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閑話 王弟アルベルト
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神殿では祭りで忙しいにも関わらず、すぐにベネディクト神官との面会を許される。国の特使として来た私達を丁重に扱っているようだ。
「アルベルト・レンフィールド公爵閣下、オスカー・クリフォード公爵令息、グーム国へようこそ。
園路はるばるお越しいただき、感謝している。」
応接室で待っていると、私と同じ色の髪と瞳を持つ神官が入って来て、丁寧に挨拶してくれた。
叔父とは言え、私の兄と大した年齢差はないので、とても若く見えた。
「ベネディクト神官様。忙しい中、面会の時間をとって頂きありがとうございます。
……叔父上。初めましてではありませんよね?
私は貴方の甥ですので、堅苦しくしないでいただきたい。」
「ありがとう。では、そうさせていただく。
私が国を離れる時、確かアルベルトは二歳か三歳くらいだったから、私を覚えていないだろう。
立派になったな……
ところで、グームの国王陛下から君達が人探しに来たと伺っている。
特使とは言え、王弟であるアルベルトと名門クリフォード家の令息が来るとは、探している人物は相当の身分の者なのか? それとも……、君達の大切な人なのか?」
叔父上は穏やかな口調で話しているが、鋭い眼光を放っている。私達がこの国に来た理由に気付いているようだ。
「ベネディクト神官様、お会いできて光栄でございます。
私はオスカー・クリフォードと申します。
私達がこの国に来た理由は、私の行方不明になっていた義理の妹であるエリーゼ・クリフォードがこの国にいると聞いたからです。
義妹の以前の名前は、エリーゼ・ステール伯爵令嬢。
ベネディクト神官様がよく知る人物の娘です。
不幸な事件に巻き込まれ、この国にやって来たようです。」
クリフォード卿の話を聞いた叔父上は、やはり……という表情をする。
「……君達がこの国に来たと聞いた時から、気付いていた。
リーゼは私の邸で生活し、普段は孤児院で手伝いをして過ごしている。
ステール伯爵夫人にそっくりなリーゼを見て、私はリーゼが彼女の娘だとすぐに気付いた。
リーゼは両親から酷い扱いを受けていたと話していたし、ここ数年の記憶がないことや人身売買に巻き込まれたらしいと聞いて、私は何とか彼女を助けたいと思った。私の養女にならないかと何度も申し出たのだが、リーゼは今の生活に満足しているとか、幸せだからと言って受け入れてくれなかった。
その後に何度も説得して、私が後見人になるということを受け入れてもらった。」
「ベネディクト神官様、私の大切な義妹を助けて頂きありがとうございました。」
「叔父上……。実は先程、孤児院で働くリーゼを偶然発見しました。
しかしリーゼは記憶喪失で私達のことを覚えていませんでした。」
「そのようだな……。リーゼの口から君達の話を聞いたことはないし、没落したステール伯爵家のことや、嫌いな両親から逃げ出して、港町で生活していた話しか聞いていない。」
叔父上の希望として言われたのは、記憶喪失だからと、リーゼを無理に連れて帰るようなことはしないで欲しいということだった。
両親に愛されずに育ったリーゼには幸せになって欲しいから、彼女の気持ちを大切にして欲しいと。
「叔父上。リーゼは両親には恵まれませんでしたが、義理の両親であるクリフォード公爵と夫人は、リーゼをとても可愛がっておりますし、リーゼの帰りを待つ者は沢山いるのです。」
私は叔父上に姪のクリスティーナの話をした。
港町で生活していたリーゼが、置き去りにされていたクリスティーナを保護し大切に育て、それが縁で私達は出会い、リーゼはクリフォード家に引き取られたことを。
記憶喪失になる前のリーゼがクリスティーナをとても可愛がっていたことや、ラリーア国の者に狙われたクリスティーナを助けようとして、リーゼが船で攫われたことも。
クリスティーナがリーゼに会いたがっていることも伝えた。
「そんなことがあったのか……。もしリーゼの記憶が戻れば、きっと帰国したいと言うだろう。
しかし今のリーゼの気持ちを大切にして欲しい。
彼女は貴族令嬢として生活するよりも、平民としての生活を望んでいるようだ。」
「叔父上。私達も嫌がるリーゼを無理に連れて帰ろうとは思っていません。
しかし、私達も諦められないのです。」
その時、クリフォード卿が思い出したように口を開く。
「ベネディクト神官様。孤児院の子供がエリーゼには聖騎士の恋人がいて、結婚をしたがっていると話していました。エリーゼを無理に連れて行かないで欲しいというのは、それが理由ですか?
その聖騎士の恋人は平民出身で、結婚の約束でもしているのでしょうか?」
クリフォード卿がリーゼの恋人のことを聞いた瞬間、その場の雰囲気が重くなる。
「アルベルト・レンフィールド公爵閣下、オスカー・クリフォード公爵令息、グーム国へようこそ。
園路はるばるお越しいただき、感謝している。」
応接室で待っていると、私と同じ色の髪と瞳を持つ神官が入って来て、丁寧に挨拶してくれた。
叔父とは言え、私の兄と大した年齢差はないので、とても若く見えた。
「ベネディクト神官様。忙しい中、面会の時間をとって頂きありがとうございます。
……叔父上。初めましてではありませんよね?
私は貴方の甥ですので、堅苦しくしないでいただきたい。」
「ありがとう。では、そうさせていただく。
私が国を離れる時、確かアルベルトは二歳か三歳くらいだったから、私を覚えていないだろう。
立派になったな……
ところで、グームの国王陛下から君達が人探しに来たと伺っている。
特使とは言え、王弟であるアルベルトと名門クリフォード家の令息が来るとは、探している人物は相当の身分の者なのか? それとも……、君達の大切な人なのか?」
叔父上は穏やかな口調で話しているが、鋭い眼光を放っている。私達がこの国に来た理由に気付いているようだ。
「ベネディクト神官様、お会いできて光栄でございます。
私はオスカー・クリフォードと申します。
私達がこの国に来た理由は、私の行方不明になっていた義理の妹であるエリーゼ・クリフォードがこの国にいると聞いたからです。
義妹の以前の名前は、エリーゼ・ステール伯爵令嬢。
ベネディクト神官様がよく知る人物の娘です。
不幸な事件に巻き込まれ、この国にやって来たようです。」
クリフォード卿の話を聞いた叔父上は、やはり……という表情をする。
「……君達がこの国に来たと聞いた時から、気付いていた。
リーゼは私の邸で生活し、普段は孤児院で手伝いをして過ごしている。
ステール伯爵夫人にそっくりなリーゼを見て、私はリーゼが彼女の娘だとすぐに気付いた。
リーゼは両親から酷い扱いを受けていたと話していたし、ここ数年の記憶がないことや人身売買に巻き込まれたらしいと聞いて、私は何とか彼女を助けたいと思った。私の養女にならないかと何度も申し出たのだが、リーゼは今の生活に満足しているとか、幸せだからと言って受け入れてくれなかった。
その後に何度も説得して、私が後見人になるということを受け入れてもらった。」
「ベネディクト神官様、私の大切な義妹を助けて頂きありがとうございました。」
「叔父上……。実は先程、孤児院で働くリーゼを偶然発見しました。
しかしリーゼは記憶喪失で私達のことを覚えていませんでした。」
「そのようだな……。リーゼの口から君達の話を聞いたことはないし、没落したステール伯爵家のことや、嫌いな両親から逃げ出して、港町で生活していた話しか聞いていない。」
叔父上の希望として言われたのは、記憶喪失だからと、リーゼを無理に連れて帰るようなことはしないで欲しいということだった。
両親に愛されずに育ったリーゼには幸せになって欲しいから、彼女の気持ちを大切にして欲しいと。
「叔父上。リーゼは両親には恵まれませんでしたが、義理の両親であるクリフォード公爵と夫人は、リーゼをとても可愛がっておりますし、リーゼの帰りを待つ者は沢山いるのです。」
私は叔父上に姪のクリスティーナの話をした。
港町で生活していたリーゼが、置き去りにされていたクリスティーナを保護し大切に育て、それが縁で私達は出会い、リーゼはクリフォード家に引き取られたことを。
記憶喪失になる前のリーゼがクリスティーナをとても可愛がっていたことや、ラリーア国の者に狙われたクリスティーナを助けようとして、リーゼが船で攫われたことも。
クリスティーナがリーゼに会いたがっていることも伝えた。
「そんなことがあったのか……。もしリーゼの記憶が戻れば、きっと帰国したいと言うだろう。
しかし今のリーゼの気持ちを大切にして欲しい。
彼女は貴族令嬢として生活するよりも、平民としての生活を望んでいるようだ。」
「叔父上。私達も嫌がるリーゼを無理に連れて帰ろうとは思っていません。
しかし、私達も諦められないのです。」
その時、クリフォード卿が思い出したように口を開く。
「ベネディクト神官様。孤児院の子供がエリーゼには聖騎士の恋人がいて、結婚をしたがっていると話していました。エリーゼを無理に連れて行かないで欲しいというのは、それが理由ですか?
その聖騎士の恋人は平民出身で、結婚の約束でもしているのでしょうか?」
クリフォード卿がリーゼの恋人のことを聞いた瞬間、その場の雰囲気が重くなる。
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