87 / 106
連載
お得意様
しおりを挟む
ティーナからの手紙に、『またサンドイッチを買いにお店に行くね』と書いてあったので、いつ来てもいいように、数日間はお店に出ることに決めた。
久しぶりに店に出ると、従業員たちの動きが良くなっていて成長のようなものを感じる。
常連のお客様もたくさんいるみたいだし、みんなの頑張りのおかげだから、これはボーナスでも支給しようかしら?
頑張る従業員たちを微笑ましく見ていると、声を掛けられる。
「クリフォード公爵令嬢!」
「まあ、侯爵様。いらっしゃいませ。」
そこには可愛い男の子を連れたスタンフィールド侯爵様がいた。
そう言えば、息子さんがサンドイッチが好きだからお店に来たいと言ってくれていたんだった。
本当に来てくれたのね。それにしても……、素敵な親子だわ。
スタンフィールド侯爵様は、夜会の時とは違って、落ち着いた服装をしていているんだけど、前世でいうスーツの似合う男風で、カッコいいから目を引くの。
お店に来ている女の子のお客様や従業員たちも目を奪われている……
そして手を繋いで一緒にいる息子さんも、パパに似ていて、間違いなく将来はカッコよくなるだろうなぁっていう容姿だった。
前世で子持ち主婦だった私としては、亡くなった奥様を思うと胸が苦しくなる。
素敵な旦那様と可愛い息子さんとは、ずっと一緒にいたかったに違いない……
「クリフォード公爵令嬢。私の息子のサイラスです。」
「サイラス・スタンフィールドです!
どうぞよろしくお願いします。」
元気に挨拶してくれる姿は、まさに男の子って感じ。
「エリーゼ・クリフォードです。どうぞよろしくお願い致します。」
可愛い子に弱い私は笑顔で挨拶をする。
「……!」
あら、恥ずかしがる姿もまた可愛い。
「クリフォード嬢。会えて嬉しいです。
今日は時間が取れたので息子と一緒に買い物に来てみたのですが、サンドイッチの種類がたくさんあって迷ってしまいますね。
店のお勧めはありますか?」
「当店で人気なのは、ゆで卵の入った卵サンドですね。
お子様にはフルーツとクリームをたっぷり挟んだサンドイッチもお勧めですわ。」
「じゃあ、それを一つずつ下さい。」
「ありがとうございます。少々お待ち下さいませ。」
私と侯爵様のやり取りをジーッと見つめる息子さんが、また可愛い。
「お待たせ致しました。今日は初めていらして下さったお礼に、こちらをプレゼントさせて下さい。」
「それはいけませんよ。代金を払わせて下さい。」
「この前の夜会でお世話になったお礼でもあるのです。あの時、助けて下さったことに感謝しておりますわ。
またいらして下さいね。」
「この前のことは気にしなくていいのですが。
……ありがとう。またこの店を利用させてもらいますね。」
おおー、素敵なスマイルを頂きましたよ!
その三日後、そろそろティーナがお忍びで来るだろうと思った私はまた店頭で接客をして待っていた。
すると、見たことのある護衛騎士たち数人と歩いて来る天使の姿が見える。
ティーナは今日もシンプルなワンピースを着ていて、あまり目立たないようにしているようだけど、綺麗な容姿と高貴な雰囲気は隠し切れていなかった。
私が店にいることに気づいたティーナは、笑顔で手を振ってくれる。
ああ……、私の癒しだわ。
「お姉様、ご機嫌よう。
今日はね、お父様とお母様とおじ様と私の分のサンドイッチを下さい。」
……え? この国で最も偉い人たちの分も買っていくの?
「いらっしゃいませ。ご来店ありがとうございます。
お待ちしておりましたわ。
えっと……、陛下と王妃殿下と王弟殿下の分もですか?」
他のお客様がいるので、声を大きくして〝陛下〟とか〝王妃殿下〟とは言えない。ヒソヒソ声でティーナの隣にいた偉そうな護衛騎士に確認すると……
「この前、王女殿下が買って帰ったサンドイッチに興味を持たれたようでして……
こちらのサンドイッチは王宮で働く者たちからも人気ですから。」
「……ありがとうございますとお伝え下さい。
念のため、必ず毒味はして下さいね。」
「ええ。そのように伝えさせて頂きます。
それと前回ですが、私達護衛にまでサンドイッチをプレゼントして下さってありがとうございました。
ここだけの話、王弟殿下にはチクチク言われましたが、騎士達はみんな喜んでいました。」
あの腹黒、ティーナの大切な護衛騎士に何を言ったのかしら。
「……チクチク?」
「本当は王女殿下と一緒に店に来たかったらしいのですが、執務が忙しくて来れなかったのです。」
「はぁー……。では王弟殿下には、私からフルーツサンドをプレゼントいたしますわ。よろしくお伝え下さい。」
「本当ですか? きっとお喜びになりますよ。
ありがとうございます。」
護衛騎士とヒソヒソ話をしていると、
「お姉様、今日は私はフルーツサンドが食べたいわ。
お父様たちはハンバーグサンドと卵サンドが食べたいって言ってたわよ。」
「ふふっ! ありがとうございます。
今から準備しますので、少々お待ち下さいませ。」
ティーナが自分で持つサンドイッチと王弟殿下にプレゼントするサンドイッチは、別々の袋に入れてあげようか……
久しぶりに店に出ると、従業員たちの動きが良くなっていて成長のようなものを感じる。
常連のお客様もたくさんいるみたいだし、みんなの頑張りのおかげだから、これはボーナスでも支給しようかしら?
頑張る従業員たちを微笑ましく見ていると、声を掛けられる。
「クリフォード公爵令嬢!」
「まあ、侯爵様。いらっしゃいませ。」
そこには可愛い男の子を連れたスタンフィールド侯爵様がいた。
そう言えば、息子さんがサンドイッチが好きだからお店に来たいと言ってくれていたんだった。
本当に来てくれたのね。それにしても……、素敵な親子だわ。
スタンフィールド侯爵様は、夜会の時とは違って、落ち着いた服装をしていているんだけど、前世でいうスーツの似合う男風で、カッコいいから目を引くの。
お店に来ている女の子のお客様や従業員たちも目を奪われている……
そして手を繋いで一緒にいる息子さんも、パパに似ていて、間違いなく将来はカッコよくなるだろうなぁっていう容姿だった。
前世で子持ち主婦だった私としては、亡くなった奥様を思うと胸が苦しくなる。
素敵な旦那様と可愛い息子さんとは、ずっと一緒にいたかったに違いない……
「クリフォード公爵令嬢。私の息子のサイラスです。」
「サイラス・スタンフィールドです!
どうぞよろしくお願いします。」
元気に挨拶してくれる姿は、まさに男の子って感じ。
「エリーゼ・クリフォードです。どうぞよろしくお願い致します。」
可愛い子に弱い私は笑顔で挨拶をする。
「……!」
あら、恥ずかしがる姿もまた可愛い。
「クリフォード嬢。会えて嬉しいです。
今日は時間が取れたので息子と一緒に買い物に来てみたのですが、サンドイッチの種類がたくさんあって迷ってしまいますね。
店のお勧めはありますか?」
「当店で人気なのは、ゆで卵の入った卵サンドですね。
お子様にはフルーツとクリームをたっぷり挟んだサンドイッチもお勧めですわ。」
「じゃあ、それを一つずつ下さい。」
「ありがとうございます。少々お待ち下さいませ。」
私と侯爵様のやり取りをジーッと見つめる息子さんが、また可愛い。
「お待たせ致しました。今日は初めていらして下さったお礼に、こちらをプレゼントさせて下さい。」
「それはいけませんよ。代金を払わせて下さい。」
「この前の夜会でお世話になったお礼でもあるのです。あの時、助けて下さったことに感謝しておりますわ。
またいらして下さいね。」
「この前のことは気にしなくていいのですが。
……ありがとう。またこの店を利用させてもらいますね。」
おおー、素敵なスマイルを頂きましたよ!
その三日後、そろそろティーナがお忍びで来るだろうと思った私はまた店頭で接客をして待っていた。
すると、見たことのある護衛騎士たち数人と歩いて来る天使の姿が見える。
ティーナは今日もシンプルなワンピースを着ていて、あまり目立たないようにしているようだけど、綺麗な容姿と高貴な雰囲気は隠し切れていなかった。
私が店にいることに気づいたティーナは、笑顔で手を振ってくれる。
ああ……、私の癒しだわ。
「お姉様、ご機嫌よう。
今日はね、お父様とお母様とおじ様と私の分のサンドイッチを下さい。」
……え? この国で最も偉い人たちの分も買っていくの?
「いらっしゃいませ。ご来店ありがとうございます。
お待ちしておりましたわ。
えっと……、陛下と王妃殿下と王弟殿下の分もですか?」
他のお客様がいるので、声を大きくして〝陛下〟とか〝王妃殿下〟とは言えない。ヒソヒソ声でティーナの隣にいた偉そうな護衛騎士に確認すると……
「この前、王女殿下が買って帰ったサンドイッチに興味を持たれたようでして……
こちらのサンドイッチは王宮で働く者たちからも人気ですから。」
「……ありがとうございますとお伝え下さい。
念のため、必ず毒味はして下さいね。」
「ええ。そのように伝えさせて頂きます。
それと前回ですが、私達護衛にまでサンドイッチをプレゼントして下さってありがとうございました。
ここだけの話、王弟殿下にはチクチク言われましたが、騎士達はみんな喜んでいました。」
あの腹黒、ティーナの大切な護衛騎士に何を言ったのかしら。
「……チクチク?」
「本当は王女殿下と一緒に店に来たかったらしいのですが、執務が忙しくて来れなかったのです。」
「はぁー……。では王弟殿下には、私からフルーツサンドをプレゼントいたしますわ。よろしくお伝え下さい。」
「本当ですか? きっとお喜びになりますよ。
ありがとうございます。」
護衛騎士とヒソヒソ話をしていると、
「お姉様、今日は私はフルーツサンドが食べたいわ。
お父様たちはハンバーグサンドと卵サンドが食べたいって言ってたわよ。」
「ふふっ! ありがとうございます。
今から準備しますので、少々お待ち下さいませ。」
ティーナが自分で持つサンドイッチと王弟殿下にプレゼントするサンドイッチは、別々の袋に入れてあげようか……
31
お気に入りに追加
9,779
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
結婚したら、愛する夫が前世の憎い婚約者だったことに気付いてしまいました
せいめ
恋愛
伯爵家の私生児として冷遇されて育ったアリシアは、行儀見習いがきっかけで年の差17歳の公爵と出会って結婚。
夫の公爵は家族からの愛を知らずに育ったアリシアを溺愛し、結婚生活は幸せだった。
ところが、幸せを僻んだ姉に階段から突き落とされ、頭を強く打ったことで前世の記憶を思い出してしまう。
前世のアリシアは、アリスという侯爵令嬢で家族から愛されていた。
しかし婚約者の公爵令息とは冷めきった関係で、婚約解消したいと望んでいたが、不慮の事故によりあっさり死んでしまう残念な人生だった。
意識を失っていたアリシアが目覚めると、そこには今世の最愛の夫がいた。
その顔を見たアリシアは……
逃げ出したいアリシアと彼女を絶対に離さない公爵の話。
誤字脱字申し訳ありません。
ご都合主義です。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
幼女に転生したらイケメン冒険者パーティーに保護&溺愛されています
ひなた
ファンタジー
死んだと思ったら
目の前に神様がいて、
剣と魔法のファンタジー異世界に転生することに!
魔法のチート能力をもらったものの、
いざ転生したら10歳の幼女だし、草原にぼっちだし、いきなり魔物でるし、
魔力はあって魔法適正もあるのに肝心の使い方はわからないし で転生早々大ピンチ!
そんなピンチを救ってくれたのは
イケメン冒険者3人組。
その3人に保護されつつパーティーメンバーとして冒険者登録することに!
日々の疲労の癒しとしてイケメン3人に可愛いがられる毎日が、始まりました。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。