異世界で捨て子を育てたら王女だった話

せいめ

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久しぶり

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 今は社交シーズンなので、毎週のようにお茶会や夜会に参加している。
 そして、私の社交には必ず義兄が同伴してエスコートしてくれていた。義兄と一緒にいると、面倒な人は絡んでこないからとても楽だったのだけど……

「リーゼ。いつもオスカーがエスコートして良縁が遠のいていたから、今度の夜会のエスコートはオルダー伯爵様に頼んでおいたわ。
 ふふっ……。オスカーは仕事関係の食事会が入っていて夜会には出れないみたいよ。この機会に誰かと仲良くなってきなさい。
 あ、オルダー伯爵様なら次男じゃないけど大歓迎よ。素敵だし煩い家族がいないもの。」

 お義母様は計算高い女性だからなぁ……

「お義母様、オルダー伯爵様はあの美しい見た目と優しい性格でご令嬢たちに人気の方なのです。
 王弟殿下は近寄りがたいけど、オルダー伯爵様は素敵だと言うご令嬢はたくさんいますのよ。
 そんな人にエスコートしてもらうだけでも僻みの対象になるのに、親しい関係になったと思われたりしたら……考えただけでも恐ろしいですわ。
 もっと普通の容姿でいい人はいないのでしょうか? 少しくらいぽっちゃりしている人でも、楽しい人なら構いませんわ。」

「大丈夫よ。公爵令嬢のリーゼに直接文句を言ってくる命知らずな令嬢はいないわ。
 しかしリーゼは夢がないわねぇ。私はオルダー伯爵様みたいな貴公子は見ているだけで幸せな気分になれるわ。」

 容姿がいい人は、結婚してからも女性から言い寄られたりするから嫌なんだけどなぁ。
 私には料理長みたいに一緒に食べ歩きしてくれる気さくなタイプの方が合っているんだけど。そんなことは絶対に口には出来ないけどね……

「オルダー伯爵様にお会いするのは久しぶりなので楽しんできますわ。
 ただ私は、お義兄様と行く夜会も好きだったのです。男女問わず面倒な人は寄ってこないですし、厄介そうな人が来てもお義兄様が上手く対応してくれるので安心できましたわ。そのおかげで私は、夜会の美味しい料理やスイーツを堪能できましたから。」

「リーゼ。それはオスカー自身が面倒で厄介な人だから誰も寄り付かなかっただけよ……
 でもリーゼの話をオスカーが聞いたら喜ぶでしょうね。ふふっ!」


 そして夜会の日。


 時間になるとローランド・オルダー伯爵様が迎えに来てくれる。

「オルダー伯爵様、お待ちしておりましたわ!
 今夜はリーゼのパートナーを引き受けて下さって感謝しております。
 伯爵様が来て下さるのを楽しみにしていましたのよ。……ねぇ、リーゼ?」

「オルダー伯爵様、今日はよろしくお願い致します。」

「クリフォード公爵夫人、ご無沙汰しておりました。
 今日は御令嬢のパートナーに指名していただき、大変光栄に存じます。
 クリフォード公爵令嬢。今日はよろしく。」

 あら! 綺麗な赤髪の美形が微笑むと、周りで薔薇の花びらでも舞っているように見えるわ。
 お義母様ったら、少女のように目をキラキラさせて嬉しそうにしているし……。そんなに好きならローランドのファンクラブでも作ればいいのに。

 ローランドとは、社交シーズンが始まってから何度か顔を合わせていた。
 グーム国に行っている間、私は領地で療養していることになっていたから、久しぶりに会った時は元気になって良かったと言ってくれて、美しい黒目を潤ませて再会を喜んでくれたんだよ。本当に優しい人だと思う。
 ただ社交の場で顔は合わせても、義兄が一緒だったからゆっくり話すことは出来なかったんだよね。
 今夜は久しぶりにゆっくり話が出来たらいいなぁ。

 今日の夜会はお義母様の実家のキングスリー公爵家で行われる。
 お義父様が仕事から戻ってきたら、お義母様たちも遅れて参加するらしい。
 身内の主催する夜会だからと気楽な気持ちで参加した私は、色々な意味で大変な思いをすることになる。




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