異世界で捨て子を育てたら王女だった話

せいめ

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美味しいご飯

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 大量に買い付けた米は一度に持ち帰ることは出来ないので、とりあえず一袋(30キロくらい?)だけを持ち帰り、残りは後日取りに行くことにした。
 馬車に米を積み込んでもらった後、急ぎで公爵家に帰る。

「お嬢様。この〝コメ〟は、どのように料理するのでしょうか?」

 料理長は米を調理したことがないらしく、どうやって食べるのか興味津々なようだ。

「色々な調理法があるんだけど、とりあえず鍋を使って炊いてみようかしら。」

「鍋でタクとは?」

「鍋でお米を茹でた後に蒸らすの。お米はそれで食べられるわ。
 炊き上がった後に、お好みで味をつけたり、何かをかけて食べたり、食べ方は色々あるのよ。」

「なるほど、楽しみですね!」

 家事魔法で米とぎから始めて、鍋を使って炊き上げる。精米をした状態で売っていたから、ちょうど良かった。
 ああ……! 米をとぐ音が懐かしいな。
 前世で主婦をしていた頃は、毎日の面倒な仕事としか思っていなかったのに。
 
 炊き上がって気がついたけど、このお米は食べ慣れたジャポニカ米のようで、粘り気があるご飯だった。
 丸みを帯びた米だったから、多分そうだろうとは思っていたけど、インディカ米よりも食べ慣れたジャポニカ米の方が好きだったから良かったー!
 米を食べるのは、オルダー伯爵家でピラフを作った時以来だよね。

 炊き立てのご飯を一口味見すると……、ふっくらと炊き上がっていて、もちもちで美味しい。
 料理長たちにも試食してもらうと、初めて食べる食感に驚いているようだった。

 あー、オニギリ食べたい。でも海苔がない。醤油があれば焼きおにぎりもいいなー!
 でも、前世でどこにでもいる普通の専業主婦だった私が、海苔や醤油の作り方なんて知っているはずもなく……しょうがないからミートボールサイズの塩むすびを作って、料理長たちに配ることにした。

「塩とコメは合いますね!」

「塩むすびって言うのよ。今から残ったご飯で、ライスコロッケを作るから、少し待っていてね。」

「はい!」

 コロッケが大好きな料理人たちは、きっとライスコロッケも気にいるはず……
 
 瓶詰めにして保存しておいたトマトソースで味付けしたご飯とチーズを入れたライスコロッケは、最高に美味しくて、料理人たちから大好評だった。
 その日から、ランチにお米を使った料理を作る日々が続く。
 オムライス、リゾット、ピラフ、ロコモコ丼などを作り、久しぶりにご飯を満喫することが出来た。

 お米を使った料理は、お義母様も気に入ってくれたようだ。
 お義母様は朝食時に、スープにご飯を入れて雑炊風にしたものを好んで食べている。
 サラサラ食べられるから朝に食べるのにちょうどいいって言っていた。
 お義父様は忙しい時にすぐに食べれる塩むすびがお気に入りのようで、よく料理人に作ってもらっている。

 穀物屋に売れ残っていた米を買い占めて帰った時は、料理長だけでなくお義父様やお義母様も引き攣った顔をしていた。
 令嬢なのにドレスや宝石を買わずに、市場でよく分からない食材を買い占めてこなくても……と。
 そんな中、あの偏屈義兄だけは何も言ってこなかった。普段は何も欲しがらないのだから、これくらいの買い物は何の問題もないとまで言ってくれたのだ。
 出会った時は最悪だった偏屈も、今では私の良き理解者になりつつある。

 そして、米が思った以上に美味しく食べれることが分かった今では……

「リーゼは凄いわ! 外国の食べ物を美味しく料理する方法まで知っているなんて。」

「確かにエリーゼが作る料理は珍しくて美味しい。
 サンドイッチの店も儲かっているし、今度はレストランでもオープンさせるか?」

「旦那様、それはいいわね。
 実はこの前のお茶会で、一口サイズのライスコロッケをお出ししたのよ。どの夫人からも好評だったわ。
 うちのお茶会の料理は、珍しくて美味しいものがあるからまた来たいとよく言われるのよ。」

 そういえばお義母様は、私が作った料理を気に入ってくれて、お茶会のメニューによく使ってくれるんだよね。
 マヨコーンピザとかエビマヨとかも好評だったらしいし、貴婦人が食べやすいようにミニサイズで作ったコロッケやハンバーグもうちのお茶会の定番メニューになりつつある。
 お茶会だからスイーツがメインのはずなのに、口直しでちょっとした料理をお出しするとかなり喜ばれるらしい。

「父上も母上も、エリーゼが大量のコメを買ってきた時はあんな反応をしていたくせに。
 エリーゼ、この二人の話は気にしなくていい。
 それより今日は休みで時間があるから、二人で出掛けてこないか?
 エリーゼの好きな市場でも見に行って、どこかで食事でもしてこよう。何かいい食材が見つかるかもしれない。」

 公爵令息が市場に行こうと言ってくれている……

 他の貴族令息はこんなお誘いをしてくれないだろうな。
 無表情じゃなくて、笑顔で誘ってくれるようになったら100点あげるのに。
 でも……、普通に嬉しいからいいか。

「はい、お義兄様!」

 

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