記憶喪失になったら、義兄に溺愛されました。

せいめ

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閑話

閑話 ラッセン伯爵令嬢

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 あの義妹、許せない!

「レティシアの友人達が、見聞きしたことを全て記録しておいてくれた。レティシアを殴ろうとした時は、ハリス侯爵子息が止めてくれたようだな。レティシアの友人達は、この伯爵家より上の家門の令嬢達だ。もし裁判になるなら、きちんと証言したいと言ってくれた。」

 義妹の友人達もグルなのね!!
 
「また、クリストファーと婚約すると事実無根を言いふらし、付き纏う姿も沢山の者が見ている。王太子殿下や、宰相子息も見ていたようで、何かあれば証言してくれると約束してくれた。」

 王太子殿下と宰相子息ですって?
 そういえば、クリストファー様に話をしに行った時に、近くにいたわ…。

「侯爵閣下、裁判とは?」

 お父様の声が震えて…。

「レティシアとクリストファーに付き纏いをしたストーカーとして、令嬢を告訴しようと考えている。更にレティシアへの侮辱罪と暴行未遂も。
 商売で成り上がった伯爵家は信用問題に関わることかもしれないが、うちの侯爵家にこのような危害を加える者を、私は許すことは出来ない。」

 どうして私がストーカー扱いされないといけないのよ?

「私はストーカーなんてしていま……」

「アイリーン、黙れ!」

 お父様のこんな顔は初めてだと思う。

「侯爵閣下、どうか裁判だけはお許し下さい。示談金を言い値で払います。どうか…。」

「うちは金は沢山あるが、バカにしているのか?
 縁談の話を寄越した時も、持参金の額をやたら強調して書いてあったが、金で全て解決出来ると思うな。」

 何よ!お金が全てでしょ。

「しかし、もし裁判となればうちは商売をしていますから、商売に大きな影響が出てしまいます。私の愚娘が全て悪いのは理解しております。どうか、お許し下さい。」

「伯爵。始めにも聞いたが、お前の娘は精神を病んでいるのではないか?あり得ないことをレティシアや、周りの人間に話していたようだし、自分より身分の高い者に暴力を振るおうとしたり、明らかに普通ではないと思われているぞ。」

「それは、どういうことでしょうか?うちの娘は可笑しいと?」

「レティシアの友人やクラスメイト達は、お前の娘の行動を普通じゃないと言っていたらしい。
 精神を病んでいる者には、たとえ裁判をしても罪は問えないだろう。償いをさせるよりも、治療の方が必要な場合もあるということだ。
 …この意味が分かるか?」

「それは…………。
 分かりました。親として、娘に必要な措置をとるように致します。
 侯爵閣下、大変申し訳ありませんでした。後日、改めて謝罪に伺います。」

 お父様は何かを諦めたような表情をしていた。






 私は、気付くと田舎の精神病院に入れられていた。
 
 鉄格子付きの窓に、鍵付きのドア。トイレにはドアが付いてない。余計な物は一切置かれていない、殺風景な病室だ。
 せめて、部屋に綺麗な花を飾りたいと訴えてみたが、花瓶が凶器になるからダメだと言われてしまった。
 他の部屋からは叫び声や、暴れるような物音が聞こえてくる。


 お父様はここに連れて来る時に、伯爵家のためだから我慢するようにとだけ言って帰って行った。

 いつまで待っても迎えに来てくれない…。
 早くクリストファー様と婚約したいのに。

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