恐ろしい。侯爵夫人である母は、礼儀に厳しいのだ。

「あのぉ、貴方がこの侯爵家の跡取りの方ですか? すごいカッコいいですねー」

 私達が引いていることにも気付かずに、馴れ馴れしくペラペラと喋る女。

「貴女、平民なの? 礼儀もマナーもご存じないみたいだけど?」

 母がついにキレたようだ。

「だから、ゾグラフ男爵家ですってば。でも、少し前までは市井しせいで母と過ごしていました。母が亡くなって、父のゾグラフ男爵に引き取られたんです」

 男爵の私生児らしい……。貧しいと聞いていたが、外に女がいたのか?

「……貴女。もし、侯爵家の名を汚すような真似をしたら、すぐに出て行ってもらいますから。わかったわね?」
「えっ? ……気を付けます。でも、親戚なんだから、よろしくお願いしますね!」

 この女との出会いが、私の人生を狂わすことになる。


 新学期が始まった。
 昨日は、新入生の入学式が行われて、今日からは全校生が登校して授業が始まる日だ。
 レティーも今日から登校して来るはず。
 初登校のレティーを迎えに、ロバーツ侯爵家に行きたかったのだが……

「ジュリアン様ぁ。貴族学園が広すぎて迷ってしまうのですぅ。私と一緒に行ってもらってもいいですか?」

 別々の馬車で行くつもりだったのに……

「リアン! 今日は初日だから、今日だけは面倒を見てあげなさい!」
「今日だけだぞ!」
「ふふっ! ありがとーございまーす!」

 学園に着き、馬車を降りて歩いていると、

「リアン様、ご機嫌よう」

 レティーが挨拶に来てくれた。
 会いたかったから嬉しい。制服姿のレティーはすごく可愛かった。

「レティー! 入学おめでとう。これから毎日学園で会えるなんて嬉しいよ」

 愛する婚約者に会えたことが嬉しくて、思わず笑顔になる。

「こちらこそリアン様、これからどうぞよろしくお願いします」

 レティーは礼儀正しくカーテシーをしたが、ミリアはあっけらかんと言った。

「ねぇー、ジュリアン様ぁ。このコは誰ですかぁ?」

 この女、いちいち邪魔だな。

「私の婚約者のレティシア・ロバーツ侯爵令嬢だ」
「レティシア・ロバーツですわ。どうぞよろしくお願いいたします」
「……婚約者? あっ、ミリア・ゾグラフです。ジュリアン様と一緒に住んでるの。よろしくね」

 この女、侯爵令嬢のレティーになんて態度なんだ! 
 しかも、わざとらしく私の腕に自分の腕を絡めてきて本当に不愉快だ。
 私の腕に触れていた、女の手を離そうとした時だった。
 令嬢として完璧で、感情を表に出さないレティーが、私の腕を見て悲しそうな顔をしていることに気付いてしまったのだ。
 ……可愛い! こんな表情を久しぶりに見た気がする。
 レティーはこの女に嫉妬しているのか? こんな女なんて、レティーが心配する価値もないのに。
 レティーはこんな女に嫉妬するほど、私が大好きなんだな。
 愚かな私は、レティーの嫉妬が嬉しくて、この女を利用することにした。
 後にその行動を後悔することになるとも知らずに。


『レティー、放課後はミア、ああ、ミリアに勉強を教える約束をしているんだ。ごめんね』
『ミア? ただの親戚で面倒を見るように言われているだけだよ。妹と変わらないから、レティーが心配する必要はないよ』
『ミアはダンスが上手くできないから、レッスンに付き合っているだけだよ』
『ミアがパーティーでエスコートしてくれる人がいないって泣いているから、今回は親戚の私がエスコートを頼まれちゃって。レティーは義兄あに上にお願いできるかな?』
『ミアがレティーに虐められるって言ってるんだけど、そんなことしていないよね? 何もわからない子だから、優しくしてあげてほしいんだ』

 レティーは私が約束を断るたびに悲しそうな表情をしていた。
 こんな女に私が惹かれる訳がないのに。レティーは本当に可愛い。
 しかしこんなことを続けるうちに、レティーの心は私から離れていってしまった。
 こんな酷いことをしていたのだから嫌われてしまうのは当然なのに、愚かな私はそのことに気付かなかったのだ。


 もうすぐ学園長主催の、学期末のパーティーが開かれる。
 最近はレティーと一緒に過ごす時間が減っていたから、今回はドレスやアクセサリーをプレゼントしよう。エスコートもして、ダンスもレティーとたくさん踊ろう。
 あの女ばかりを優先し続けるのは良くないだろうから。
 そう考えた私は、学園でレティーに話しかけたが……

「レティー、今度の学園のパーティーだけど……」
「ジュリアン様。わかっておりますわ。ゾグラフ様を優先してくださいませ」

 レティーが私に見せた表情は、誰にでも向ける貴族令嬢らしい作り笑顔だった。

「レティー、何を言ってるの? 私はレティーと一緒に参加したいのだけど」
「いえ。私はただの婚約者。幼い頃にお互いの両親が決めただけの、ただの政略結婚の相手でしかありません。学生のうちはジュリアン様が思う方と、存分に楽しい時間をお過ごしくださいませ。失礼いたしますわ」

 愛するレティーに突き放されたことに気付き、追い縋って懇願しようとするが、彼女はそのまま去って行ってしまった。
 幼い頃に両親が決めただけの婚約者? そんなことはない! 私はこんなに君を愛しているのに。
 レティーは何を言ってるんだ? しかも、私の呼び方がジュリアン様になっている。リアンって呼んでくれていたのに、どうして?
 ある日の休み時間、教室を移動するため、一年生の教室の前を友人と歩いていると、嫌な声が聞こえてくる。

「ねえ! アンタでしょ? 私のノートを破いたのは?」

 ミアの声だった。なんて品のない言動なんだ。

「何のことでしょうか? ノートを破られたのはお気の毒ですが、なぜ私を犯人だと決めつけるのでしょう? 貴女のクラスも席もわからないのに」

 ミアがレティーに絡んでいるようだ。

「おい! ジュリアンの婚約者が絡まれてるぞ」
「ああ。あの女、許さない!」

 友人とそんなやり取りをして、止めようと近づいて行くと……

「何よ! 私が下級クラスだからってバカにしているの? アンタ、私に嫉妬していたじゃない。婚約者のリアン様が私を好きだからって」
「はい? なぜ私が貴女に嫉妬する必要があるのです? 婚約者とは、幼い頃に両親が決めた家同士の契約のようなもの。私達の意思は関係ありませんし、嫉妬というような感情は持っておりませんわ。貴女は、貴族の婚約を何だと思っているのです?」

 レティーがミアに話している内容を聞き、私は奈落の底に突き落とされた。
 レティーは私に対して、嫉妬という感情すら持っていないってことなのか?
 その時、ミアが私に気付いたようだ。

「酷いわぁ。私が元平民だからって! あっ、リアン様ぁ。レティシアさんが虐めるのですぅ」
「あら、ちょうど良かったですわ。ジュリアン様、貴方の大切なゾグラフ様のノートが破られて困っているようですわ。助けてあげてくださいませ。……ご機嫌よう」
「レティー? 何を言って? 私が大切なのはきみ……」

 レティーは友達と連れ立って行ってしまった。
 レティーの友人達や、その場にいたほかの生徒達の視線が冷たい。
 この時になって私は全てを理解した。レティーの心は私から離れてしまったのだと。
 そして、あの女は被害者ぶりながら、レティーに嫌がらせをしていることも。
 あの女の態度に腹を立てた私は、放課後に呼び出して話をすることにした。
 レティーの話もするので、家族にその会話を聞かれたくなかった私は、あの女に話をする場を家ではなく、学園で人気ひとけのない校舎の裏庭にすることにしたのだが……。それが全ての間違いだった。

「リアン様ぁ! お待たせしましたー」

 放課後、あの女はニコニコしてやって来た。気持ちの悪い女だ。

「名前で呼ぶな、家名で呼べ! 私をリアンと呼んでいいのはレティーだけだ」
「あの女は私を裏で虐めるのですよぉ。それに、両親が決めただけの婚約者だって言ってましたよねぇ。私ならリアン様を深い愛で包んであげられるのに。リアン様、大好きです!」

 すると、ミアは急に私の首に抱きつき、口づけをして来た。
 ドン! 私は、無意識にミアを突き飛ばしていた。

「きゃあー! 酷い」
「何をする?」
「だってー、好きだからキスしたいって思うでしょ」

 こっちは気持ちが悪くて吐きそうなのに、この女は悪びれる様子もない。

「うっ……。気持ちが悪くて吐きそうだ……」
「えっ? 私のこと好きじゃないの? キスされて嬉しいでしょ?」
「私がお前みたいな、バカで下品で、大切なレティーを陥れようとする女を好きになると思うか?今すぐ死んでほしいくらい大嫌いだ」
「ウソよ! 私を大切にしてくれたし、あの女よりも私を優先してくれていたじゃない! 私を侯爵家のお嫁さんにしてよ。私にはリアン様しかいないの」

 お嫁さん? 絶対にありえない! 
 しかし、この女を勘違いさせたのは、私の手落ちだ。

「親戚として頼まれたから面倒を見ただけだし、大嫌いだから、今すぐにでも家から出て行ってくれ! お前は、私のレティーを傷つける害虫でしかない」
「酷い! 私はこんなに好きなのに。……でも、残念でしたぁ。さっきキスしているところを、リアン様の大切な人に見られちゃいましたねぇ」

 レティーが見ていた?

「いい加減にしろ!」
「本当ですよー。実は……、放課後にリアン様に呼び出されて告白されそうだから、見に来てくださいって、あの女に知らせておいたの。そしたら、あの陰から見てましたねぇ。キスしたら、すぐにいなくなっちゃいましたけど……。だから諦めて私にしません?」

 私から呼び出されているからと、レティーに見に来るように伝えていた?
 その時に気付いた。私がこの女を利用しようとして、反対にこの女から利用されていたことに。
 私はなんて愚かなんだ……
 今すぐにレティーに謝りに行かなければ! 
 ギャーギャー言っているミアを無視して、急いでレティーの家に行ったのだが……


「お、お嬢様が……、お嬢様が落ちて……。いやぁぁー。お嬢様ぁー!」

 メイドが取り乱して叫んでいる声が聞こえる。慌てて駆けつけ、部屋をのぞくと部屋にいると思っていたレティーの姿が見えない。
 レティーはバルコニーの下で、血を流して倒れていた。
 私のせいなのか? 私がレティーを裏切るようなことをしたから、死のうとした?
 レティー、早く目覚めて私を叱ってほしい。
 殴られようと、罵倒されようと、無視されようと、この先ずっと愛されなかったとしても、私の一生をかけて償うから、私から離れないでくれ。
 私はレティーを愛しているんだ。




   第二章 記憶喪失になったら、ブラコンになりました。


 元社畜だった私は、日に日にブラコンになりつつあった。
 しょうがないよね。お兄様はカッコよくて優しいんだもん。
 どうして兄なんだろうなぁ。せめて従兄妹とか、幼馴染が良かったよね。
 このままこの家の娘でいたら、いずれはお兄様のお嫁さんが来るわけでしょ? 私はお嫁さんに優しくできるかな? 大好きなお兄様が取られちゃったって、嫁いびりしちゃったりするのかな?
 ああ、中身はいい歳の元社畜なのにー! 悩み事が小さいぞー。
 一人でもんもんと悩んでいると、ドアがノックされる。

「シア! ただいま。具合はどうだ?」

 キター! 
 お兄様が帰ってきたことが嬉しくて、表情がだらしなく緩みそうになる……のを何とか我慢する。

「お兄様、お帰りなさいませ。私は今日も元気です」
「本当か? 頭とか痛くないか?」

 きゃー! お兄様、私のおでこを触らないで! 
 お兄様の美しすぎる顔が近すぎて辛いの! 

「だ、大丈夫です」
「シア、顔が赤いぞ。熱か?」

 違うの! イケメンに触られて、恥ずかしいだけ……とは言えない。

「もうお兄様! 私を子供扱いしないでください。元気ですわ」
「ふっ! そうか、元気なら良かった。そうだ、今日は天気がいいから、テラスでお茶にしないか? また美味しいスイーツを買って来たんだ」

 私に、お兄様からの誘いを断るという選択肢はない! 

「はい、ぜひ! お兄様がお誘いしてくださるのを、私はいつも楽しみにしていますの」
「……シア、それは本当にそう思ってくれているのか?」
「本当にそう思っていますわ。お兄様がいてくれて、私は幸せですから」
「……」

 あれっ? お兄様が黙っちゃった。私の本音なんだけど、言わない方が良かったかな?
 最近は、少しだけイケメン兄に慣れてきたから、私のお兄様への愛情を惜しみなく伝えることにしているのだけど。

「……シア、ほかの男に可愛く微笑んで、そんなことを言ってはダメだぞ。勘違いして、監禁されてしまうかもしれないから注意しろ」

 言い方を間違えると監禁されるってこと?
 ええー! 何も知らずにいたけど、実は怖い世界なんだね。

「……はい。気を付けます。お兄様、ごめんなさい」
「わかればいいんだ。でも、もしシアに何かあれば、私が守ってやるからな。安心しろ」

 あー、もうダメ。もうブラコンでいいや。

「お兄様、私は幸せ者です……」

 お兄様にエスコートされて、私はテラスに移動する。すっかり体調が良くなり、怪我も治ったので、自然に歩けるようになったのだ。
 そろそろ普通の生活に戻っても平気そう。
 お兄様は、今日も美味しそうなケーキをたくさん買って来てくれていた。
 店に行けない私が、いろいろな種類のケーキの中から好きな物を選べるようにしてくれているみたい。余った分はメイド達に差し入れとして渡しているんだって。エレンやほかのメイド達が、お兄様に感謝していたんだよね。
 ハアー。我が兄ながら、なんていい男なの! 

「お兄様、とっても美味しいですわ。ありがとうございます」
「ああ。シアが喜んでくれて、私も嬉しい」

 お礼を伝えると、お兄様は太陽以上に眩しい笑顔を見せてくれる。これは私にとって、最高の目の保養だと思っている。

「こうやってお兄様が私をたくさん喜ばせてくれるので、私はすっかり元気になりましたわ。お兄様がいてくださって良かったです」
「シア……、それは本当か? 私がいて良かったと思ってくれるのか?」
「もちろんですわ! お兄様がいなければ、私は一人で塞ぎ込んでいたかもしれません。お兄様には本当に感謝しているのです」

 すると、私の手の甲にお兄様の大きな手が重ねられる。
 コレは何なの? また私の心臓がドクドクしてきた。

「私もシアがいないとダメなんだ……。シアが幸せなら私も幸せだし、シアが悲しんでいると私も悲しくなる。元気なシアがいてくれたら、それだけで私は幸せだ」


 このお兄様なら私なんていなくても、最強の見た目と優秀な頭脳で、幸せな人生を生きていくことができそうだけど……
 それよりも、顔が火照って熱くなってきた。
 お兄様といると、まるで誘惑でもされているかのような気分になるよね。
 実の兄が魅力的すぎて辛い……

「ところでお兄様、私は食欲もありますし、しっかりと歩けるようになりました。すっかり元気になれたと感じています。そろそろ学園にも復帰した方が良いかと思うのですが」

 あれ? お兄様の表情が険しくなってきたぞ。

「シアは学園に戻りたいのか? 私は無理に行かなくてもいいと思っている。シアには辛い思いをさせたくないんだ。元々、シアは成績優秀だったし、学園に行かなくてもテストで合格すれば卒業が認められるんだ。このまま家で家庭教師を付けて勉強して、学園にはテストを受けにだけ行ってもいいんだぞ」

 お兄様は、学園で私に何か辛いことでもあったかのような言い方をしている。

「お兄様。記憶を失う前の私は、学園生活をあまり楽しんでいなかったということですか?」
「もっと落ち着いたら話そうと思っていたのだが……。知りたいか? でも、ショックを受けるかもしれない」

 うーん……、怖いけど気になる。でも、これを知らないと前に進めない気がするんだよ。
 いつまでも、引きこもりでいられないし。

「何があったのかを話してほしいですわ。お願いします」
「わかった……。でも、辛いようなら途中でやめるからな。私はシアが悲しむのだけは嫌なんだ」

 なんて……、なんて素敵なお兄様なの。ここまで妹に優しいお兄様が側にいてくれるなんて! 

「優しいお兄様が守ってくれるのですよね? 私は平気ですわ!」
「……っ! わかった。シアが辛くても、私が側にいて守るからな」

 イケメンが守ってくれると言っている……
 なんて幸せなの! 
 私は心が満たされて思わずニヤニヤしそうになっていたけど、反対にお兄様は深刻な表情になっていた。

「シアは成績優秀だったし、友人もたくさんいて、それなりに楽しい学園生活を送れていたと思っていたのだ……。問題があったのは、同じ学園の一つ上の学年に在籍している、シアの婚約者のことだ」

 ……えっ?


しおりを挟む
表紙へ

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつまりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

余命1年の侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
余命を宣告されたその日に、主人に離婚を言い渡されました

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。