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サンドイッチ
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公爵家の料理人達から、コロッケとハンバーグは好評だったようで、公爵家の名物料理にしたいから、ぜひ作り方を教えて欲しいと言われてしまった。
作り方を教えるのは何の問題もないのだけど……
「お嬢様。これらの料理は、ステール伯爵家の秘蔵の料理なのでしょうか?」
「ステール伯爵家の料理ではないわ。
ステール伯爵家の図書室に他国の古い料理本があって、その本に書いてあった料理を参考にして、何となく作ってみたら、偶然美味しかっただけなのよ。」
「お嬢様、それは凄いですね!」
料理人達は、私の実家である、没落したステール伯爵家の秘蔵の料理であると思っているようだった。
前世の庶民の料理ですとは絶対に言えないよ……
「コロッケもハンバーグも、ソースで変わるから、料理のプロである貴方達で、新しいソースを考えるのもいいかもしれないわ。
コロッケは、中に旬の野菜を入れたり、肉やエビ、カニを入れて豪華にしても美味しいわよ。
貴方達で色々と研究してみてね。」
「……なるほど!参考にしてみます。」
そして、邸にいるだけの生活に飽きてきた最近の私は、近くの孤児院にお菓子を持って遊びに行ったりしている。
グーム国のベネディクト神官様と同様に、うちのお義父様も、孤児院に行くことは簡単に許してくれるのだ。
お菓子は、孤児院に行く前に調理場を借りて、家事魔法で作った物を持って行っている。
明日も孤児院に行く予定である私は、今日のうちにパウンドケーキを作って用意しておこうかと考え、調理場に向かっていたのだが、そのタイミングで義兄が帰ってきた姿が見えてしまった。
いつもは夕方なのに、今日は帰りが早いようだ。
声を掛けても素っ気ない人だから、お帰りなさいと一言声を掛けるのも、あまり気は乗らないんだよね。
でも、知らんぷりは出来ないしなぁ。
「お義兄様、お帰りなさいませ。」
無視する度胸がない私は、仕方なく挨拶をする。
どうせ偏屈は、一言返事だけをして視線すら合わせずに去って行くだろうと思っていたのだが、私の前まで来て足を止めるのであった。
なにー? 珍しいこともあるのね……
「……昼食、助かった。明日も頼みたい。」
「……はい?」
「毎日忙しいから、ランチで席を外すのは面倒だと思って、今までは王宮のシェフに作ってもらった料理を私の執務室まで運んで貰っていたのだが、コース料理を一品ずつ運んでくるから、食べるのに時間がかかってしまう。
今日みたいにサンドイッチを届けてくれると、時間が無駄にならず、サッと食べれて合理的だと思った。
明日から毎日頼みたい。エリーゼが作ってくれたものは、味が良いだけでなく、腹に溜まるから丁度いい。」
「……毎日ですか?毎日、私のサンドイッチを食べるのは飽きませんか?」
「大丈夫だ。頼んだぞ。」
私の返事も聞かずに、義兄は言ってしまった……
実は今日の午前中、コロッケとハンバーグ作りにハマっている料理長と私は、一緒に料理をしていたのだが、コロッケやハンバーグを野菜と一緒にパンに挟んでサンドイッチにした物を沢山作ったら、お義母様や使用人達から大好評だった。
お義母様は、義兄もハンバーグとコロッケは好んで食べていたように見えたから、差し入れに届けてみてはと言ってくれたので、急遽、義兄の従者に王宮に届けてもらったのだが、思いの外、好評だったらしい。
要らないと返してくることも予想していたのだけど、偏屈義兄もコロッケやハンバーグが好きになってくれたらしい。
素直に美味しかったって笑顔で言えれば、カワイイのに。
腹に溜まるって言ってくれていたけど、お腹いっぱいになったってことでしょ?
まあ、前世庶民の私としては、サンドイッチには、野菜を沢山挟んで、ボリュームも出したかったからね。それを評価してくれたなら嬉しいな。
しかし、毎日かぁ……
面倒だからと、サボって料理長に頼んだりしたら、あの鋭そうな義兄はすぐに気付きそうだし、何を言われるか分からないから怖いよね。
仕方がない。魔法でちゃちゃっと作ろう。
だけど……、サンドイッチと言ったらマヨネーズが欲しいなぁ。
マヨネーズがあれば、卵サンドや、ハムとキュウリと辛子マヨネーズのサンドイッチも作れる。野菜と相性がいいし、簡単なオーロラソースやタルタルソースも作れちゃう。タルタルソースで海老フライが食べたい。あ、エビマヨもいいなぁ。
今までは何を作るにしても、自己流のトマトソースで我慢していたけど、やっぱり、マヨネーズが欲しい!サンドイッチを毎日作るなら、マヨネーズは必要よ!
確かマヨネーズは、卵と酢と塩と油とかがあれば作れたような……。日本にあるような酢がなければ、ワインビネガーで代用出来ないかな?
前世で料理好きな友人が、手作りのマヨネーズは美味しいよって言ってたし、作れなくはないかも。
よし!明日の孤児院訪問はお休みにして、今からマヨネーズ作りに挑戦してみよう。
作り方を教えるのは何の問題もないのだけど……
「お嬢様。これらの料理は、ステール伯爵家の秘蔵の料理なのでしょうか?」
「ステール伯爵家の料理ではないわ。
ステール伯爵家の図書室に他国の古い料理本があって、その本に書いてあった料理を参考にして、何となく作ってみたら、偶然美味しかっただけなのよ。」
「お嬢様、それは凄いですね!」
料理人達は、私の実家である、没落したステール伯爵家の秘蔵の料理であると思っているようだった。
前世の庶民の料理ですとは絶対に言えないよ……
「コロッケもハンバーグも、ソースで変わるから、料理のプロである貴方達で、新しいソースを考えるのもいいかもしれないわ。
コロッケは、中に旬の野菜を入れたり、肉やエビ、カニを入れて豪華にしても美味しいわよ。
貴方達で色々と研究してみてね。」
「……なるほど!参考にしてみます。」
そして、邸にいるだけの生活に飽きてきた最近の私は、近くの孤児院にお菓子を持って遊びに行ったりしている。
グーム国のベネディクト神官様と同様に、うちのお義父様も、孤児院に行くことは簡単に許してくれるのだ。
お菓子は、孤児院に行く前に調理場を借りて、家事魔法で作った物を持って行っている。
明日も孤児院に行く予定である私は、今日のうちにパウンドケーキを作って用意しておこうかと考え、調理場に向かっていたのだが、そのタイミングで義兄が帰ってきた姿が見えてしまった。
いつもは夕方なのに、今日は帰りが早いようだ。
声を掛けても素っ気ない人だから、お帰りなさいと一言声を掛けるのも、あまり気は乗らないんだよね。
でも、知らんぷりは出来ないしなぁ。
「お義兄様、お帰りなさいませ。」
無視する度胸がない私は、仕方なく挨拶をする。
どうせ偏屈は、一言返事だけをして視線すら合わせずに去って行くだろうと思っていたのだが、私の前まで来て足を止めるのであった。
なにー? 珍しいこともあるのね……
「……昼食、助かった。明日も頼みたい。」
「……はい?」
「毎日忙しいから、ランチで席を外すのは面倒だと思って、今までは王宮のシェフに作ってもらった料理を私の執務室まで運んで貰っていたのだが、コース料理を一品ずつ運んでくるから、食べるのに時間がかかってしまう。
今日みたいにサンドイッチを届けてくれると、時間が無駄にならず、サッと食べれて合理的だと思った。
明日から毎日頼みたい。エリーゼが作ってくれたものは、味が良いだけでなく、腹に溜まるから丁度いい。」
「……毎日ですか?毎日、私のサンドイッチを食べるのは飽きませんか?」
「大丈夫だ。頼んだぞ。」
私の返事も聞かずに、義兄は言ってしまった……
実は今日の午前中、コロッケとハンバーグ作りにハマっている料理長と私は、一緒に料理をしていたのだが、コロッケやハンバーグを野菜と一緒にパンに挟んでサンドイッチにした物を沢山作ったら、お義母様や使用人達から大好評だった。
お義母様は、義兄もハンバーグとコロッケは好んで食べていたように見えたから、差し入れに届けてみてはと言ってくれたので、急遽、義兄の従者に王宮に届けてもらったのだが、思いの外、好評だったらしい。
要らないと返してくることも予想していたのだけど、偏屈義兄もコロッケやハンバーグが好きになってくれたらしい。
素直に美味しかったって笑顔で言えれば、カワイイのに。
腹に溜まるって言ってくれていたけど、お腹いっぱいになったってことでしょ?
まあ、前世庶民の私としては、サンドイッチには、野菜を沢山挟んで、ボリュームも出したかったからね。それを評価してくれたなら嬉しいな。
しかし、毎日かぁ……
面倒だからと、サボって料理長に頼んだりしたら、あの鋭そうな義兄はすぐに気付きそうだし、何を言われるか分からないから怖いよね。
仕方がない。魔法でちゃちゃっと作ろう。
だけど……、サンドイッチと言ったらマヨネーズが欲しいなぁ。
マヨネーズがあれば、卵サンドや、ハムとキュウリと辛子マヨネーズのサンドイッチも作れる。野菜と相性がいいし、簡単なオーロラソースやタルタルソースも作れちゃう。タルタルソースで海老フライが食べたい。あ、エビマヨもいいなぁ。
今までは何を作るにしても、自己流のトマトソースで我慢していたけど、やっぱり、マヨネーズが欲しい!サンドイッチを毎日作るなら、マヨネーズは必要よ!
確かマヨネーズは、卵と酢と塩と油とかがあれば作れたような……。日本にあるような酢がなければ、ワインビネガーで代用出来ないかな?
前世で料理好きな友人が、手作りのマヨネーズは美味しいよって言ってたし、作れなくはないかも。
よし!明日の孤児院訪問はお休みにして、今からマヨネーズ作りに挑戦してみよう。
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