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私も働きたい
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ティーナから手を振られたら、仕事中であっても、無意識に笑顔になって手を振り返してしまう。
大柄な護衛騎士と手を繋いでいるティーナは、いつもより小さく見えて……、なんて可愛いの!
「いらっしゃいませ!」
「お姉様のお店、とっても可愛いわ!
お姉様たちが着ているワンピースもフリフリで可愛い! 王宮のメイドたちもそういうワンピースを着ればいいのに。」
さすがティーナだわ! 前世のメイド喫茶の制服をパクって作った、この服の可愛さを分かってくれるなんて。
「ありがとうございます。
今日は何を召し上がりますか?」
「ええと……、叔父さまからお姉様のお勧めのサンドイッチを買ってきてと言われてきたのよ。
お金も貰ってきたわ!」
まあ! おつかいみたいじゃないの。
「王弟殿下の好きなハンバーグの入ったサンドイッチにしましょうか?」
「えっ! ハンバーグのサンドイッチがあるの?
それにするわ。私と叔父さまの分を下さい。」
「畏まりました。少々お待ち下さい。」
うちの店自慢の可愛い絵の描いてある紙袋にハンバーグサンドを入れて、ティーナに手渡しする。
「可愛い袋だわ。ありがとう。
お金を支払うわね。」
ティーナは小さなポシェットから金貨を一枚取り出して私に渡してくる。
お金を取り出す動作もまだ慣れてなくて、そこもまた可愛いんですけど!
「今日は初めて来てくださったお礼に、サンドイッチはプレゼントさせて頂きますわ。
お代はいりません。」
可愛いティーナからお金なんて受け取れないと思ったのだけど……
「……買い物に来たからお金を払いたいの!」
あっ、そうだよね。これくらいの年齢の時は、お店屋さんごっことか好きだし、お金を払ったりすることに興味を持つんだった。
しょうがない……
「分かりました。では頂戴します。
お釣りを用意するので、少々お待ち下さいませ。」
「うん!」
私がお金を受け取ると、目をキラキラさせて嬉しそうに微笑むティーナ。
……可愛すぎるよ。
私は付き添いで来てくれた騎士たちのサンドイッチも用意することにした。
「お待たせしました。こちらがお釣りです。
こちらは、付き添いの騎士様たちでお召し上がり下さい。」
サンドイッチあげるから、ティーナの護衛をしっかりやってよという意味を込めて、護衛の人数分のサンドイッチが入った大きな紙袋を騎士に手渡す。
「御令嬢、ありがとうございます。」
「今日は来て頂いてありがとうございました。
気をつけてお帰り下さい。」
「うん! お姉様、またね。」
「また来て下さいね。ご機嫌よう。」
王宮から歩いて来たらしく、騎士と手を繋いで帰っていくティーナの後ろ姿を見送る。
ティーナの片手にはサンドイッチの紙袋を握りしめているのが見える。買った物を自分で持ちたいお年頃だもんね。
ふふっ……、癒されるなぁ。ティーナが幸せそうで良かった。
後日、仕事から帰ってきた義兄から手紙を渡される。
「王女殿下からの手紙だ。
殿下はわざわざ私の執務室まで来て下さった。」
この偏屈の執務室に、アポ無しで行くことを許されるのはティーナしかいないよ。
私や他の令嬢が訪ねて行ったら、仕事の邪魔だとか言われて追い出されそうだもん。
「ありがとうございます。」
「王女殿下からまた遊びに来て欲しいと言われた。
……本を読んだり、隠れんぼをして遊びたいそうだ。」
「そうですか。もしかして……、お義兄様もですか?」
「王女殿下から来て欲しいと言われたら断れない。」
ぷっ……。偏屈義兄はティーナに『お兄様も一緒に遊ぼう』とか言われたのね……
「分かりました。ではお義兄様も一緒に遊びに行きましょうね。」
「……日取りが決まったら知らせるように。」
「分かりました。」
部屋に戻り、早速ティーナからの手紙を読んでみる。
どれどれ……
〝お姉ちゃんのサンドイッチのお店に行けて嬉しかったよ。また行くから待っていてね。
お店に色々なサンドイッチが売っていたと話をしたら、お母様と叔父さまも行きたいって言ってたわ。
私も大きくなったら、お姉ちゃんのお店で働きたい。
可愛いワンピースを着て、いらっしゃいませってやりたいの。〟
王女殿下が『いらっしゃいませ』って店から出てきたら、貴族はみんなビビるだろうね……
大柄な護衛騎士と手を繋いでいるティーナは、いつもより小さく見えて……、なんて可愛いの!
「いらっしゃいませ!」
「お姉様のお店、とっても可愛いわ!
お姉様たちが着ているワンピースもフリフリで可愛い! 王宮のメイドたちもそういうワンピースを着ればいいのに。」
さすがティーナだわ! 前世のメイド喫茶の制服をパクって作った、この服の可愛さを分かってくれるなんて。
「ありがとうございます。
今日は何を召し上がりますか?」
「ええと……、叔父さまからお姉様のお勧めのサンドイッチを買ってきてと言われてきたのよ。
お金も貰ってきたわ!」
まあ! おつかいみたいじゃないの。
「王弟殿下の好きなハンバーグの入ったサンドイッチにしましょうか?」
「えっ! ハンバーグのサンドイッチがあるの?
それにするわ。私と叔父さまの分を下さい。」
「畏まりました。少々お待ち下さい。」
うちの店自慢の可愛い絵の描いてある紙袋にハンバーグサンドを入れて、ティーナに手渡しする。
「可愛い袋だわ。ありがとう。
お金を支払うわね。」
ティーナは小さなポシェットから金貨を一枚取り出して私に渡してくる。
お金を取り出す動作もまだ慣れてなくて、そこもまた可愛いんですけど!
「今日は初めて来てくださったお礼に、サンドイッチはプレゼントさせて頂きますわ。
お代はいりません。」
可愛いティーナからお金なんて受け取れないと思ったのだけど……
「……買い物に来たからお金を払いたいの!」
あっ、そうだよね。これくらいの年齢の時は、お店屋さんごっことか好きだし、お金を払ったりすることに興味を持つんだった。
しょうがない……
「分かりました。では頂戴します。
お釣りを用意するので、少々お待ち下さいませ。」
「うん!」
私がお金を受け取ると、目をキラキラさせて嬉しそうに微笑むティーナ。
……可愛すぎるよ。
私は付き添いで来てくれた騎士たちのサンドイッチも用意することにした。
「お待たせしました。こちらがお釣りです。
こちらは、付き添いの騎士様たちでお召し上がり下さい。」
サンドイッチあげるから、ティーナの護衛をしっかりやってよという意味を込めて、護衛の人数分のサンドイッチが入った大きな紙袋を騎士に手渡す。
「御令嬢、ありがとうございます。」
「今日は来て頂いてありがとうございました。
気をつけてお帰り下さい。」
「うん! お姉様、またね。」
「また来て下さいね。ご機嫌よう。」
王宮から歩いて来たらしく、騎士と手を繋いで帰っていくティーナの後ろ姿を見送る。
ティーナの片手にはサンドイッチの紙袋を握りしめているのが見える。買った物を自分で持ちたいお年頃だもんね。
ふふっ……、癒されるなぁ。ティーナが幸せそうで良かった。
後日、仕事から帰ってきた義兄から手紙を渡される。
「王女殿下からの手紙だ。
殿下はわざわざ私の執務室まで来て下さった。」
この偏屈の執務室に、アポ無しで行くことを許されるのはティーナしかいないよ。
私や他の令嬢が訪ねて行ったら、仕事の邪魔だとか言われて追い出されそうだもん。
「ありがとうございます。」
「王女殿下からまた遊びに来て欲しいと言われた。
……本を読んだり、隠れんぼをして遊びたいそうだ。」
「そうですか。もしかして……、お義兄様もですか?」
「王女殿下から来て欲しいと言われたら断れない。」
ぷっ……。偏屈義兄はティーナに『お兄様も一緒に遊ぼう』とか言われたのね……
「分かりました。ではお義兄様も一緒に遊びに行きましょうね。」
「……日取りが決まったら知らせるように。」
「分かりました。」
部屋に戻り、早速ティーナからの手紙を読んでみる。
どれどれ……
〝お姉ちゃんのサンドイッチのお店に行けて嬉しかったよ。また行くから待っていてね。
お店に色々なサンドイッチが売っていたと話をしたら、お母様と叔父さまも行きたいって言ってたわ。
私も大きくなったら、お姉ちゃんのお店で働きたい。
可愛いワンピースを着て、いらっしゃいませってやりたいの。〟
王女殿下が『いらっしゃいませ』って店から出てきたら、貴族はみんなビビるだろうね……
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