異世界で捨て子を育てたら王女だった話

せいめ

文字の大きさ
上 下
95 / 106
連載

口説かれる

しおりを挟む
 お義父様とお義母様、そして私の三人で王弟殿下を出迎えたのに……

「王弟殿下。せっかく来て頂きましたが、私と妻はこれからレストランの従業員たちとの打ち合わせが入っておりまして、この後すぐに出掛けなくてはならないのです。申し訳ありません」

 殿下が来てるのに、そんなことが許されるの?

「殿下。お茶の用意をしておりますので、うちのリーゼがご案内致しますわ。
 二人でゆっくりお茶をしましたら、レストランに食事に来て下さいませ。眺めのいい個室をご用意しておりますのよ。
 リーゼ。殿下を応接室にご案内して差し上げて。
 レストランには十二時半に殿下と一緒に来るようにしてね。
 みんなで食事しましょう! 待ってるわ」

「クリフォード公爵・夫人。忙しい中、出迎えをしてくれて感謝する。
 レストランで食事するのが楽しみだ。では、また後で!」

 はい? だったら、最初からレストラン集合で良かったじゃないの!
 腹黒がわざわざうちにお茶を飲みに来る必要なんてあった?
 これは嵌められたわー!

 この状況で嫌とは言えず、眩しい笑顔の腹黒を応接室に案内する。

「リーゼ。クリスティーナから手紙を預かって来たぞ。忘れないうちに渡しておくからな」

「ありがとうございます。
 ところで……」

「リーゼ、どうした?」

「殿下は……、どうやってうちの義両親を味方につけたのでしょうね?
 義娘の私から見て、あの義両親はタダで動くようには見えませんわ。なかなか計算高い人たちですから。
 それが殿下の頼みであったとしてもです」

 私の質問を聞いても余裕そうにしている王弟殿下。
 あ、その顔はいつもの腹黒らしい笑みだわ。

「私はリーゼが好きで誰にも渡したくないから、親しくすることを認めて欲しいと頼んだだけだ」

 堂々と話しているけど、この腹黒は恥ずかしくないの?

「うちの義両親にですか?」

「ああ。王妃殿下が二人をお茶に招待すると言っていたから、その後に時間をもらって私から話をした」

「それだけではないでしょう……?」

「リーゼ、そんな顔を引き攣らせないでくれ。
 分かった……全部話すよ。リーゼに嫌われたくないからな」

 そこまで引き攣った顔をしたつもりはないんだけど!

「リーゼとの婚約を認めてくれるなら、私はクリフォード公爵家の意向に合わせたいと伝えた」

「うちの意向に合わせる? なぜでしょう?」

「少し前にクリフォード公爵と夫人が、リーゼの婚約者はリーゼを愛して大切にしてくれる人物なら、次男や三男でもいいし爵位は関係ないと言っていた。
 それを聞いた私は、二人がリーゼの結婚で相手の家より主導権を握りたいのだろうと思った」

 ハァー……。義両親の考えが腹黒にバレているわ。

「リーゼには義兄のクリフォード卿がいるからあり得ないが、公爵と夫人が望むなら私は婿入りしてもいいくらいの覚悟があることを話した。
 そしたら夫人は、リーゼの結婚相手に望むことを細かく話してくれたよ。
 だから私はその意向に合わせたいと話した。
 クリフォード卿が未婚だったら、リーゼの子供を跡取りに迎えたいことや、孫の子守りをしたい話、リーゼには結婚後も近くに住んで欲しいことなど、全て聞いて私は了承した」

 あのお義母様は、王族相手にあの話をしたのね……
 そして腹黒は、その細かい条件をのむ代わりに、私と親しくする許可を得たと。
 
「あの話を聞いて何とも思わなかったのでしょうか?
 王弟殿下は王族なのですから、こちらの家の都合に合わせることに抵抗はなかったのですか?」

「特に気にならなかったな。
 公爵と夫人がリーゼを可愛がっているのが分かったし、私は次男だからいずれ実家を離れるという考えで育ってきたから、何の抵抗もない」

「そうですか。凄いですね……」

 あの義両親はそんなことがあって、あっさりと王弟殿下を認め、腹黒に協力的になったのね。

「リーゼ。私は金には困ってないし、身分も高い方だ。リーゼの財産やクリフォード家の後ろ盾が欲しくて結婚を望んでいることは絶対にないから安心しろ」

「それは分かっておりますわ」

「私はリーゼが好きだから婚約したいんだ。
 それも分かってくれ」

 キラキラのイケメンが真顔でジッと見つめてきたわ。
 どうやら本気で口説きにきたらしい……


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。