上 下
102 / 106
連載

お茶会?

しおりを挟む
 あの夜会から二週間が経過した。
 今日は久しぶりにティーナとお茶会をする約束をしている。
 最近のお茶会は必ず義兄が同伴してくれていたが、今日はどうしても仕事が休めないらしい。それもあって、私一人で出かけることになったのだが……、やはり義兄は黙っていなかった。

「エリーゼ。私は今日はどうしても抜けられない会議があるから、お前の茶会の付き添いが出来ない。
 私が居ないからと気を抜いていると敵につけ入る隙を与えてしまうからな。気を引き締めて行ってこいよ!
 大体、エリーゼは……」

 朝食時、隣で義兄がくどくど言っている。
 どこかの姑のようで、これは地味にキツい……
 ティーナの茶会は私しか招待されないのだから、敵がいるはずがないのに。

「エリーゼ! 聞いているのか?」

 煩いわ……

「はい。聞いてますわ」

「では私が注意しろと言ったことを復唱出来るか?」

 ふ、復唱……?
 適当に相槌を打っていたのがバレていたようだ。

「オスカー、朝から煩いわよ! 食事が不味くなるわ。
 リーゼは子供じゃないの! そこまで言わなくてもいいのよ。
 貴方はそうやって捻くれているから、いつまでたっても結婚出来ないの!
 リーゼのことより自分のことを心配しなさい。リーゼはこのまま行けば殿下が貰ってくれるけど、貴方はどうするの?」

 煩い義兄にお義母様がキレ出して、最悪の雰囲気になっている。
 しかし、今なんて言った?
 私はこのまま殿下に貰われるの? まだ決めてないから!
 私がそのことを口にするよりも早く、義兄が反論する。

「母上、私やエリーゼに結婚を急かすのはやめて下さい。
 しかもさっきの言動を聞く限りでは、母上は王弟殿下にエリーゼを嫁がせると決めているのですね?
 母上もその辺にいる不愉快な令嬢や夫人と一緒で、義娘の結婚相手は見目が良くて身分の高い男なら誰でもいいという考えでいることがよく分かりました」

「オスカー!」

 お義母様の怒鳴り声が屋敷中に響き渡る。
 お義母様が感情を剥き出しにして怒るのは、この義兄に対してだけだ。

「二人ともいい加減にしなさい!」

 お義父様の怒りを含んだ低い声が聞こえて来た。

「オスカー、エリーゼに対して過干渉すぎるぞ。少し慎みなさい。
 それに王弟殿下を見目が良くて身分が高い男だなんて言うのは不敬だ。
 あの方は、不器用なりにエリーゼを誰よりも大切に思ってくれている。
 嫉妬深くて面倒なところはあるが、仕事は出来るし心優しい方なんだ」

 うーん……。お義父様も殿下を誉めているようで、軽く貶しているじゃないの。

「父上、私だって殿下が仕事の出来る優秀な人物だということは知っていますよ。
 今日の茶会もエリーゼが王女殿下に招待されたら、なぜか私に急な会議が入りましたから。
 裏であの方が何か圧力をかけたとしか思えませんがね……」

 腹黒はそこまでやるの?

「エリーゼ、そういうことだ。
 あの方はうちの両親を丸め込み、陛下や王妃殿下、もしかしたら幼い王女殿下までも上手く利用して、お前を外堀から埋めていくだろう。
 もう……、埋められてしまったかもな」

「……」

 義兄は私に冷ややかな目を向けると、そのままダイニングから出て行ってしまった。

「エリーゼ、気にすることはないわ。
 オスカーは可愛い義妹を殿下に奪われてしまいそうで、面白くないだけよ。
 本当に捻くれているんだから」

「お義母様。私、まだ殿下と婚約すると決めたわけではありませんから!」

「分かっているわよ」

 最悪な気分で朝食を終えた私は、ティーナの待つ王宮に向かうことにした。




「お姉様、今日はお兄様は来ないの?」

 何も知らないティーナは、私と一緒に義兄も来ると思っていたようだ。
 貴女の腹黒なおじ様が権力を使って、義兄が仕事を休めないようにしたのよ……と言ったら悲しむよね。

「ええ。義兄は今日はお仕事が休めなかったようですわ」

「お仕事があるなら仕方がないわ。
 本当はお兄様に本を読んでもらいたかったの。でも今日は我慢するわね」

「義兄には、王女殿下が残念がっていたことを伝えておきますわ」

 ティーナと薔薇園のガゼボでお茶を飲み、本を読んだり隠れんぼしたりして遊んでいると、王妃殿下がいらっしゃる。

「クリスティーナ。そろそろお勉強の時間よ。
 先生方が待っているわ」

「……もうそんな時間?
 お姉様、また今度遊びに来てね」

「王女殿下、お勉強頑張って下さいね」

 私も王妃殿下にご挨拶してそろそろ帰ろうかな。
 しかし……

「エリーゼ。良かったら私のお茶にも付き合ってくれないかしら?」

 それってお付き合いではなく命令ですよね?

「王妃殿下とお茶をご一緒できるなんて、大変光栄ですわ」

 王妃殿下と二人きりで頂くお茶は味を感じることが出来なかった。
 三十分くらい王妃殿下とお茶をした後、王妃殿下は執務に戻ると言う。
 ふぅー! やっと解放されると思ったその時……

「あ、やっと来たわ!」

 王妃殿下が声を弾ませている。視線の先には、王弟殿下がこっちに向かって歩いてくる姿が見えた。

「エリーゼ。お茶に招待しておきながら、最後まで付き合えなくて申し訳なかったわ。だから、ここからはアルベルトに接待してもらうわね。
 帰りはアルベルトが送ることになっているから、遠慮しないで送ってもらうようにしてね」

 王妃殿下の笑顔は怖かった。

「……はい。ありがとうございます」


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

3年前にも召喚された聖女ですが、仕事を終えたので早く帰らせてもらえますか?

せいめ
恋愛
 女子大生の莉奈は、高校生だった頃に異世界に聖女として召喚されたことがある。  大量に発生した魔物の討伐と、国に強力な結界を張った後、聖女の仕事を無事に終えた莉奈。  親しくなった仲間達に引き留められて、別れは辛かったが、元の世界でやりたい事があるからと日本に戻ってきた。 「だって私は、受験の為に今まで頑張ってきたの。いい大学に入って、そこそこの企業に就職するのが夢だったんだから。治安が良くて、美味しい物が沢山ある日本の方が最高よ。」  その後、無事に大学生になった莉奈はまた召喚されてしまう。  召喚されたのは、高校生の時に召喚された異世界の国と同じであった。しかし、あの時から3年しか経ってないはずなのに、こっちの世界では150年も経っていた。 「聖女も2回目だから、さっさと仕事を終わらせて、早く帰らないとね!」  今回は無事に帰れるのか…?  ご都合主義です。  誤字脱字お許しください。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

転生幼女の怠惰なため息

(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン… 紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢 座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!! もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。 全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。 作者は極度のとうふメンタルとなっております…

目覚めたら地下室!?~転生少女の夢の先~

そらのあお
ファンタジー
夢半ばに死んでしまった少女が異世界に転生して、様々な困難を乗り越えて行く物語。 *小説を読もう!にも掲載中

自重をやめた転生者は、異世界を楽しむ

饕餮
ファンタジー
書籍発売中! 詳しくは近況ノートをご覧ください。 桐渕 有里沙ことアリサは16歳。天使のせいで異世界に転生した元日本人。 お詫びにとたくさんのスキルと、とても珍しい黒いにゃんこスライムをもらい、にゃんすらを相棒にしてその世界を旅することに。 途中で魔馬と魔鳥を助けて懐かれ、従魔契約をし、旅を続ける。 自重しないでものを作ったり、テンプレに出会ったり……。 旅を続けるうちにとある村にたどり着き、スキルを使って村の一番奥に家を建てた。 訳アリの住人たちが住む村と、そこでの暮らしはアリサに合っていたようで、人間嫌いのアリサは徐々に心を開いていく。 リュミエール世界をのんびりと冒険したり旅をしたりダンジョンに潜ったりする、スローライフ。かもしれないお話。 ★最初は旅しかしていませんが、その道中でもいろいろ作ります。 ★本人は自重しません。 ★たまに残酷表現がありますので、苦手な方はご注意ください。 表紙は巴月のんさんに依頼し、有償で作っていただきました。 黒い猫耳の丸いものは作中に出てくる神獣・にゃんすらことにゃんこスライムです。 ★カクヨムでも連載しています。カクヨム先行。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。