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レセプションパーティー
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お義父様とお義母様によるレストランの出店計画は順調に進み、開店に向けての準備を無事に終える。
そして、今日は貴族向けに店のお披露目を兼ねてのレセプションパーティーを開催することになった。
パーティーに行く準備を終えた私が、時間に煩い義兄と一緒に玄関ホールでお義母様たちを待っていた時……
「リーゼ。準備は出来ているかしら?
まあ! 今日のドレスも素敵ね。さすが、ウォーカー商会のドレスだわ!
今日のパーティーではいい出会いがあるかもしれないから、しっかりやるのよ。
オスカーとつるむのは程々にしなさい。良縁が遠のいてしまうから気をつけるのよ」
「えっ? お義母様、それはちょっと……」
お義母様は、このパーティーの準備に力を入れていたので、今日も朝から張り切っている。
しかし偏屈義兄がいる目の前で、はっきりと良縁が遠のくって言わなくても……
義兄は、面倒な貴族を避けるのに最高の盾になってくれるんだから。
「オスカー。貴方もリーゼばかり構ってないで、年頃の御令嬢と仲良くなってきなさいね」
うわー! 出発前に親子喧嘩になりそうな雰囲気だわ。何とかしないと……
「……お義母様、今日は忙しくなるので早めに出発しませんか?
レストランでお客様をお出迎えしなくてはいけませんよね?」
「エリーゼ、母上の言うことは気にするな。
私達は先に出発しよう。母上は父上と二人で来るだろうからな」
義兄は、今さらお義母様に何を言われても気にしないらしい。やっぱり偏屈って強いわ……
レストランの場所は、王宮から馬車で五分くらいのところにある。
売りに出ていた貴族の別邸を豪華なレストランにリノベーションしたものだ。
店の中は広めの個室をたくさん作って、子連れでも利用しやすい店にしてもらった。
メニューがハンバーグやコロッケ、ピザやオムライスなど子供が好きになってくれそうな物が多いから、ぜひ親子で利用してもらいたいと思っている。
今日は義両親と義兄と私の友人たちの他に、同じ派閥の貴族を招待している。更に義両親は、伯爵家以上の高位貴族にも招待状を送ったらしい。ということは、敵対する派閥の仲良くない人たちも来るから、非常に面倒なパーティーになるという予想が出来る。
時間になると招待客が続々とやってくる。
義両親の動きを見ていると、パーティーの主催者って大変だなぁと思う。次から次へと来るゲストに当たり障りなく挨拶するお義父様とお義母様は凄いわ。
それとは別の所では、義兄が自分の友人や同僚らしき人たちに挨拶していて忙しそうだ。令嬢には嫌われている義兄だけど、同性の友人は普通にいるんだよね。
「エリーゼ、ちょっといいか?」
「……はい、お義兄様」
少し離れた所にいる義兄から、急に呼ばれる。
「こちらは、私と同じ部署で働く同僚たちだ」
そこには優等生風の男性が三人いた。
義兄みたいに偏屈ではなさそうだけど、『僕たち頭良いんで』みたいな雰囲気を出している人たち。
「エリーゼ・クリフォードです。
いつも義兄がお世話になっております」
「君がクリフォード卿の大切にしている義妹君か……
全く似てないな」
「よろしく。私達はクリフォード卿と同じ部署で働いている者だ」
「エリーゼ、一言挨拶したからもう戻っていい」
「えっ?」
「みんな、お前を一目見たかっただけだからもう大丈夫だ。
エリーゼの友人の令嬢が来たみたいだから、行っていい」
「あっ! そのようですね。少し行ってきますわ。
皆様、今日は楽しんでいって下さいね。失礼します」
その後、友人の令嬢たちをおもてなししたり、お義母様やお義父様の友人を紹介して頂いたり、お客様たちにレストランのメニューの説明をしたりと、思った以上に忙しい。
ハァー……、ちょっと休憩したいかも。
その時、横から話しかけられる。
「クリフォード公爵令嬢。今日はお招きありがとうございます」
うっ、この声は……
「スタンフィールド侯爵様。今日は来て下さってありがとうございます」
義兄から気を付けろと言われたから、ちょっとだけ気まずいなぁ。でも、今日も素敵だわ。
「色々な料理を頂きましたが、どれも素晴らしかったです。
あのピザというチーズの料理は、うちのサイラスが気に入りそうですので、レストランがオープンしたらぜひサイラスを連れて来たいですね」
「ありがとうございます。とても嬉しいですわ。
ご子息のお土産にピザを用意しておきますので、帰りにぜひお持ち帰り下さい。
食べる時は、料理人にフライパンで温めてもらって下さいね。蓋をして、チーズがとろけるくらいまで温めれば美味しく食べれますから」
「そこまでして頂くわけには行きませんよ」
「邸で侯爵様を待っているご子息に、私からプレゼントしたいのですわ」
「……ありがとう。そのことをサイラスに伝えたら、きっと喜ぶでしょう。
機会があったら、またうちのサイラスに会って下さい」
「ええ。お会い出来る日を楽しみにしておりますわ」
サイラス君は可愛い男の子だったよね。
でも、息子に会って欲しいってどういうこと?
ちょっと警戒してしまうよ……
そして、今日は貴族向けに店のお披露目を兼ねてのレセプションパーティーを開催することになった。
パーティーに行く準備を終えた私が、時間に煩い義兄と一緒に玄関ホールでお義母様たちを待っていた時……
「リーゼ。準備は出来ているかしら?
まあ! 今日のドレスも素敵ね。さすが、ウォーカー商会のドレスだわ!
今日のパーティーではいい出会いがあるかもしれないから、しっかりやるのよ。
オスカーとつるむのは程々にしなさい。良縁が遠のいてしまうから気をつけるのよ」
「えっ? お義母様、それはちょっと……」
お義母様は、このパーティーの準備に力を入れていたので、今日も朝から張り切っている。
しかし偏屈義兄がいる目の前で、はっきりと良縁が遠のくって言わなくても……
義兄は、面倒な貴族を避けるのに最高の盾になってくれるんだから。
「オスカー。貴方もリーゼばかり構ってないで、年頃の御令嬢と仲良くなってきなさいね」
うわー! 出発前に親子喧嘩になりそうな雰囲気だわ。何とかしないと……
「……お義母様、今日は忙しくなるので早めに出発しませんか?
レストランでお客様をお出迎えしなくてはいけませんよね?」
「エリーゼ、母上の言うことは気にするな。
私達は先に出発しよう。母上は父上と二人で来るだろうからな」
義兄は、今さらお義母様に何を言われても気にしないらしい。やっぱり偏屈って強いわ……
レストランの場所は、王宮から馬車で五分くらいのところにある。
売りに出ていた貴族の別邸を豪華なレストランにリノベーションしたものだ。
店の中は広めの個室をたくさん作って、子連れでも利用しやすい店にしてもらった。
メニューがハンバーグやコロッケ、ピザやオムライスなど子供が好きになってくれそうな物が多いから、ぜひ親子で利用してもらいたいと思っている。
今日は義両親と義兄と私の友人たちの他に、同じ派閥の貴族を招待している。更に義両親は、伯爵家以上の高位貴族にも招待状を送ったらしい。ということは、敵対する派閥の仲良くない人たちも来るから、非常に面倒なパーティーになるという予想が出来る。
時間になると招待客が続々とやってくる。
義両親の動きを見ていると、パーティーの主催者って大変だなぁと思う。次から次へと来るゲストに当たり障りなく挨拶するお義父様とお義母様は凄いわ。
それとは別の所では、義兄が自分の友人や同僚らしき人たちに挨拶していて忙しそうだ。令嬢には嫌われている義兄だけど、同性の友人は普通にいるんだよね。
「エリーゼ、ちょっといいか?」
「……はい、お義兄様」
少し離れた所にいる義兄から、急に呼ばれる。
「こちらは、私と同じ部署で働く同僚たちだ」
そこには優等生風の男性が三人いた。
義兄みたいに偏屈ではなさそうだけど、『僕たち頭良いんで』みたいな雰囲気を出している人たち。
「エリーゼ・クリフォードです。
いつも義兄がお世話になっております」
「君がクリフォード卿の大切にしている義妹君か……
全く似てないな」
「よろしく。私達はクリフォード卿と同じ部署で働いている者だ」
「エリーゼ、一言挨拶したからもう戻っていい」
「えっ?」
「みんな、お前を一目見たかっただけだからもう大丈夫だ。
エリーゼの友人の令嬢が来たみたいだから、行っていい」
「あっ! そのようですね。少し行ってきますわ。
皆様、今日は楽しんでいって下さいね。失礼します」
その後、友人の令嬢たちをおもてなししたり、お義母様やお義父様の友人を紹介して頂いたり、お客様たちにレストランのメニューの説明をしたりと、思った以上に忙しい。
ハァー……、ちょっと休憩したいかも。
その時、横から話しかけられる。
「クリフォード公爵令嬢。今日はお招きありがとうございます」
うっ、この声は……
「スタンフィールド侯爵様。今日は来て下さってありがとうございます」
義兄から気を付けろと言われたから、ちょっとだけ気まずいなぁ。でも、今日も素敵だわ。
「色々な料理を頂きましたが、どれも素晴らしかったです。
あのピザというチーズの料理は、うちのサイラスが気に入りそうですので、レストランがオープンしたらぜひサイラスを連れて来たいですね」
「ありがとうございます。とても嬉しいですわ。
ご子息のお土産にピザを用意しておきますので、帰りにぜひお持ち帰り下さい。
食べる時は、料理人にフライパンで温めてもらって下さいね。蓋をして、チーズがとろけるくらいまで温めれば美味しく食べれますから」
「そこまでして頂くわけには行きませんよ」
「邸で侯爵様を待っているご子息に、私からプレゼントしたいのですわ」
「……ありがとう。そのことをサイラスに伝えたら、きっと喜ぶでしょう。
機会があったら、またうちのサイラスに会って下さい」
「ええ。お会い出来る日を楽しみにしておりますわ」
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