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お得意様
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ティーナからの手紙に、『またサンドイッチを買いにお店に行くね』と書いてあったので、いつ来てもいいように、数日間はお店に出ることに決めた。
久しぶりに店に出ると、従業員たちの動きが良くなっていて成長のようなものを感じる。
常連のお客様もたくさんいるみたいだし、みんなの頑張りのおかげだから、これはボーナスでも支給しようかしら?
頑張る従業員たちを微笑ましく見ていると、声を掛けられる。
「クリフォード公爵令嬢!」
「まあ、侯爵様。いらっしゃいませ。」
そこには可愛い男の子を連れたスタンフィールド侯爵様がいた。
そう言えば、息子さんがサンドイッチが好きだからお店に来たいと言ってくれていたんだった。
本当に来てくれたのね。それにしても……、素敵な親子だわ。
スタンフィールド侯爵様は、夜会の時とは違って、落ち着いた服装をしていているんだけど、前世でいうスーツの似合う男風で、カッコいいから目を引くの。
お店に来ている女の子のお客様や従業員たちも目を奪われている……
そして手を繋いで一緒にいる息子さんも、パパに似ていて、間違いなく将来はカッコよくなるだろうなぁっていう容姿だった。
前世で子持ち主婦だった私としては、亡くなった奥様を思うと胸が苦しくなる。
素敵な旦那様と可愛い息子さんとは、ずっと一緒にいたかったに違いない……
「クリフォード公爵令嬢。私の息子のサイラスです。」
「サイラス・スタンフィールドです!
どうぞよろしくお願いします。」
元気に挨拶してくれる姿は、まさに男の子って感じ。
「エリーゼ・クリフォードです。どうぞよろしくお願い致します。」
可愛い子に弱い私は笑顔で挨拶をする。
「……!」
あら、恥ずかしがる姿もまた可愛い。
「クリフォード嬢。会えて嬉しいです。
今日は時間が取れたので息子と一緒に買い物に来てみたのですが、サンドイッチの種類がたくさんあって迷ってしまいますね。
店のお勧めはありますか?」
「当店で人気なのは、ゆで卵の入った卵サンドですね。
お子様にはフルーツとクリームをたっぷり挟んだサンドイッチもお勧めですわ。」
「じゃあ、それを一つずつ下さい。」
「ありがとうございます。少々お待ち下さいませ。」
私と侯爵様のやり取りをジーッと見つめる息子さんが、また可愛い。
「お待たせ致しました。今日は初めていらして下さったお礼に、こちらをプレゼントさせて下さい。」
「それはいけませんよ。代金を払わせて下さい。」
「この前の夜会でお世話になったお礼でもあるのです。あの時、助けて下さったことに感謝しておりますわ。
またいらして下さいね。」
「この前のことは気にしなくていいのですが。
……ありがとう。またこの店を利用させてもらいますね。」
おおー、素敵なスマイルを頂きましたよ!
その三日後、そろそろティーナがお忍びで来るだろうと思った私はまた店頭で接客をして待っていた。
すると、見たことのある護衛騎士たち数人と歩いて来る天使の姿が見える。
ティーナは今日もシンプルなワンピースを着ていて、あまり目立たないようにしているようだけど、綺麗な容姿と高貴な雰囲気は隠し切れていなかった。
私が店にいることに気づいたティーナは、笑顔で手を振ってくれる。
ああ……、私の癒しだわ。
「お姉様、ご機嫌よう。
今日はね、お父様とお母様とおじ様と私の分のサンドイッチを下さい。」
……え? この国で最も偉い人たちの分も買っていくの?
「いらっしゃいませ。ご来店ありがとうございます。
お待ちしておりましたわ。
えっと……、陛下と王妃殿下と王弟殿下の分もですか?」
他のお客様がいるので、声を大きくして〝陛下〟とか〝王妃殿下〟とは言えない。ヒソヒソ声でティーナの隣にいた偉そうな護衛騎士に確認すると……
「この前、王女殿下が買って帰ったサンドイッチに興味を持たれたようでして……
こちらのサンドイッチは王宮で働く者たちからも人気ですから。」
「……ありがとうございますとお伝え下さい。
念のため、必ず毒味はして下さいね。」
「ええ。そのように伝えさせて頂きます。
それと前回ですが、私達護衛にまでサンドイッチをプレゼントして下さってありがとうございました。
ここだけの話、王弟殿下にはチクチク言われましたが、騎士達はみんな喜んでいました。」
あの腹黒、ティーナの大切な護衛騎士に何を言ったのかしら。
「……チクチク?」
「本当は王女殿下と一緒に店に来たかったらしいのですが、執務が忙しくて来れなかったのです。」
「はぁー……。では王弟殿下には、私からフルーツサンドをプレゼントいたしますわ。よろしくお伝え下さい。」
「本当ですか? きっとお喜びになりますよ。
ありがとうございます。」
護衛騎士とヒソヒソ話をしていると、
「お姉様、今日は私はフルーツサンドが食べたいわ。
お父様たちはハンバーグサンドと卵サンドが食べたいって言ってたわよ。」
「ふふっ! ありがとうございます。
今から準備しますので、少々お待ち下さいませ。」
ティーナが自分で持つサンドイッチと王弟殿下にプレゼントするサンドイッチは、別々の袋に入れてあげようか……
久しぶりに店に出ると、従業員たちの動きが良くなっていて成長のようなものを感じる。
常連のお客様もたくさんいるみたいだし、みんなの頑張りのおかげだから、これはボーナスでも支給しようかしら?
頑張る従業員たちを微笑ましく見ていると、声を掛けられる。
「クリフォード公爵令嬢!」
「まあ、侯爵様。いらっしゃいませ。」
そこには可愛い男の子を連れたスタンフィールド侯爵様がいた。
そう言えば、息子さんがサンドイッチが好きだからお店に来たいと言ってくれていたんだった。
本当に来てくれたのね。それにしても……、素敵な親子だわ。
スタンフィールド侯爵様は、夜会の時とは違って、落ち着いた服装をしていているんだけど、前世でいうスーツの似合う男風で、カッコいいから目を引くの。
お店に来ている女の子のお客様や従業員たちも目を奪われている……
そして手を繋いで一緒にいる息子さんも、パパに似ていて、間違いなく将来はカッコよくなるだろうなぁっていう容姿だった。
前世で子持ち主婦だった私としては、亡くなった奥様を思うと胸が苦しくなる。
素敵な旦那様と可愛い息子さんとは、ずっと一緒にいたかったに違いない……
「クリフォード公爵令嬢。私の息子のサイラスです。」
「サイラス・スタンフィールドです!
どうぞよろしくお願いします。」
元気に挨拶してくれる姿は、まさに男の子って感じ。
「エリーゼ・クリフォードです。どうぞよろしくお願い致します。」
可愛い子に弱い私は笑顔で挨拶をする。
「……!」
あら、恥ずかしがる姿もまた可愛い。
「クリフォード嬢。会えて嬉しいです。
今日は時間が取れたので息子と一緒に買い物に来てみたのですが、サンドイッチの種類がたくさんあって迷ってしまいますね。
店のお勧めはありますか?」
「当店で人気なのは、ゆで卵の入った卵サンドですね。
お子様にはフルーツとクリームをたっぷり挟んだサンドイッチもお勧めですわ。」
「じゃあ、それを一つずつ下さい。」
「ありがとうございます。少々お待ち下さいませ。」
私と侯爵様のやり取りをジーッと見つめる息子さんが、また可愛い。
「お待たせ致しました。今日は初めていらして下さったお礼に、こちらをプレゼントさせて下さい。」
「それはいけませんよ。代金を払わせて下さい。」
「この前の夜会でお世話になったお礼でもあるのです。あの時、助けて下さったことに感謝しておりますわ。
またいらして下さいね。」
「この前のことは気にしなくていいのですが。
……ありがとう。またこの店を利用させてもらいますね。」
おおー、素敵なスマイルを頂きましたよ!
その三日後、そろそろティーナがお忍びで来るだろうと思った私はまた店頭で接客をして待っていた。
すると、見たことのある護衛騎士たち数人と歩いて来る天使の姿が見える。
ティーナは今日もシンプルなワンピースを着ていて、あまり目立たないようにしているようだけど、綺麗な容姿と高貴な雰囲気は隠し切れていなかった。
私が店にいることに気づいたティーナは、笑顔で手を振ってくれる。
ああ……、私の癒しだわ。
「お姉様、ご機嫌よう。
今日はね、お父様とお母様とおじ様と私の分のサンドイッチを下さい。」
……え? この国で最も偉い人たちの分も買っていくの?
「いらっしゃいませ。ご来店ありがとうございます。
お待ちしておりましたわ。
えっと……、陛下と王妃殿下と王弟殿下の分もですか?」
他のお客様がいるので、声を大きくして〝陛下〟とか〝王妃殿下〟とは言えない。ヒソヒソ声でティーナの隣にいた偉そうな護衛騎士に確認すると……
「この前、王女殿下が買って帰ったサンドイッチに興味を持たれたようでして……
こちらのサンドイッチは王宮で働く者たちからも人気ですから。」
「……ありがとうございますとお伝え下さい。
念のため、必ず毒味はして下さいね。」
「ええ。そのように伝えさせて頂きます。
それと前回ですが、私達護衛にまでサンドイッチをプレゼントして下さってありがとうございました。
ここだけの話、王弟殿下にはチクチク言われましたが、騎士達はみんな喜んでいました。」
あの腹黒、ティーナの大切な護衛騎士に何を言ったのかしら。
「……チクチク?」
「本当は王女殿下と一緒に店に来たかったらしいのですが、執務が忙しくて来れなかったのです。」
「はぁー……。では王弟殿下には、私からフルーツサンドをプレゼントいたしますわ。よろしくお伝え下さい。」
「本当ですか? きっとお喜びになりますよ。
ありがとうございます。」
護衛騎士とヒソヒソ話をしていると、
「お姉様、今日は私はフルーツサンドが食べたいわ。
お父様たちはハンバーグサンドと卵サンドが食べたいって言ってたわよ。」
「ふふっ! ありがとうございます。
今から準備しますので、少々お待ち下さいませ。」
ティーナが自分で持つサンドイッチと王弟殿下にプレゼントするサンドイッチは、別々の袋に入れてあげようか……
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