86 / 106
連載
ダンス
しおりを挟む
最近は偏屈義兄としかダンスを踊っていなかったので、ローランドとのダンスはとても新鮮な気持ちになれた。
「クリフォード嬢とこうやってダンスが出来ることを嬉しく思っている。
あの女のせいで君が怪我をしたと聞いた時は、目の前が真っ暗になった。
怪我で療養が長引くにつれ、君にずっと会えないのではと不安になったが、元気になって戻って来てくれて本当に嬉しかった。」
私がグーム国でそれなりに楽しく生活していた時に、何も知らないローランドはここまで心配してくれていたんだね。
優しいローランドにジーンときてしまった……
「オルダー伯爵様、ご心配をお掛けして申し訳ありませんでした。
私もこうやって伯爵様と一緒にダンスを踊れるようになれて幸せです。
これからもどうぞよろしくお願い致します。」
「私も幸せだ。これからもよろしく。」
和やかな雰囲気で会話をしていると、あっという間に曲が終わる。
これは偏屈義兄とのダンスではあり得ないことだと思う。
ダンスを踊り終え、ホールの中央から壁側に移動した瞬間……
「オルダー伯爵様、次は私と踊って頂けませんか?」
可愛い令嬢が頬を赤くして、ローランドをダンスに誘っている。
「申し訳ない。私はこの後は……」
「伯爵様。私は近くで待っておりますから、御令嬢とぜひダンスを踊ってあげて下さいませ。」
令嬢が必死になってダンスに誘う姿がいじらしくて、中身がおばちゃんの私は応援したくなってしまった。
私、可愛い子に弱いのだと思う。
「せっかく君のパートナーできているのだから、もっと二人で話がしたかったのだが……
では一曲だけ踊ったらすぐに戻ってくるから、待っててくれないか?」
「はい。待ってますから大丈夫ですわ。」
「すまない……」
「オルダー伯爵様、クリフォード公爵令嬢、ありがとうございます!」
この令嬢は、本当に嬉しそうに微笑むんだね。
可愛いなぁ……
二人の後ろ姿を見ていると、横から声を掛けられる。
「クリフォード公爵令嬢。私と踊って頂けませんか?」
よく知らない令息だったから断ると、また違う令息に声を掛けられる。
断っても断っても、よく分からない令息からダンスに誘われて、断ることすら面倒になっていた。
偏屈義兄がいないと、財産狙いのような令息たちがこうやって近付いてくるのね……
「クリフォード公爵令嬢。良かったら、私とのダンスに付き合ってくれませんか?」
声の主はスタンフィールド侯爵様だった。
この人なら落ち着いているし、ダンスを踊るくらいはいいかなぁ。ここにただ立っていると、また知らない令息に話しかけられて面倒だし。
「スタンフィールド侯爵様、よろしくお願い致します。」
侯爵様のエスコートはさすがだった。年上らしく令嬢の扱いに慣れているのが分かるし、所作も綺麗。そしてダンスもお上手だった。
これはさぞやモテるだろうなぁ……
若い令息にありがちなガツガツした感じがなくて、大人の余裕みたいなものがあるし、一緒にいても苦痛にならない。
若い令嬢たちはローランドや王弟殿下を狙う人が多いけど、スタンフィールド侯爵様はそれより少し年上の若い夫人たちからモテるタイプだと思う。
「令息たちはクリフォード公爵令嬢にお近づきになりたくて、みんな貴女を見つめていますね。」
「私個人と仲良くなりたいのではなく、クリフォード公爵家と仲良くなりたいのでしょうね。
困りましたわ……」
「そんなことはないかと。
ただ、さっきの様子を見ると私とのダンスが終わったら、また色々な令息が貴女に近づいてくるでしょう。
オルダー伯爵が戻るまで私が側にいることを許していただけませんか?」
気遣いのできる人なのね。
「ありがとうございます。お気遣いに感謝いたしますわ。」
侯爵様とのダンスが終わると、予想通りにまた令息たちからダンスのお誘いを受ける。
しつこくされて、私の顔は引きつっていたと思う。でもそんな時、侯爵様がさり気なく助けてくれたから良かった。
「クリフォード嬢。待たせてしまって申し訳なかった。」
侯爵様と話をしている時に、やっとローランドが戻ってきてくれた。
始めにダンスに誘ってきた令嬢と踊り終えた後に、強引な令嬢数人に捕まっていたようだった。
モテる男の試練みたいなものだね。
「いえ。スタンフィールド侯爵様が私にお付き合いしてくださったので、大丈夫でしたわ。」
「クリフォード公爵令嬢。貴女のパートナーが戻られたので、私はこれで失礼します。
今日は貴女とご一緒できたことに感謝します。
それではまた。」
うーん……。やっぱり大人だなぁ。
「侯爵様、素敵な時間をありがとうございました。
ご機嫌よう。」
その後、ローランドとゆっくり話をしようかと思っても、ローランドを狙う令嬢やクリフォード公爵家と仲良くなりたい令息が来たりして、夜会の会場で二人きりでじっくり話すことは出来なかった。
ローランドには何の不満もないけど、義兄のありがたみを痛感した夜会だった。
「クリフォード嬢とこうやってダンスが出来ることを嬉しく思っている。
あの女のせいで君が怪我をしたと聞いた時は、目の前が真っ暗になった。
怪我で療養が長引くにつれ、君にずっと会えないのではと不安になったが、元気になって戻って来てくれて本当に嬉しかった。」
私がグーム国でそれなりに楽しく生活していた時に、何も知らないローランドはここまで心配してくれていたんだね。
優しいローランドにジーンときてしまった……
「オルダー伯爵様、ご心配をお掛けして申し訳ありませんでした。
私もこうやって伯爵様と一緒にダンスを踊れるようになれて幸せです。
これからもどうぞよろしくお願い致します。」
「私も幸せだ。これからもよろしく。」
和やかな雰囲気で会話をしていると、あっという間に曲が終わる。
これは偏屈義兄とのダンスではあり得ないことだと思う。
ダンスを踊り終え、ホールの中央から壁側に移動した瞬間……
「オルダー伯爵様、次は私と踊って頂けませんか?」
可愛い令嬢が頬を赤くして、ローランドをダンスに誘っている。
「申し訳ない。私はこの後は……」
「伯爵様。私は近くで待っておりますから、御令嬢とぜひダンスを踊ってあげて下さいませ。」
令嬢が必死になってダンスに誘う姿がいじらしくて、中身がおばちゃんの私は応援したくなってしまった。
私、可愛い子に弱いのだと思う。
「せっかく君のパートナーできているのだから、もっと二人で話がしたかったのだが……
では一曲だけ踊ったらすぐに戻ってくるから、待っててくれないか?」
「はい。待ってますから大丈夫ですわ。」
「すまない……」
「オルダー伯爵様、クリフォード公爵令嬢、ありがとうございます!」
この令嬢は、本当に嬉しそうに微笑むんだね。
可愛いなぁ……
二人の後ろ姿を見ていると、横から声を掛けられる。
「クリフォード公爵令嬢。私と踊って頂けませんか?」
よく知らない令息だったから断ると、また違う令息に声を掛けられる。
断っても断っても、よく分からない令息からダンスに誘われて、断ることすら面倒になっていた。
偏屈義兄がいないと、財産狙いのような令息たちがこうやって近付いてくるのね……
「クリフォード公爵令嬢。良かったら、私とのダンスに付き合ってくれませんか?」
声の主はスタンフィールド侯爵様だった。
この人なら落ち着いているし、ダンスを踊るくらいはいいかなぁ。ここにただ立っていると、また知らない令息に話しかけられて面倒だし。
「スタンフィールド侯爵様、よろしくお願い致します。」
侯爵様のエスコートはさすがだった。年上らしく令嬢の扱いに慣れているのが分かるし、所作も綺麗。そしてダンスもお上手だった。
これはさぞやモテるだろうなぁ……
若い令息にありがちなガツガツした感じがなくて、大人の余裕みたいなものがあるし、一緒にいても苦痛にならない。
若い令嬢たちはローランドや王弟殿下を狙う人が多いけど、スタンフィールド侯爵様はそれより少し年上の若い夫人たちからモテるタイプだと思う。
「令息たちはクリフォード公爵令嬢にお近づきになりたくて、みんな貴女を見つめていますね。」
「私個人と仲良くなりたいのではなく、クリフォード公爵家と仲良くなりたいのでしょうね。
困りましたわ……」
「そんなことはないかと。
ただ、さっきの様子を見ると私とのダンスが終わったら、また色々な令息が貴女に近づいてくるでしょう。
オルダー伯爵が戻るまで私が側にいることを許していただけませんか?」
気遣いのできる人なのね。
「ありがとうございます。お気遣いに感謝いたしますわ。」
侯爵様とのダンスが終わると、予想通りにまた令息たちからダンスのお誘いを受ける。
しつこくされて、私の顔は引きつっていたと思う。でもそんな時、侯爵様がさり気なく助けてくれたから良かった。
「クリフォード嬢。待たせてしまって申し訳なかった。」
侯爵様と話をしている時に、やっとローランドが戻ってきてくれた。
始めにダンスに誘ってきた令嬢と踊り終えた後に、強引な令嬢数人に捕まっていたようだった。
モテる男の試練みたいなものだね。
「いえ。スタンフィールド侯爵様が私にお付き合いしてくださったので、大丈夫でしたわ。」
「クリフォード公爵令嬢。貴女のパートナーが戻られたので、私はこれで失礼します。
今日は貴女とご一緒できたことに感謝します。
それではまた。」
うーん……。やっぱり大人だなぁ。
「侯爵様、素敵な時間をありがとうございました。
ご機嫌よう。」
その後、ローランドとゆっくり話をしようかと思っても、ローランドを狙う令嬢やクリフォード公爵家と仲良くなりたい令息が来たりして、夜会の会場で二人きりでじっくり話すことは出来なかった。
ローランドには何の不満もないけど、義兄のありがたみを痛感した夜会だった。
44
お気に入りに追加
9,745
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~
丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。
一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。
それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。
ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。
ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。
もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは……
これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。