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記憶が戻った後の話
33 ムカつくオバさん
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義母の実家が成金男爵家だと知った理由は、公爵家で貴族名鑑を隅々まで読んだからだ。
貴族名鑑を読む私のところに家令がお茶を持ってきてくれて、その時に聞いた話によると、ベント伯爵家が金で困った時に義母の実家が援助してくれたことがきっかけで、男爵令嬢だった義母が伯爵夫人になれたらしい。
「アリシア、父の話を聞いてくれないか?」
「手短にお願いしますわ」
父が話してくれたのは、姉のせいでアンダーソン公爵家を敵に回してしまい、ベント伯爵家と取引をしてくれる貴族が減ってしまい収入が減少して困ったということだった。
更に、高額な慰謝料の支払いもあり生活が苦しくなったとか。
「アリシアから、慰謝料の減額を公爵閣下に頼んでくれないか?」
「エステルのせいで、私はお茶会にも誘われなくなってしまったの。友人達も私から離れたわ。
これからは、公爵夫人であるアリシアの義母として、貴女と一緒に社交をさせて欲しいのよ。いいでしょ? 私の義娘は貴女だけなのよ」
アリシアはこんなに情けない父と義母の顔色を伺って生きていたのね。何だか虚しくなるわ……
「伯爵様、奥様、それは私が判断できる話ではありません。夫に相談しないと何とも言えませんわ」
「アリシアから公爵閣下に頼んでみてくれ。私達は親子なんだから、親思いの優しいアリシアの気持ちを閣下は無下には出来ないだろう」
こんな時ばかり親子だと言って擦り寄る父。
私は優しくないし、親とも認めていない二人のためにそんなことはしない!
「アリシア、お願いよ! 私は期待していた実の娘に裏切られて憔悴していたけど、ベント伯爵家を立て直すためにも早く社交を再開したいの」
成金の娘として贅沢をして育ってきた義母は、パーティーやお茶会など華やかな場が大好きな人だもんね……
侯爵令嬢だったアリスの記憶が戻って気付いたが、義母は成金育ちらしく、ド派手で下品なドレスが大好きだ。男爵家の緩い淑女教育しか受けてないのか、カーテシーは綺麗じゃないし所作も全然美しくない。食事やお茶のマナーも大したことないのに、伯爵夫人としてのプライドだけは高いから最悪なオバさんにしか見えない。本人はそのことに気付いてないから本当に厄介。
アリシアは平民で育ち、他の貴族を知らないこともあって、こんな義母でも立派なお貴族様だと思っていた。でも前世で厳しい淑女教育を受けて育ったアリスとして見たら、大したことないオバさんだよね。
ふふっ! この義母も上げて落としてやる。
◇◇
公爵家に帰った私は、早速、王妃殿下に手紙を出していた。
そろそろ体調が戻ってきたので積極的に社交をこなしていきたいこと。まずはお茶会に参加したいが、記憶が戻っておらず社交にも慣れていないので、敬愛する王妃殿下と親交のある家門の主催するお茶会に、塞ぎ込んでいる義母と一緒に参加したい。誰か紹介していただけないかという内容の手紙だ。
王妃殿下は、何か困ったことがあれば何でも協力すると言ってくださったので、これくらいいいよね?
すると王妃殿下は、私のお茶会に来てちょうだいとすぐに招待状を送ってくださる。
王妃殿下のお茶会って高位貴族の夫人ばかりで、成金男爵家出身の義母は浮きそうだけど、まあいいか!
そして、お茶会当日……
図々しい義母を公爵家の豪華な馬車に乗せ、王宮に向かう。
「アリシア、王妃殿下のお茶会に行くのは初めてよ。良くやったわ!
さすが公爵閣下を誑かしたアリシアね」
このオバさん、途中で捨てて行ってもいいかな?
ベント伯爵家は、伯爵家の中ではかなり下でパッとしないし、成金男爵家出身の義母が王妃殿下や高位貴族の夫人達と交流があるはずもなく、今まで王妃殿下のお茶会に招待されたことはなかったらしい。
初めて王妃殿下のお茶会に招待されたからって、気合いを入れて、鮮やかな赤のド派手なドレスを着てこなくても……。一緒にいるのが恥ずかしいから、少し離れて歩こうかしら。
王妃殿下は私達の他に、公爵家の夫人を一人と侯爵家の夫人二人、うちよりも格が上の伯爵家の夫人を二人を招待していた。ゴミ屑のようなベント伯爵家なんて普段は相手にすらしてもらえない名門貴族の夫人しかいない。その凄いメンバーを見て、成金育ちの義母は浮かれまくっている。
どの夫人も、義母のドレスに引いているわ……
お茶会が始まると、早速、王妃殿下は義母に話し掛ける。
「ベント伯爵夫人、体調の方は大丈夫かしら?
家族のことで思い悩み、ずっと伏せっていたと聞いているわよ」
「……ご心配をお掛けして申し訳ありませんでした。
私なりに一生懸命に娘を育ててきましたが、まさかこんなことになるなんて……
娘の罪をこの場をお借りして謝罪致します。大変申し訳ありませんでした」
このオバさん、最大の被害者である私には一言も謝らなかったくせに。ムカつくわー!
貴族名鑑を読む私のところに家令がお茶を持ってきてくれて、その時に聞いた話によると、ベント伯爵家が金で困った時に義母の実家が援助してくれたことがきっかけで、男爵令嬢だった義母が伯爵夫人になれたらしい。
「アリシア、父の話を聞いてくれないか?」
「手短にお願いしますわ」
父が話してくれたのは、姉のせいでアンダーソン公爵家を敵に回してしまい、ベント伯爵家と取引をしてくれる貴族が減ってしまい収入が減少して困ったということだった。
更に、高額な慰謝料の支払いもあり生活が苦しくなったとか。
「アリシアから、慰謝料の減額を公爵閣下に頼んでくれないか?」
「エステルのせいで、私はお茶会にも誘われなくなってしまったの。友人達も私から離れたわ。
これからは、公爵夫人であるアリシアの義母として、貴女と一緒に社交をさせて欲しいのよ。いいでしょ? 私の義娘は貴女だけなのよ」
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「伯爵様、奥様、それは私が判断できる話ではありません。夫に相談しないと何とも言えませんわ」
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こんな時ばかり親子だと言って擦り寄る父。
私は優しくないし、親とも認めていない二人のためにそんなことはしない!
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侯爵令嬢だったアリスの記憶が戻って気付いたが、義母は成金育ちらしく、ド派手で下品なドレスが大好きだ。男爵家の緩い淑女教育しか受けてないのか、カーテシーは綺麗じゃないし所作も全然美しくない。食事やお茶のマナーも大したことないのに、伯爵夫人としてのプライドだけは高いから最悪なオバさんにしか見えない。本人はそのことに気付いてないから本当に厄介。
アリシアは平民で育ち、他の貴族を知らないこともあって、こんな義母でも立派なお貴族様だと思っていた。でも前世で厳しい淑女教育を受けて育ったアリスとして見たら、大したことないオバさんだよね。
ふふっ! この義母も上げて落としてやる。
◇◇
公爵家に帰った私は、早速、王妃殿下に手紙を出していた。
そろそろ体調が戻ってきたので積極的に社交をこなしていきたいこと。まずはお茶会に参加したいが、記憶が戻っておらず社交にも慣れていないので、敬愛する王妃殿下と親交のある家門の主催するお茶会に、塞ぎ込んでいる義母と一緒に参加したい。誰か紹介していただけないかという内容の手紙だ。
王妃殿下は、何か困ったことがあれば何でも協力すると言ってくださったので、これくらいいいよね?
すると王妃殿下は、私のお茶会に来てちょうだいとすぐに招待状を送ってくださる。
王妃殿下のお茶会って高位貴族の夫人ばかりで、成金男爵家出身の義母は浮きそうだけど、まあいいか!
そして、お茶会当日……
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ベント伯爵家は、伯爵家の中ではかなり下でパッとしないし、成金男爵家出身の義母が王妃殿下や高位貴族の夫人達と交流があるはずもなく、今まで王妃殿下のお茶会に招待されたことはなかったらしい。
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王妃殿下は私達の他に、公爵家の夫人を一人と侯爵家の夫人二人、うちよりも格が上の伯爵家の夫人を二人を招待していた。ゴミ屑のようなベント伯爵家なんて普段は相手にすらしてもらえない名門貴族の夫人しかいない。その凄いメンバーを見て、成金育ちの義母は浮かれまくっている。
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「……ご心配をお掛けして申し訳ありませんでした。
私なりに一生懸命に娘を育ててきましたが、まさかこんなことになるなんて……
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