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記憶が戻った後の話
44 歩み寄り?
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「もう隠さなくていいんだ。
アリーはアリスなんだろう?」
公爵は力なく微笑みながら爆弾発言をしてきた。
「……」
公爵にしっかりバレているじゃないの!
ああっ、どうしましょう? 不仲な婚約者だったアリスだってバレたら、穏便な離縁計画がすべて台無しになってしまうわ。
今さら隠そうとしても無駄だろうし、帰る所のない私は公爵を敵には回したくない。
くっ! 不本意だけど、とりあえず謝っておく?
前世の時は最後に生意気なことを言ってごめんなさい。今世では貴方のために黙って身を引くので、オーロラ2号でも探して幸せになって下さいって言おうかしら? あ、オーロラの名前を出したら怒られちゃう?
「……アリー? その困った顔もアリスと一緒だな。
怒らないから、そろそろ正直に話してくれないか?」
ううっ……、本当は前世の恨みをガミガミと言ってやりたいくらいだけど、離縁後の穏やかな生活のためには、王家の次に権力を持つ公爵を敵には回せない。
仕方がない……。ここはプライドを捨てて謝っておこう。
「アンダーソン様、ずっと黙っていて申し訳ありませんでした。
私の前世はアリス・キャンベル。貴方の婚約者でしたわね。お気づきのようですが、姉に殺されかけたことがきっかけでアリスの記憶が戻ったみたいですわ。
前世の私が死ぬ直前に、貴方に酷い態度をとってしまったことがずっと心残りでした。カッとなって生意気なことを言って申し訳ありません。反省しておりますわ。一度死んでしまったので、謝罪をするのが遅くなりましたが、どうかお許しくださいませ」
公爵に頭を深く下げて謝罪をする。これは私にとってかなり丁寧な謝罪だ。
くっ……、何で私が謝らなくてはならないのよ。
悪いのは不貞した自分のことを棚に上げて、私に文句ばっかり言ってきた公爵の方なのに! 悔しいけど、離縁後の穏やかな生活のために我慢……
私は悔しさで震えそうになるのを何とか我慢していた。
「やはりアリスなんだな……?
ずっと会いたかった……。君が私を嫌っていたことを知っても、君を忘れられなかった……
謝らなくてはいけないのは私の方だ。それなのに君から謝ってくれるなんて、こんな私にアリスは歩み寄ってくれるのか……
頭を上げてくれ。私は怒っていない」
おかしいわ……。前世の時のように睨まれながらネチネチと何かを言われることを予想していたけど、なんか嬉しそうにしてない?
恐る恐る顔を上げると、公爵からグイッと抱きしめられる。
「ギャーー! アンダーソン様、何をなさるのです?」
「やはり、その口調はアリスなんだな……
アリシアを初めて見た時から引っかかっていた。アリシアもアリスも、君自身を愛している」
私を強く抱きしめながら耳元で愛を囁く公爵。意味不明な行動に鳥肌が立っていた。
「ち、ちょっと! 私達はこんな抱きしめ合うような関係ではありませんでしたわ。離してくださいませ!」
しかし、公爵は私をガッチリと強く抱きしめたままだ。
「今離したら、君に逃げられて大切な事が伝えられなくなりそうだから我慢してくれ。
アリス、前世の君に酷いことをして悪かった。あの時の私は未熟で、君が大好きだという気持ちを上手く伝えられなかったんだ。そんな時に、当時の王太子殿下からマーズレイ男爵家の調査を命令され、仕方なくオーロラ・マーズレイに近づいた。あの女は匂いを嗅ぐと魅了効果のあるという特殊な香水を使って私を操った」
……はい? オーロラが悪女なのは分かっていたけど、あの女はそこまでしていたの?
それよりも、公爵が私を好きだった? あり得ないわ! 何を考えて好きな女の子にあんな態度をとっていたのよ?
公爵の話は疑問だらけで、頭の中が混乱しそうになる。
「しかし操られたといっても、君に酷いことをしたのは私自身だ。それにも関わらず、アリスは歩み寄ってくれるんだな。私は何て幸せなんだ……
これから私の一生をかけて君に償いをしていくと約束する
もう、絶対に離さない……愛しているよ」
「えっ、ちょっと……」
熱い言葉を囁きながら、公爵はさらに私をぎゅっと抱きしめてきた。
離縁後の穏やかな生活のために、不本意ながらプライドを捨てて謝っただけなのに、その行動が私から公爵に歩み寄ったように感じたのね……
どうしよう? 憎い元婚約者だと罵られて公爵家を追い出されるよりはマシだけど、これはこれで厄介そうだわ。
アリーはアリスなんだろう?」
公爵は力なく微笑みながら爆弾発言をしてきた。
「……」
公爵にしっかりバレているじゃないの!
ああっ、どうしましょう? 不仲な婚約者だったアリスだってバレたら、穏便な離縁計画がすべて台無しになってしまうわ。
今さら隠そうとしても無駄だろうし、帰る所のない私は公爵を敵には回したくない。
くっ! 不本意だけど、とりあえず謝っておく?
前世の時は最後に生意気なことを言ってごめんなさい。今世では貴方のために黙って身を引くので、オーロラ2号でも探して幸せになって下さいって言おうかしら? あ、オーロラの名前を出したら怒られちゃう?
「……アリー? その困った顔もアリスと一緒だな。
怒らないから、そろそろ正直に話してくれないか?」
ううっ……、本当は前世の恨みをガミガミと言ってやりたいくらいだけど、離縁後の穏やかな生活のためには、王家の次に権力を持つ公爵を敵には回せない。
仕方がない……。ここはプライドを捨てて謝っておこう。
「アンダーソン様、ずっと黙っていて申し訳ありませんでした。
私の前世はアリス・キャンベル。貴方の婚約者でしたわね。お気づきのようですが、姉に殺されかけたことがきっかけでアリスの記憶が戻ったみたいですわ。
前世の私が死ぬ直前に、貴方に酷い態度をとってしまったことがずっと心残りでした。カッとなって生意気なことを言って申し訳ありません。反省しておりますわ。一度死んでしまったので、謝罪をするのが遅くなりましたが、どうかお許しくださいませ」
公爵に頭を深く下げて謝罪をする。これは私にとってかなり丁寧な謝罪だ。
くっ……、何で私が謝らなくてはならないのよ。
悪いのは不貞した自分のことを棚に上げて、私に文句ばっかり言ってきた公爵の方なのに! 悔しいけど、離縁後の穏やかな生活のために我慢……
私は悔しさで震えそうになるのを何とか我慢していた。
「やはりアリスなんだな……?
ずっと会いたかった……。君が私を嫌っていたことを知っても、君を忘れられなかった……
謝らなくてはいけないのは私の方だ。それなのに君から謝ってくれるなんて、こんな私にアリスは歩み寄ってくれるのか……
頭を上げてくれ。私は怒っていない」
おかしいわ……。前世の時のように睨まれながらネチネチと何かを言われることを予想していたけど、なんか嬉しそうにしてない?
恐る恐る顔を上げると、公爵からグイッと抱きしめられる。
「ギャーー! アンダーソン様、何をなさるのです?」
「やはり、その口調はアリスなんだな……
アリシアを初めて見た時から引っかかっていた。アリシアもアリスも、君自身を愛している」
私を強く抱きしめながら耳元で愛を囁く公爵。意味不明な行動に鳥肌が立っていた。
「ち、ちょっと! 私達はこんな抱きしめ合うような関係ではありませんでしたわ。離してくださいませ!」
しかし、公爵は私をガッチリと強く抱きしめたままだ。
「今離したら、君に逃げられて大切な事が伝えられなくなりそうだから我慢してくれ。
アリス、前世の君に酷いことをして悪かった。あの時の私は未熟で、君が大好きだという気持ちを上手く伝えられなかったんだ。そんな時に、当時の王太子殿下からマーズレイ男爵家の調査を命令され、仕方なくオーロラ・マーズレイに近づいた。あの女は匂いを嗅ぐと魅了効果のあるという特殊な香水を使って私を操った」
……はい? オーロラが悪女なのは分かっていたけど、あの女はそこまでしていたの?
それよりも、公爵が私を好きだった? あり得ないわ! 何を考えて好きな女の子にあんな態度をとっていたのよ?
公爵の話は疑問だらけで、頭の中が混乱しそうになる。
「しかし操られたといっても、君に酷いことをしたのは私自身だ。それにも関わらず、アリスは歩み寄ってくれるんだな。私は何て幸せなんだ……
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もう、絶対に離さない……愛しているよ」
「えっ、ちょっと……」
熱い言葉を囁きながら、公爵はさらに私をぎゅっと抱きしめてきた。
離縁後の穏やかな生活のために、不本意ながらプライドを捨てて謝っただけなのに、その行動が私から公爵に歩み寄ったように感じたのね……
どうしよう? 憎い元婚約者だと罵られて公爵家を追い出されるよりはマシだけど、これはこれで厄介そうだわ。
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