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ただ一人の王女
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サンドイッチは好きかと聞かれたティーナは満面の笑みを見せる。
「サンドイッチは大好きですわ。でも、私はお姉様の作った物は全部好きなのよ!
お姉様はね、ハンバーグもクッキーもケーキも、何でも美味しく作れるの!」
ティーナが、お姉様の作った物は全部好きって言ってくれている。
恥ずかしいけど嬉しいな。ティーナはなんていい子なの。
神様、ティーナに出逢わせてくれてありがとう……。
まだ赤ちゃんだったティーナを勢いで引き取り、ギャン泣きやイヤイヤ期など大変な時は沢山あったよ。
『お母さんに会いたい。』『お父さんはいないの?』とか言われて落ち込んだこともあった。
でも宿屋の女将さんや旦那さんたちが助けてくれたし、毎日必死にやってきて、こんなに可愛く育ってくれて良かった……
一人で密かにジーンとしていると、スタンフィールド侯爵様はティーナに優しく微笑んでいる。
「私も息子もサンドイッチが好きなんです。王女殿下と一緒ですね。
機会があれば、王女殿下の大好きなクリフォード公爵令嬢の作った料理も食べてみたいです。」
「お姉様のお料理は美味しいから、きっと侯爵様も気にいると思うわ。」
ニコニコして話をするティーナだったが……
「王女殿下、そろそろお時間でございます。」
護衛騎士から声を掛けられ、ハッとしている。
「お父様とお母様が待っているから、そろそろ帰らないといけないわ!」
「王女殿下、今日は店に来て下さってありがとうございました。またいらして下さいね。
気を付けて。」
「ええ。お姉様、侯爵様、また会いましょうね!」
ティーナは元気に手を振って帰って行った。
「王女殿下は、噂通りとても可愛らしい方ですね。」
「ええ。とても可愛くって、お優しい方なのです。」
「クリフォード公爵令嬢は王女殿下に対して、家族に向けるような慈愛のこもった目で見つめるのですね。」
「……え? そうでしょうか?」
「クリフォード公爵令嬢は子供が好きなのがよく伝わりました。私の息子に対しても、温かい目で話しかけてくれましたから。
妻に先立たれた私の後妻の座を狙って、息子に取り入ろうとする令嬢をたくさん見てきましたので、そういった欲を持つ女性は、見ればすぐ分かるのです。
しかし貴女は、そういったものを全く感じませんでした。
王女殿下もそれが分かるから、貴女をあそこまで慕っているのでしょうね。
あ……、喋りすぎました。申し訳ない。」
ティーナとは家族だったから、自然にそんな目で見てしまっていると思う。
だけど、スタンフィールド侯爵様ってよく見ているのね。穏やかそうに見えて、結構、鋭い性格をしているのかもしれない。
それに……、やっぱり侯爵様はモテるのね。カッコよくて人あたりがいいから納得だわ。
「いえ。気にしていませんわ。
ところで今日は、何にいたしましょうか?」
「サイラスは前に買ったクリームの入ったサンドイッチを気に入ったようでして、同じものを頂けますか?
卵の入ったサンドイッチも美味しかったので、それも一つ下さい。」
「畏まりました。少々お待ち下さいませ。」
後日、店長からの報告によると、侯爵様は私の店のお得意様になってくれて、よく店に買いに来てくれているらしい。
侯爵様一人で来ることが多いが、息子さんと一緒に来ることもあるという。
仲の良い美形の親子として、店の従業員たちから人気だと聞いている。
……確かに素敵な親子だと思う。我が子を可愛がる子煩悩なパパだから、好感度も高くなるよね。
ある日の休日、義兄と食事に出かけることになった私は、二人で馬車に乗っていた。
「エリーゼ。昨日、王女殿下にお会いした時に話を聞いたのだが、お前の店に王女殿下が来て下さった時に、スタンフィールド侯爵に会ったらしいな。」
「ええ……。スタンフィールド侯爵様は店の常連らしく、よく来て下さっているようですわ。」
「気を付けろ!」
はい? この偏屈は真顔で何を言っているの?
「スタンフィールド侯爵様に気を付けろというのですか?」
「そうだ。穏やかで悪い人物ではないが、何を考えているか分からないから注意しろ。
侯爵の子息は王女殿下と年が近いから、エリーゼを利用して王女殿下に近付こうとしている可能性もある。
今の王家で、王女はクリスティーナ王女殿下ただ一人……
王女殿下と年齢が近い子息を持つ貴族たちは確実に王女殿下を狙うだろう。
王女殿下がクリフォード公爵家にべったりなのは皆が知ることだ。エリーゼを利用しようと考えている者がいてもおかしくない。」
ショックだけど、正論だわー!
「お義兄様、ありがとうございます。私の注意不足でしたわ。
やはり、私の夜会のエスコートはお義兄様にしていただくのが一番です。
またよろしくお願いいたします。」
「……分かればいい。」
偏屈で面倒な性格の義兄だけど、正論しか言わないし真面目で正直な人だから、この人だけは信用出来るんだよね。
スタンフィールド侯爵様、素敵だったのになぁ。
ショックだわ……
「サンドイッチは大好きですわ。でも、私はお姉様の作った物は全部好きなのよ!
お姉様はね、ハンバーグもクッキーもケーキも、何でも美味しく作れるの!」
ティーナが、お姉様の作った物は全部好きって言ってくれている。
恥ずかしいけど嬉しいな。ティーナはなんていい子なの。
神様、ティーナに出逢わせてくれてありがとう……。
まだ赤ちゃんだったティーナを勢いで引き取り、ギャン泣きやイヤイヤ期など大変な時は沢山あったよ。
『お母さんに会いたい。』『お父さんはいないの?』とか言われて落ち込んだこともあった。
でも宿屋の女将さんや旦那さんたちが助けてくれたし、毎日必死にやってきて、こんなに可愛く育ってくれて良かった……
一人で密かにジーンとしていると、スタンフィールド侯爵様はティーナに優しく微笑んでいる。
「私も息子もサンドイッチが好きなんです。王女殿下と一緒ですね。
機会があれば、王女殿下の大好きなクリフォード公爵令嬢の作った料理も食べてみたいです。」
「お姉様のお料理は美味しいから、きっと侯爵様も気にいると思うわ。」
ニコニコして話をするティーナだったが……
「王女殿下、そろそろお時間でございます。」
護衛騎士から声を掛けられ、ハッとしている。
「お父様とお母様が待っているから、そろそろ帰らないといけないわ!」
「王女殿下、今日は店に来て下さってありがとうございました。またいらして下さいね。
気を付けて。」
「ええ。お姉様、侯爵様、また会いましょうね!」
ティーナは元気に手を振って帰って行った。
「王女殿下は、噂通りとても可愛らしい方ですね。」
「ええ。とても可愛くって、お優しい方なのです。」
「クリフォード公爵令嬢は王女殿下に対して、家族に向けるような慈愛のこもった目で見つめるのですね。」
「……え? そうでしょうか?」
「クリフォード公爵令嬢は子供が好きなのがよく伝わりました。私の息子に対しても、温かい目で話しかけてくれましたから。
妻に先立たれた私の後妻の座を狙って、息子に取り入ろうとする令嬢をたくさん見てきましたので、そういった欲を持つ女性は、見ればすぐ分かるのです。
しかし貴女は、そういったものを全く感じませんでした。
王女殿下もそれが分かるから、貴女をあそこまで慕っているのでしょうね。
あ……、喋りすぎました。申し訳ない。」
ティーナとは家族だったから、自然にそんな目で見てしまっていると思う。
だけど、スタンフィールド侯爵様ってよく見ているのね。穏やかそうに見えて、結構、鋭い性格をしているのかもしれない。
それに……、やっぱり侯爵様はモテるのね。カッコよくて人あたりがいいから納得だわ。
「いえ。気にしていませんわ。
ところで今日は、何にいたしましょうか?」
「サイラスは前に買ったクリームの入ったサンドイッチを気に入ったようでして、同じものを頂けますか?
卵の入ったサンドイッチも美味しかったので、それも一つ下さい。」
「畏まりました。少々お待ち下さいませ。」
後日、店長からの報告によると、侯爵様は私の店のお得意様になってくれて、よく店に買いに来てくれているらしい。
侯爵様一人で来ることが多いが、息子さんと一緒に来ることもあるという。
仲の良い美形の親子として、店の従業員たちから人気だと聞いている。
……確かに素敵な親子だと思う。我が子を可愛がる子煩悩なパパだから、好感度も高くなるよね。
ある日の休日、義兄と食事に出かけることになった私は、二人で馬車に乗っていた。
「エリーゼ。昨日、王女殿下にお会いした時に話を聞いたのだが、お前の店に王女殿下が来て下さった時に、スタンフィールド侯爵に会ったらしいな。」
「ええ……。スタンフィールド侯爵様は店の常連らしく、よく来て下さっているようですわ。」
「気を付けろ!」
はい? この偏屈は真顔で何を言っているの?
「スタンフィールド侯爵様に気を付けろというのですか?」
「そうだ。穏やかで悪い人物ではないが、何を考えているか分からないから注意しろ。
侯爵の子息は王女殿下と年が近いから、エリーゼを利用して王女殿下に近付こうとしている可能性もある。
今の王家で、王女はクリスティーナ王女殿下ただ一人……
王女殿下と年齢が近い子息を持つ貴族たちは確実に王女殿下を狙うだろう。
王女殿下がクリフォード公爵家にべったりなのは皆が知ることだ。エリーゼを利用しようと考えている者がいてもおかしくない。」
ショックだけど、正論だわー!
「お義兄様、ありがとうございます。私の注意不足でしたわ。
やはり、私の夜会のエスコートはお義兄様にしていただくのが一番です。
またよろしくお願いいたします。」
「……分かればいい。」
偏屈で面倒な性格の義兄だけど、正論しか言わないし真面目で正直な人だから、この人だけは信用出来るんだよね。
スタンフィールド侯爵様、素敵だったのになぁ。
ショックだわ……
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