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記憶が戻った後の話
38 バレていた
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図書館で過去の貴族名鑑を調べるが、公爵の愛したオーロラの名前はいくら探しても見つからなかった。それどころか、オーロラの実家のマーズレイ男爵家の名前もない。その後も古い貴族名鑑を調べた結果、前世の私が生きていた頃まで遡ってやっと見つけることができた。でも、私が死んだ後の年の貴族名鑑からは彼女の名前も男爵家の名前もなくなっている。
どういうこと……?
男爵家の名前が消えているということは私が死んだすぐ後に没落したと考えるのが自然。貧乏男爵家だったし、あの態度の悪かったオーロラのことだから、敵対する令嬢達から報復された可能性もある。
気になった私は、前世の私が死んだ年の新聞を調べることにした。
しかし、新聞を調べるのは量が多すぎて地味に大変だった。しかも、憎いオーロラよりも気になる記事を見つけてしまう。
『ロミオ・モットレイ 助演男優賞を受賞』
ロミオが助演男優賞ですって……? もう17年くらい前の記事だけど授賞式に行きたかったよぉ。
はっ! いけない。今はオーロラを調べるのが先よ。ロミオも気になるけど、お楽しみは後にとっておくの。
その後も夢中になって昔の新聞を調べていると、衝撃的な記事を見つけてしまう。
『違法薬物を流通させた罪でマーズレイ男爵家の取り潰しが決まる』
『マーズレイ男爵は国外追放』
『アリス・キャンベル侯爵令嬢の殺人教唆の疑いでオーロラ・マーズレイを逮捕』
『オーロラ・マーズレイ元男爵令嬢の公開処刑が決まる』
前世の私の名前が新聞に載っている……
私が死んだのはあの女のせいだったの?
あの女は処刑された?
その事実を知った瞬間、目の前が急に暗くなる。
「……うっ、気分が悪い。ハァ、ハァ……だ、誰か助け……」
ガタン!
気分の悪くなった私はそのまま意識を失って倒れてしまった。
◇◇
目覚めると、そこは私の知らない部屋だった。
「アリシア、目覚めたのね……」
私に話しかける穏やかな声は王妃殿下だった。
「あなたは王宮の図書館で倒れたの。とりあえず王宮内の客室に運んでもらったわ。公爵は図書館の司書や王宮医から話を聞いているから、もう少ししたら来ると思う」
「王妃殿下……、ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」
まだ頭がスッキリしていない私は、弱々しい声で王妃殿下に謝罪をしていた。
「気にしないで。ところで、こんな時はやっぱり薬草茶がいいわ。アリスはいつも色が気持ち悪くて飲めないって言うけど、慣れれば美味しいし、よく効くのよ。騙されたと思って飲んでみなさい」
「お姉様、私は薬草茶は大嫌いだって何度も言って……あっ!」
王妃殿下が私をアリスと呼んでいる。
前世で私の従姉妹だった王妃殿下は、体調を崩した時に必ず薬草茶を勧めてきた。私はそれが不味くて大嫌いだったのだが、前世の時と同じように薬草茶を勧めてくるから、無意識にあの頃と同じ返しをしてしまった。
王妃殿下はやはり気づいていたらしい。
「やっぱり、アリスなのね……
どうしてすぐに打ち明けてくれなかったの?」
「だって……、そんなことを言っても信じてもらえないと思って……」
「貴女が生まれた時からずっと見てきた私が分からないと思った?」
「ごめんなさい。……っ!」
その後、王妃殿下の胸で泣き続け、気付くと目は腫れて酷いことになっていた。
「アリシア、その顔を見たらあの公爵がまた大騒ぎしそうだわ」
「王妃殿下、私がアリスと気付きながら、よくあの男との結婚を認めましたわね……」
「だって、あの時のアリシアは結婚を望んでいたでしょ?」
「あの時はアリスの記憶が戻っていなかったのです。世間知らずだった私は、親切にしてくれた公爵に騙されましたわ……」
「彼は変わったのよ。確かに昔の彼は嫌われても仕方がないような男だった。でも今は違う。今の公爵を見てあげて」
あの男が変わったのは分かる。でも、あの辛かった日々を忘れられないから、素直に認められないのだ。
あの男は元々、私に冷たくてそっけなくて……気付くと私達はギクシャクしていた。当時の私は何か悪いことをしたのかと悩んだ。友人達が婚約者と仲良くしているのが羨ましかった。親が決めた政略結婚だから何とかしたかったけど無理で、気づいたらあの女はオーロラと親しくなり、オーロラを虐めるなとか、オーロラが真実の愛だとか、酷いことばかり言われ続けてボロボロだった。
そんな私の光だったのが、当時まだ若手の俳優のロミオだった。ロミオは私の理想の王子様のようで、彼は私の心の恋人になっていたのだ。
「公爵は、アリシアが図書館であの女の公開処刑の記事を読んでいて倒れたことを司書から聞いているはずよ。
それに今の貴女はアリスをよく知る人ならすぐに気付くわ。見た目や声、所作だけでなく、行動や言動まで全てが一緒だもの。公爵も気付いていてもおかしくはないわね……
〝女神からの贈り物〟って本当に凄いわ」
それは非常に困ったな。
どういうこと……?
男爵家の名前が消えているということは私が死んだすぐ後に没落したと考えるのが自然。貧乏男爵家だったし、あの態度の悪かったオーロラのことだから、敵対する令嬢達から報復された可能性もある。
気になった私は、前世の私が死んだ年の新聞を調べることにした。
しかし、新聞を調べるのは量が多すぎて地味に大変だった。しかも、憎いオーロラよりも気になる記事を見つけてしまう。
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はっ! いけない。今はオーロラを調べるのが先よ。ロミオも気になるけど、お楽しみは後にとっておくの。
その後も夢中になって昔の新聞を調べていると、衝撃的な記事を見つけてしまう。
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あの女は処刑された?
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ガタン!
気分の悪くなった私はそのまま意識を失って倒れてしまった。
◇◇
目覚めると、そこは私の知らない部屋だった。
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私に話しかける穏やかな声は王妃殿下だった。
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「王妃殿下……、ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」
まだ頭がスッキリしていない私は、弱々しい声で王妃殿下に謝罪をしていた。
「気にしないで。ところで、こんな時はやっぱり薬草茶がいいわ。アリスはいつも色が気持ち悪くて飲めないって言うけど、慣れれば美味しいし、よく効くのよ。騙されたと思って飲んでみなさい」
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「やっぱり、アリスなのね……
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「彼は変わったのよ。確かに昔の彼は嫌われても仕方がないような男だった。でも今は違う。今の公爵を見てあげて」
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