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口説かれる
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お義父様とお義母様、そして私の三人で王弟殿下を出迎えたのに……
「王弟殿下。せっかく来て頂きましたが、私と妻はこれからレストランの従業員たちとの打ち合わせが入っておりまして、この後すぐに出掛けなくてはならないのです。申し訳ありません」
殿下が来てるのに、そんなことが許されるの?
「殿下。お茶の用意をしておりますので、うちのリーゼがご案内致しますわ。
二人でゆっくりお茶をしましたら、レストランに食事に来て下さいませ。眺めのいい個室をご用意しておりますのよ。
リーゼ。殿下を応接室にご案内して差し上げて。
レストランには十二時半に殿下と一緒に来るようにしてね。
みんなで食事しましょう! 待ってるわ」
「クリフォード公爵・夫人。忙しい中、出迎えをしてくれて感謝する。
レストランで食事するのが楽しみだ。では、また後で!」
はい? だったら、最初からレストラン集合で良かったじゃないの!
腹黒がわざわざうちにお茶を飲みに来る必要なんてあった?
これは嵌められたわー!
この状況で嫌とは言えず、眩しい笑顔の腹黒を応接室に案内する。
「リーゼ。クリスティーナから手紙を預かって来たぞ。忘れないうちに渡しておくからな」
「ありがとうございます。
ところで……」
「リーゼ、どうした?」
「殿下は……、どうやってうちの義両親を味方につけたのでしょうね?
義娘の私から見て、あの義両親はタダで動くようには見えませんわ。なかなか計算高い人たちですから。
それが殿下の頼みであったとしてもです」
私の質問を聞いても余裕そうにしている王弟殿下。
あ、その顔はいつもの腹黒らしい笑みだわ。
「私はリーゼが好きで誰にも渡したくないから、親しくすることを認めて欲しいと頼んだだけだ」
堂々と話しているけど、この腹黒は恥ずかしくないの?
「うちの義両親にですか?」
「ああ。王妃殿下が二人をお茶に招待すると言っていたから、その後に時間をもらって私から話をした」
「それだけではないでしょう……?」
「リーゼ、そんな顔を引き攣らせないでくれ。
分かった……全部話すよ。リーゼに嫌われたくないからな」
そこまで引き攣った顔をしたつもりはないんだけど!
「リーゼとの婚約を認めてくれるなら、私はクリフォード公爵家の意向に合わせたいと伝えた」
「うちの意向に合わせる? なぜでしょう?」
「少し前にクリフォード公爵と夫人が、リーゼの婚約者はリーゼを愛して大切にしてくれる人物なら、次男や三男でもいいし爵位は関係ないと言っていた。
それを聞いた私は、二人がリーゼの結婚で相手の家より主導権を握りたいのだろうと思った」
ハァー……。義両親の考えが腹黒にバレているわ。
「リーゼには義兄のクリフォード卿がいるからあり得ないが、公爵と夫人が望むなら私は婿入りしてもいいくらいの覚悟があることを話した。
そしたら夫人は、リーゼの結婚相手に望むことを細かく話してくれたよ。
だから私はその意向に合わせたいと話した。
クリフォード卿が未婚だったら、リーゼの子供を跡取りに迎えたいことや、孫の子守りをしたい話、リーゼには結婚後も近くに住んで欲しいことなど、全て聞いて私は了承した」
あのお義母様は、王族相手にあの話をしたのね……
そして腹黒は、その細かい条件をのむ代わりに、私と親しくする許可を得たと。
「あの話を聞いて何とも思わなかったのでしょうか?
王弟殿下は王族なのですから、こちらの家の都合に合わせることに抵抗はなかったのですか?」
「特に気にならなかったな。
公爵と夫人がリーゼを可愛がっているのが分かったし、私は次男だからいずれ実家を離れるという考えで育ってきたから、何の抵抗もない」
「そうですか。凄いですね……」
あの義両親はそんなことがあって、あっさりと王弟殿下を認め、腹黒に協力的になったのね。
「リーゼ。私は金には困ってないし、身分も高い方だ。リーゼの財産やクリフォード家の後ろ盾が欲しくて結婚を望んでいることは絶対にないから安心しろ」
「それは分かっておりますわ」
「私はリーゼが好きだから婚約したいんだ。
それも分かってくれ」
キラキラのイケメンが真顔でジッと見つめてきたわ。
どうやら本気で口説きにきたらしい……
「王弟殿下。せっかく来て頂きましたが、私と妻はこれからレストランの従業員たちとの打ち合わせが入っておりまして、この後すぐに出掛けなくてはならないのです。申し訳ありません」
殿下が来てるのに、そんなことが許されるの?
「殿下。お茶の用意をしておりますので、うちのリーゼがご案内致しますわ。
二人でゆっくりお茶をしましたら、レストランに食事に来て下さいませ。眺めのいい個室をご用意しておりますのよ。
リーゼ。殿下を応接室にご案内して差し上げて。
レストランには十二時半に殿下と一緒に来るようにしてね。
みんなで食事しましょう! 待ってるわ」
「クリフォード公爵・夫人。忙しい中、出迎えをしてくれて感謝する。
レストランで食事するのが楽しみだ。では、また後で!」
はい? だったら、最初からレストラン集合で良かったじゃないの!
腹黒がわざわざうちにお茶を飲みに来る必要なんてあった?
これは嵌められたわー!
この状況で嫌とは言えず、眩しい笑顔の腹黒を応接室に案内する。
「リーゼ。クリスティーナから手紙を預かって来たぞ。忘れないうちに渡しておくからな」
「ありがとうございます。
ところで……」
「リーゼ、どうした?」
「殿下は……、どうやってうちの義両親を味方につけたのでしょうね?
義娘の私から見て、あの義両親はタダで動くようには見えませんわ。なかなか計算高い人たちですから。
それが殿下の頼みであったとしてもです」
私の質問を聞いても余裕そうにしている王弟殿下。
あ、その顔はいつもの腹黒らしい笑みだわ。
「私はリーゼが好きで誰にも渡したくないから、親しくすることを認めて欲しいと頼んだだけだ」
堂々と話しているけど、この腹黒は恥ずかしくないの?
「うちの義両親にですか?」
「ああ。王妃殿下が二人をお茶に招待すると言っていたから、その後に時間をもらって私から話をした」
「それだけではないでしょう……?」
「リーゼ、そんな顔を引き攣らせないでくれ。
分かった……全部話すよ。リーゼに嫌われたくないからな」
そこまで引き攣った顔をしたつもりはないんだけど!
「リーゼとの婚約を認めてくれるなら、私はクリフォード公爵家の意向に合わせたいと伝えた」
「うちの意向に合わせる? なぜでしょう?」
「少し前にクリフォード公爵と夫人が、リーゼの婚約者はリーゼを愛して大切にしてくれる人物なら、次男や三男でもいいし爵位は関係ないと言っていた。
それを聞いた私は、二人がリーゼの結婚で相手の家より主導権を握りたいのだろうと思った」
ハァー……。義両親の考えが腹黒にバレているわ。
「リーゼには義兄のクリフォード卿がいるからあり得ないが、公爵と夫人が望むなら私は婿入りしてもいいくらいの覚悟があることを話した。
そしたら夫人は、リーゼの結婚相手に望むことを細かく話してくれたよ。
だから私はその意向に合わせたいと話した。
クリフォード卿が未婚だったら、リーゼの子供を跡取りに迎えたいことや、孫の子守りをしたい話、リーゼには結婚後も近くに住んで欲しいことなど、全て聞いて私は了承した」
あのお義母様は、王族相手にあの話をしたのね……
そして腹黒は、その細かい条件をのむ代わりに、私と親しくする許可を得たと。
「あの話を聞いて何とも思わなかったのでしょうか?
王弟殿下は王族なのですから、こちらの家の都合に合わせることに抵抗はなかったのですか?」
「特に気にならなかったな。
公爵と夫人がリーゼを可愛がっているのが分かったし、私は次男だからいずれ実家を離れるという考えで育ってきたから、何の抵抗もない」
「そうですか。凄いですね……」
あの義両親はそんなことがあって、あっさりと王弟殿下を認め、腹黒に協力的になったのね。
「リーゼ。私は金には困ってないし、身分も高い方だ。リーゼの財産やクリフォード家の後ろ盾が欲しくて結婚を望んでいることは絶対にないから安心しろ」
「それは分かっておりますわ」
「私はリーゼが好きだから婚約したいんだ。
それも分かってくれ」
キラキラのイケメンが真顔でジッと見つめてきたわ。
どうやら本気で口説きにきたらしい……
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