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噂
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王弟殿下とお茶をした後、義両親の待つレストランに二人で移動する。
店に到着し、殿下にエスコートされて店内に入った瞬間……
「まあ!」
「……やはりそういうことだったのね」
「お似合いじゃないの」
「いつ正式に婚約するのかしら?」
色々な所からヒソヒソと言っているのが聞こえてくる。
今はちょうどランチの時間帯で、店にはたくさんのお客様がいる。そんな中、やたらキラキラした王弟殿下と二人でいれば、当然のように目立つし注目されてしまうのだ。
私はこの視線が嫌なのに、王弟殿下は全く気にすることなく堂々としているから凄い。育ちの違いなのかな。
その後、義両親と私達の四人でランチをして、その日は終わったと思ったのだが……
その日の夜、あの男が黙っていなかった。
夕食前に部屋のドアがノックされ、何も考えずに返事をすると、偏屈義兄が部屋に入ってきた。
え……? 何で来るんだろう。
「お義兄様、お帰りなさいませ」
「エリーゼ……」
私の名前を呼ぶ一言で気付いてしまった。
義兄の声のトーンが低いし、いつもと同じ無表情なようだけど目が怒ってない? 怖いんだけど!
「お、お義兄様……、どうされましたか?」
「……何をしていた?」
「今は本を読んでおりましたが……」
「ハァー……。私は、今日の昼間にエリーゼはどこで何をしていたのかを聞いているんだ」
最初からそう聞いてよね!
あ……、腹黒とお茶をしてレストランで食事をしたことを言っていいのかな?
でもこの義兄の感じを見ると、誰かに何かを聞いてすでに知っているのかも。
嘘をついてもすぐにバレて怒られそうだし、すごく怖いから正直に話そう。
「実は今日、急に王弟殿下が邸に来られまして、お茶をご一緒した後にレストランでお義父様とお義母様、私と殿下の四人でランチをしました。
その後に邸に帰って来て、王女殿下への手紙を書き、少しだけ昼寝をして読書をしていたら今の時間になりました」
「そうか。あの噂話は本当だったのだな」
「噂話ですか?」
「ああ。レストランにエリーゼと殿下が二人でやって来て、父上と母上と一緒に食事をしていたという噂だ。
婚約が決まったから、家族で食事会をしていたのかと聞かれたぞ」
早っ! あの時レストランにいた客がすぐに王宮の誰かに話して噂話になり、仕事をしていた義兄の耳に入ったってこと?
ひぇー怖い! そして、目の前にいる偏屈義兄も怖い……
「……偶然みんなで食事をしただけですわ」
「エリーゼはそのつもりでも、周りはそうは思わないだろう。
お前に気をつけろと言っても、今日みたいに王弟殿下に外堀を埋められた後では逃げられないからな。
まさか殿下が父上と母上を上手く取り込むとは思っていなかった。しかも私に秘密にして、仕事でいない時を狙ってくるとは……」
偏屈義兄も殿下が腹黒だということは分かっているようだ。
それよりも、静かに怒る義兄も怖いんだけど。
「エリーゼ。お前はこのままいくと、王弟殿下に上手く外堀を埋められる。
気が付いたら婚約させられて、そのまま逃げることが出来ずに結婚までいくことになる」
「……うっ」
義兄は真顔で恐ろしいことを言う。でもこの人は正直な人だから、冗談ではなく本気でそう思っているんだろう。
「分かっているとは思うが、王弟殿下はただ見目が良いだけの男ではない。
エリーゼのことになると余裕のない男のような振る舞いをするが、本来のあの方は策略家で頭が切れる方だ。
騎士団の総帥を務めているのは、ただ王弟だからという理由ではない。
そんな殿下が本気を出せば、エリーゼの気持ちとは関係なく簡単に縁談の話を進められ、後戻りが出来ない状態にもっていかれるだろうな……」
「でも、王弟殿下は私の気持ちを少しは配慮してくれるのかと思っていましたが……」
「強引に進めたら嫌われるかもしれないのだから、それは当然だ!
だが、ジワジワと確実にあの方は進めていくだろうな。
エリーゼ、お前は王弟殿下をどう思っているんだ? 今後、どうしたい?
正直に話してみろ」
急にそんなことを聞かれても……
可愛いティーナの身内の一人として、当たり障りなく付き合っていただけなのに。
店に到着し、殿下にエスコートされて店内に入った瞬間……
「まあ!」
「……やはりそういうことだったのね」
「お似合いじゃないの」
「いつ正式に婚約するのかしら?」
色々な所からヒソヒソと言っているのが聞こえてくる。
今はちょうどランチの時間帯で、店にはたくさんのお客様がいる。そんな中、やたらキラキラした王弟殿下と二人でいれば、当然のように目立つし注目されてしまうのだ。
私はこの視線が嫌なのに、王弟殿下は全く気にすることなく堂々としているから凄い。育ちの違いなのかな。
その後、義両親と私達の四人でランチをして、その日は終わったと思ったのだが……
その日の夜、あの男が黙っていなかった。
夕食前に部屋のドアがノックされ、何も考えずに返事をすると、偏屈義兄が部屋に入ってきた。
え……? 何で来るんだろう。
「お義兄様、お帰りなさいませ」
「エリーゼ……」
私の名前を呼ぶ一言で気付いてしまった。
義兄の声のトーンが低いし、いつもと同じ無表情なようだけど目が怒ってない? 怖いんだけど!
「お、お義兄様……、どうされましたか?」
「……何をしていた?」
「今は本を読んでおりましたが……」
「ハァー……。私は、今日の昼間にエリーゼはどこで何をしていたのかを聞いているんだ」
最初からそう聞いてよね!
あ……、腹黒とお茶をしてレストランで食事をしたことを言っていいのかな?
でもこの義兄の感じを見ると、誰かに何かを聞いてすでに知っているのかも。
嘘をついてもすぐにバレて怒られそうだし、すごく怖いから正直に話そう。
「実は今日、急に王弟殿下が邸に来られまして、お茶をご一緒した後にレストランでお義父様とお義母様、私と殿下の四人でランチをしました。
その後に邸に帰って来て、王女殿下への手紙を書き、少しだけ昼寝をして読書をしていたら今の時間になりました」
「そうか。あの噂話は本当だったのだな」
「噂話ですか?」
「ああ。レストランにエリーゼと殿下が二人でやって来て、父上と母上と一緒に食事をしていたという噂だ。
婚約が決まったから、家族で食事会をしていたのかと聞かれたぞ」
早っ! あの時レストランにいた客がすぐに王宮の誰かに話して噂話になり、仕事をしていた義兄の耳に入ったってこと?
ひぇー怖い! そして、目の前にいる偏屈義兄も怖い……
「……偶然みんなで食事をしただけですわ」
「エリーゼはそのつもりでも、周りはそうは思わないだろう。
お前に気をつけろと言っても、今日みたいに王弟殿下に外堀を埋められた後では逃げられないからな。
まさか殿下が父上と母上を上手く取り込むとは思っていなかった。しかも私に秘密にして、仕事でいない時を狙ってくるとは……」
偏屈義兄も殿下が腹黒だということは分かっているようだ。
それよりも、静かに怒る義兄も怖いんだけど。
「エリーゼ。お前はこのままいくと、王弟殿下に上手く外堀を埋められる。
気が付いたら婚約させられて、そのまま逃げることが出来ずに結婚までいくことになる」
「……うっ」
義兄は真顔で恐ろしいことを言う。でもこの人は正直な人だから、冗談ではなく本気でそう思っているんだろう。
「分かっているとは思うが、王弟殿下はただ見目が良いだけの男ではない。
エリーゼのことになると余裕のない男のような振る舞いをするが、本来のあの方は策略家で頭が切れる方だ。
騎士団の総帥を務めているのは、ただ王弟だからという理由ではない。
そんな殿下が本気を出せば、エリーゼの気持ちとは関係なく簡単に縁談の話を進められ、後戻りが出来ない状態にもっていかれるだろうな……」
「でも、王弟殿下は私の気持ちを少しは配慮してくれるのかと思っていましたが……」
「強引に進めたら嫌われるかもしれないのだから、それは当然だ!
だが、ジワジワと確実にあの方は進めていくだろうな。
エリーゼ、お前は王弟殿下をどう思っているんだ? 今後、どうしたい?
正直に話してみろ」
急にそんなことを聞かれても……
可愛いティーナの身内の一人として、当たり障りなく付き合っていただけなのに。
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