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記憶が戻った後の話
46 嬉しいプレゼント
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自分は今後どうするべきかを悩んでいたある日、公爵からお茶に誘われる。
最近の公爵は私に対しての遠慮がなくなり、二人で過ごす時間を最優先にしているのだ。
「アリーにプレゼントを用意したんだ。開けてみて欲しい」
「プレゼントですか……」
テーブルの上にはリボンの掛けられた大きな箱がある。
この大きさはドレスかしら? 何もいらないって言っているのに。
リボンをほどく時に気付いたが、箱は随分とずっしりしている。
何だろうと思いながら箱を開けると……
「これは……、ロミオの姿絵集? 何種類もあるわ! こっちは観劇のパンフレットが沢山ある……
嘘っ! これってロミオのサイン? 私の名前が入っているわ……」
箱の中には、ロミオの姿絵集や観劇のパンフレットが沢山入っていた。若い頃から現在の姿絵まで色々な種類の姿絵集が入っている。私の知らない観劇のパンフレットが沢山入っているのは、アリスが死んでから今に至るまでのロミオが出演した観劇のパンフレットらしい。
そして、一番嬉しかったのは……
〝アリシア様
いつも応援してくださってありがとうございます。
ロミオ・モットレイ〟
ロミオのサインにはメッセージまで入っている。
これが欲しくて、あの時は必死に走ったのよね……
それだけではない。プレゼントの中には限定品もあって、当時の私が手に入れることが出来なかった貴重な姿絵も入っていた。
このプレゼントは、ロミオファンなら誰でも喉から手が出るほど欲しい物だ。
「……あ、ありがとうございます。今まで生きた中で一番嬉しいプレゼントです」
「一番嬉しい……か。アリーが喜ぶ姿を見れて私まで幸せだ」
「公爵様、このサインはどうやって手に入れたのでしょうか?」
「劇団に寄付をしたら書いてくれたんだ。ただ、それだけだ」
公爵は笑顔で寄付をしただけだと言っているけど、この感じだと相当な額を寄付したのね……。金額を知るのは恐ろしいから聞くのはやめておこう。
「アリー、また私と一緒に観劇に行ってくれるかい?」
「……はい」
ここまでのことをしてもらい、嫌だなんて言えなかった。
公爵が私の推し活を認めてくれている気がして嬉しかったから。
ロミオに会えてサインも手に入れ、お姉様(王妃殿下)にも会え、悪女オーロラのことも知った今、私が気になるのは前世の家族のことだった。お姉様に色々聞きたいけど、王妃という偉くて忙しい立場の人をこちらからお茶には誘いにくく、食事会をしたあの日からずっと会えていない。
二人きりで話がしたいのに、公爵は私と王妃殿下が会うのを嫌がっているように見えるし……
「……王宮の図書館に行きたい? 必要な本ならすぐに取り寄せるが」
「図書館という場所が好きなのです。少しでいいので外出させて下さいませんか?」
「君が一人で出掛けて、また具合が悪くなったりしたら嫌なんだ。
だが……、君をあまり締めつけすぎるのは良くないことは分かっている」
「図書館にいるのは一時間だけにします。すぐに帰って来ますから、お許しくださいませ」
「分かった。そのかわり、送り迎えは私がする」
公爵は忙しいはずなのに送り迎えをすると言い出す。過保護なのか私を監視したいのか、本当に分からない。
「図書館で一人で静かに過ごすのがいい気分転換になるんだろう?
私は送り迎えだけをして、図書館の中まではついて行かないから大丈夫だ」
「承知しました。ありがとうございます」
私が図書館に行きたかったのは、アリスの実家のキャンベル侯爵家のことを詳しく調べたかったからだ。
以前、貴族名鑑を読んだ時に知ったことは、両親はまだ健在だが、侯爵位は未婚の弟が引き継いでいるということ。王宮の図書館には貴族の領地について詳しく書かれた本があるはずだし、弟が行政機関や騎士団などの役職に就いていれば、名簿に名前があるはず。
公爵に聞いた方がいいのか迷ったが、前世で公爵の婚約者だった私(アリス)は、家族に公爵との婚約解消を望んでいることをよく話していた。私が死んだ後、アンダーソン公爵家とキャンベル侯爵家の関係は微妙になったと考えられ、公爵に家族の話は非常に聞きにくい。
しかも、当時七歳だった弟は姉が大好きなシスコンで、私と公爵の関係が冷え切っているのを知ると〝あんな男は姉上に相応しくない。大好きな姉上を悲しませるアイツなんか大嫌いだ!〟と、姉から見たらカワイイことを言ってくれていた。あの弟ならアンダーソン公爵との関わりを拒否していてもおかしくはない。
アリシアとして公爵と社交をしている時に、キャンベル侯爵家の関係者と挨拶をする機会が全くなかったことを考えると、今は言葉すら交わさない関係だと思われる。
図書館では色々調べてこよう!
最近の公爵は私に対しての遠慮がなくなり、二人で過ごす時間を最優先にしているのだ。
「アリーにプレゼントを用意したんだ。開けてみて欲しい」
「プレゼントですか……」
テーブルの上にはリボンの掛けられた大きな箱がある。
この大きさはドレスかしら? 何もいらないって言っているのに。
リボンをほどく時に気付いたが、箱は随分とずっしりしている。
何だろうと思いながら箱を開けると……
「これは……、ロミオの姿絵集? 何種類もあるわ! こっちは観劇のパンフレットが沢山ある……
嘘っ! これってロミオのサイン? 私の名前が入っているわ……」
箱の中には、ロミオの姿絵集や観劇のパンフレットが沢山入っていた。若い頃から現在の姿絵まで色々な種類の姿絵集が入っている。私の知らない観劇のパンフレットが沢山入っているのは、アリスが死んでから今に至るまでのロミオが出演した観劇のパンフレットらしい。
そして、一番嬉しかったのは……
〝アリシア様
いつも応援してくださってありがとうございます。
ロミオ・モットレイ〟
ロミオのサインにはメッセージまで入っている。
これが欲しくて、あの時は必死に走ったのよね……
それだけではない。プレゼントの中には限定品もあって、当時の私が手に入れることが出来なかった貴重な姿絵も入っていた。
このプレゼントは、ロミオファンなら誰でも喉から手が出るほど欲しい物だ。
「……あ、ありがとうございます。今まで生きた中で一番嬉しいプレゼントです」
「一番嬉しい……か。アリーが喜ぶ姿を見れて私まで幸せだ」
「公爵様、このサインはどうやって手に入れたのでしょうか?」
「劇団に寄付をしたら書いてくれたんだ。ただ、それだけだ」
公爵は笑顔で寄付をしただけだと言っているけど、この感じだと相当な額を寄付したのね……。金額を知るのは恐ろしいから聞くのはやめておこう。
「アリー、また私と一緒に観劇に行ってくれるかい?」
「……はい」
ここまでのことをしてもらい、嫌だなんて言えなかった。
公爵が私の推し活を認めてくれている気がして嬉しかったから。
ロミオに会えてサインも手に入れ、お姉様(王妃殿下)にも会え、悪女オーロラのことも知った今、私が気になるのは前世の家族のことだった。お姉様に色々聞きたいけど、王妃という偉くて忙しい立場の人をこちらからお茶には誘いにくく、食事会をしたあの日からずっと会えていない。
二人きりで話がしたいのに、公爵は私と王妃殿下が会うのを嫌がっているように見えるし……
「……王宮の図書館に行きたい? 必要な本ならすぐに取り寄せるが」
「図書館という場所が好きなのです。少しでいいので外出させて下さいませんか?」
「君が一人で出掛けて、また具合が悪くなったりしたら嫌なんだ。
だが……、君をあまり締めつけすぎるのは良くないことは分かっている」
「図書館にいるのは一時間だけにします。すぐに帰って来ますから、お許しくださいませ」
「分かった。そのかわり、送り迎えは私がする」
公爵は忙しいはずなのに送り迎えをすると言い出す。過保護なのか私を監視したいのか、本当に分からない。
「図書館で一人で静かに過ごすのがいい気分転換になるんだろう?
私は送り迎えだけをして、図書館の中まではついて行かないから大丈夫だ」
「承知しました。ありがとうございます」
私が図書館に行きたかったのは、アリスの実家のキャンベル侯爵家のことを詳しく調べたかったからだ。
以前、貴族名鑑を読んだ時に知ったことは、両親はまだ健在だが、侯爵位は未婚の弟が引き継いでいるということ。王宮の図書館には貴族の領地について詳しく書かれた本があるはずだし、弟が行政機関や騎士団などの役職に就いていれば、名簿に名前があるはず。
公爵に聞いた方がいいのか迷ったが、前世で公爵の婚約者だった私(アリス)は、家族に公爵との婚約解消を望んでいることをよく話していた。私が死んだ後、アンダーソン公爵家とキャンベル侯爵家の関係は微妙になったと考えられ、公爵に家族の話は非常に聞きにくい。
しかも、当時七歳だった弟は姉が大好きなシスコンで、私と公爵の関係が冷え切っているのを知ると〝あんな男は姉上に相応しくない。大好きな姉上を悲しませるアイツなんか大嫌いだ!〟と、姉から見たらカワイイことを言ってくれていた。あの弟ならアンダーソン公爵との関わりを拒否していてもおかしくはない。
アリシアとして公爵と社交をしている時に、キャンベル侯爵家の関係者と挨拶をする機会が全くなかったことを考えると、今は言葉すら交わさない関係だと思われる。
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