記憶喪失になったら、義兄に溺愛されました。

閑話

閑話 ラッセン伯爵令嬢

　後で知ったことだが、クリストファー様のお母様は、有名なマナー講師らしい。

　あの義妹の言うことは本当のことだったようだ。ならば未来の義妹に、クリストファー様や、彼のお母様に気に入られる為に、私はどうするべきか聞いてみようかしら。

　放課後、義妹が来るのを待ち、声を掛けるが。

「今はダメです。早く帰りたいので。」

　この私が話しかけているのに、バカにして！クリストファー様に愛されているからって、ただの義妹のくせに。私は貴女の未来の義姉になるのに、なんて態度なの？
　
　しかも、私が絡むのが迷惑だとまで言われてしまった。

「何なのよー！貴女、ちょっと可愛いからって…」

　カッとなった私は、無意識に手を振り上げてしまったようだ。

　ガシッ！
　誰かが、私の振り上げた手を掴んだようだ。

「おい！ラッセン伯爵令嬢。君より身分が上の令嬢に危害を加える気か？」

　ハッとする私。そんな私を止めたのは、同じ学年のハリス侯爵令息。確かこの義妹の……

「このことを、学園長に報告されたくないなら、早く立ち去れ！」

　やってしまったわ！慌てて立ち去る私。
　危害は加えてないし、…未遂だから大丈夫よね。


　その日から、3日くらい経った日だった。

「アイリーン！ロバーツ侯爵家が、今からうちに来ると先触れがあった。少し前に縁談の打診をしたから、その話だろう。」

　お父様が嬉しそうだった。お父様、かなりの持参金の額を提示したって言っていたわね。あの名門侯爵家と繋がりが出来るのは、お父様も嬉しいみたい。
　ふふっ。これも私の家が金持ちで、私が美しいからよ。

「お父様、急いで着替えて来ますわ！」

　あのクリストファー様が来るなら、綺麗に着飾って待たないと。

「ほらお前達、準備が本当に遅いわよ！未来の侯爵夫人になる私を早く綺麗にしなさい！」

　メイド達を怒鳴りつけて、早く準備させる。
　何とか間に合ったようだ。慌てて玄関に行き、クリストファー様達が来るのを待つ。

　ああ！クリストファー様と侯爵様達がいらしたわ。今日も素敵だわ。あの方と婚約出来る私は幸せね。

　ギロっ！

　…え？クリストファー様が私を睨みつけた？
　き、気のせいよね。

　お父様ったら、あんなにニコニコして。

「ロバーツ侯爵閣下、本日はお忙しい中、我が邸に来て下さったことに感謝致します。」

「私が忙しいと知りながら、なぜ伯爵の方から謝罪に来ないのだ？」

　侯爵様の目は笑ってなかった。

「…閣下、謝罪とは？」

「伯爵の令嬢が、侯爵令嬢である私の娘に付きまとい、嫌がらせをしたり、危害を加えようとしたようだが。自分の娘が学園で何をしているのか、伯爵は知らないのか？」

　今までのこと？
　あの義妹がまた話を大きくして、侯爵様やクリストファー様に言付けたのね！

　許さない！