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腹黒の味方たち
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殿下と別れ、レストランの中に入ってすぐ、あの人から呼び止められる。
「エリーゼ、ただの見送りにしては時間が掛かっていたな。
父上との挨拶回りよりも、見送りの方が時間がかかるなんて……、何をしていたんだ?」
なぜ義兄が店の入り口付近にいるのか……
「殿下がライトアップされた庭園を気に入って下さったので、ちょっとだけ案内して差し上げたのです。そしたら、思った以上に時間が掛かってしまったようですわ。
ご心配をおかけしました」
「それだけか?」
「ええ……」
ひぃー、ヤバいわ。もしかして、義兄に何か見られたとか?
お義父様やお義母様よりも、義兄が一番厄介で怖い人だから、この人には何も見られたくないのに!
「それならいい。しかし、夜は涼しいのにエリーゼを庭園に連れて行くなんて、殿下は何を考えておられるのだ? エリーゼが風邪をひいてしまうではないか……」
ブツブツ言っている義兄が小舅のように見えてしまった。
「お義兄様。私は大丈夫ですからパーティーに戻りましょう」
「分かった」
ふぅー。何とか誤魔化せたかな。
その後、パーティーは無事に終わり、レストランは予定通りに開店を迎えた。
レセプションパーティーに招待した貴族たちの口コミのおかげで、初日からお客様がたくさん来てくれたらしい。お義父様もお義母様も大喜びだ。
「リーゼ。庭園をライトアップしたらみんなに好評で、また夜に来たいって言ってくれるお客様がたくさんいるみたいなの。
二階の個室の窓からライトアップされた庭園はとても綺麗に見えるでしょ? 大人気でディナーの個室の予約が半年先までいっぱいなのよ。
リーゼのアイディアは凄いわ! 夫人方がみんな貴女を褒めているのよ。義母として嬉しくなってしまったわ」
「ありがとうございます。お義母様に認めてもらえて嬉しいですわ」
二階の個室からの眺めは最高だから、カップルで来て、プロポーズとかするのにちょうどいい雰囲気なんだよね。
レストランの料理の方は、ハンバーグやピザ、オムライスにコロッケ、トンカツなど前世の庶民料理がメインなんだけど、珍しさから料理の評判もいいみたいだ。
「話は変わるけど、今度の国王陛下の即位記念のパーティーなんだけどね……」
「お義母様、エスコートはお義兄様にお願いしますから大丈夫です」
お義母様がパーティーの話を振ってくる時は、大抵はドレスの話かパートナーは誰にするかの話だと決まっている。
今の私のベストパートナーは、偏屈だけど頼りになるお義兄様だと思っているから、義兄にエスコートを頼むつもりでいたのだけど……
「それが、王妃殿下から頼まれてしまったのよ」
王妃殿下と聞いて嫌な予感がした……
あの腹黒、今度は王妃殿下とうちのお義母様を味方につけたのかしら?
「お義母様。王妃殿下は何と言っていたのでしょうか?」
「陛下の即位記念パーティーは、王家にとって特別な行事だから、王弟殿下にもパートナーがいた方がいいとおっしゃってね……。パートナーはぜひリーゼにお願いしたいと頼まれてしまったの。
年齢的にも身分的にも、リーゼが一番釣り合いが取れているとまで言われてしまったら、断れなかったわ」
腹黒は、今まで陛下主催のパーティーでいつも国王陛下と王妃殿下の後ろにいて、パートナーなんていなかったじゃないのよ!
今まで通りに一人で立っていればいいじゃないの。
「……」
「リーゼ。今回は王弟殿下のパートナーをしてあげて! ごめんなさいね」
王妃殿下から頼まれたら断れないのは分かるけど、あの腹黒ー! 今度会ったら文句言ってやるー。……とその時の私は思っていた。
それから数日後、王弟殿下がこれから来ることになったと急な先触れがある。
急に王族が邸に来るとなったら、普通は邸中が慌てると思うの。それなのに、お義父様もお義母様も慌てていないような気がする。もしかして私や義兄には知らせていなかっただけ?
あの義兄なら王弟殿下が来ると知っていたら、次期当主として出迎えるとか言って、仕事を休むくらいのことはしそうなのに、今日は普通に仕事に行っちゃったし……
そういえば、今日着せられたドレスは新しく仕立てたばかりのもので、ちょっとしたお茶会に着て行っても良さそうなドレスだ。
やはり義両親は王弟殿下が来ることを知っていたに違いない。
「お義母様。今日は王弟殿下がお一人で来られるのでしょうか? 王女殿下も来られますか?」
「……どうかしら? 王弟殿下がいらっしゃるということしか聞いてないわ。
ねぇ、旦那様?」
「ああ。王女殿下が来るとは聞いてないな。
エリーゼ。王女殿下が来なかったとしても、王弟殿下の前でガッカリした顔はしないようにな」
私はそこまで非常識な人間じゃないわ!
「分かっておりますわ」
義両親と三人で玄関先で話をしていると、立派な馬車が走ってくるのが見えた。
来たわね、腹黒……
「エリーゼ、ただの見送りにしては時間が掛かっていたな。
父上との挨拶回りよりも、見送りの方が時間がかかるなんて……、何をしていたんだ?」
なぜ義兄が店の入り口付近にいるのか……
「殿下がライトアップされた庭園を気に入って下さったので、ちょっとだけ案内して差し上げたのです。そしたら、思った以上に時間が掛かってしまったようですわ。
ご心配をおかけしました」
「それだけか?」
「ええ……」
ひぃー、ヤバいわ。もしかして、義兄に何か見られたとか?
お義父様やお義母様よりも、義兄が一番厄介で怖い人だから、この人には何も見られたくないのに!
「それならいい。しかし、夜は涼しいのにエリーゼを庭園に連れて行くなんて、殿下は何を考えておられるのだ? エリーゼが風邪をひいてしまうではないか……」
ブツブツ言っている義兄が小舅のように見えてしまった。
「お義兄様。私は大丈夫ですからパーティーに戻りましょう」
「分かった」
ふぅー。何とか誤魔化せたかな。
その後、パーティーは無事に終わり、レストランは予定通りに開店を迎えた。
レセプションパーティーに招待した貴族たちの口コミのおかげで、初日からお客様がたくさん来てくれたらしい。お義父様もお義母様も大喜びだ。
「リーゼ。庭園をライトアップしたらみんなに好評で、また夜に来たいって言ってくれるお客様がたくさんいるみたいなの。
二階の個室の窓からライトアップされた庭園はとても綺麗に見えるでしょ? 大人気でディナーの個室の予約が半年先までいっぱいなのよ。
リーゼのアイディアは凄いわ! 夫人方がみんな貴女を褒めているのよ。義母として嬉しくなってしまったわ」
「ありがとうございます。お義母様に認めてもらえて嬉しいですわ」
二階の個室からの眺めは最高だから、カップルで来て、プロポーズとかするのにちょうどいい雰囲気なんだよね。
レストランの料理の方は、ハンバーグやピザ、オムライスにコロッケ、トンカツなど前世の庶民料理がメインなんだけど、珍しさから料理の評判もいいみたいだ。
「話は変わるけど、今度の国王陛下の即位記念のパーティーなんだけどね……」
「お義母様、エスコートはお義兄様にお願いしますから大丈夫です」
お義母様がパーティーの話を振ってくる時は、大抵はドレスの話かパートナーは誰にするかの話だと決まっている。
今の私のベストパートナーは、偏屈だけど頼りになるお義兄様だと思っているから、義兄にエスコートを頼むつもりでいたのだけど……
「それが、王妃殿下から頼まれてしまったのよ」
王妃殿下と聞いて嫌な予感がした……
あの腹黒、今度は王妃殿下とうちのお義母様を味方につけたのかしら?
「お義母様。王妃殿下は何と言っていたのでしょうか?」
「陛下の即位記念パーティーは、王家にとって特別な行事だから、王弟殿下にもパートナーがいた方がいいとおっしゃってね……。パートナーはぜひリーゼにお願いしたいと頼まれてしまったの。
年齢的にも身分的にも、リーゼが一番釣り合いが取れているとまで言われてしまったら、断れなかったわ」
腹黒は、今まで陛下主催のパーティーでいつも国王陛下と王妃殿下の後ろにいて、パートナーなんていなかったじゃないのよ!
今まで通りに一人で立っていればいいじゃないの。
「……」
「リーゼ。今回は王弟殿下のパートナーをしてあげて! ごめんなさいね」
王妃殿下から頼まれたら断れないのは分かるけど、あの腹黒ー! 今度会ったら文句言ってやるー。……とその時の私は思っていた。
それから数日後、王弟殿下がこれから来ることになったと急な先触れがある。
急に王族が邸に来るとなったら、普通は邸中が慌てると思うの。それなのに、お義父様もお義母様も慌てていないような気がする。もしかして私や義兄には知らせていなかっただけ?
あの義兄なら王弟殿下が来ると知っていたら、次期当主として出迎えるとか言って、仕事を休むくらいのことはしそうなのに、今日は普通に仕事に行っちゃったし……
そういえば、今日着せられたドレスは新しく仕立てたばかりのもので、ちょっとしたお茶会に着て行っても良さそうなドレスだ。
やはり義両親は王弟殿下が来ることを知っていたに違いない。
「お義母様。今日は王弟殿下がお一人で来られるのでしょうか? 王女殿下も来られますか?」
「……どうかしら? 王弟殿下がいらっしゃるということしか聞いてないわ。
ねぇ、旦那様?」
「ああ。王女殿下が来るとは聞いてないな。
エリーゼ。王女殿下が来なかったとしても、王弟殿下の前でガッカリした顔はしないようにな」
私はそこまで非常識な人間じゃないわ!
「分かっておりますわ」
義両親と三人で玄関先で話をしていると、立派な馬車が走ってくるのが見えた。
来たわね、腹黒……
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