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会いたかった
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「お姉様ー!」
「王女殿下!……うっ。」
今日、私はティーナに招待されて王宮にやって来た。
グーム国に行く前に、船からティーナを脱出させた時以来の再会になる。
約一年ぶりに会うティーナは、あの時よりも背が高くなったように見えた。
そんなティーナは、久しぶりの再会を喜んでくれているのか、勢いよく私に抱きついて来たのだった。
「エリーゼ、大丈夫か?」
「……大丈夫ですわ。お義兄様が私の腕を掴んでいてくれたので、よろけずに済みました。」
「お姉様、ずっと会いたかったのよ……
怪我は大丈夫?もう痛くない?」
ティーナは私に抱きついたまま、上目遣いでジーッと私を見つめている。
そんな可愛いことを言われたら……
「はい。もう大丈夫ですわ。
……私も、王女殿下に会いたかったです。
王女殿下、背が高くなりましたね……
本当に……、無事で良かった……」
「お姉様……、泣いているの?」
「い、いえ。……ちょっと目にゴミが入ってしまったようですわ。」
「大丈夫?痛い時は、王宮医の先生を呼んでもらうから、すぐに言ってね。」
可愛い姫さまは、しばらく会わないうちに、人を気遣える優しい子に育っていたようだ。
「はい。ありがとうございます。」
「ところで、今日はお姉様のお兄様も来てくれたのね。後ろの騎士様もお姉様が連れて来たの?
ふふっ。沢山人がいるから、皆んなで隠れんぼが出来るわね!嬉しいわ。」
ぷっ……!この偏屈が、小さな子供と一緒に隠れんぼをやる姿なんて想像出来ないけど、絶対に参加させてやるわ。
「王女殿下。本日はお招き頂き、感謝しております。」
偏屈は、隠れんぼの話を笑顔でスルーすることにしたらしい……
挨拶を終えた後、ティーナに手を引かれて、お茶会の部屋まで案内される。
ティーナ好みに飾り付けされた部屋は、花が沢山飾ってあって、華やかな部屋だった。
ウエディングの情報誌に記載出来そうな部屋だよね。
「お姉様、後でお義母様とおじ様が来るらしいわ。
でも執務があるから、先にお茶会を始めていてねって言われているの。」
何となく予想していたことだった。
王妃殿下は私を心配して下さったらしいから、お会いしたらお礼を伝えたいと思っているのよね。
ティーナと偏屈と三人でお茶をした後に、絵本を読むことになる。
ティーナは、本を読むのが上手になったのよと言って、私達に童話を読んでくれる。
前に読んでいた本よりも、字数が多くて、文字も小さくなっているのに、スラスラと上手に読むティーナはすごいわ!
私がいない間に、こんなに成長していたのね。
「今度はお姉様が読んで欲しいわ。」
「畏まりました。どの本にしましょうか?」
「この本がいいわ!」
ティーナに本を読んであげるのは久しぶりだなと思いながら読み進めると、あっという間に本を読み終えていた。
「じゃあ今度は、お姉様のお兄様に読んでもらいたいわ!」
「まあ!お義兄様、王女殿下からのご指名ですわね。」
ぷっ……。偏屈だっていずれは結婚して、父親になる日が来るんだから、その時のための子守りの練習になるわよね。
「……王女殿下。……どの本になさいますか?」
さすが偏屈義兄だわ。王女殿下の頼みは拒否しないのね。
「えっと……。この本がいいわ!」
ティーナが選んだ本は……。うそっ!
笑いを堪えるのが大変だった……。
その本は、『エステル』という題名で、エステルというお姫様が主人公の物語だ。
内容は白雪姫に近い話で、王子様がエステル姫に愛を伝えたり、結婚を申し込むシーンがあったと思う。
これをこの偏屈に朗読させるのね。ティーナは本当に凄い子だわ!
「……畏まりました。
昔々、ある国の王様に、美しい姫が生まれました……」
偏屈義兄は、良く通る声で本の朗読をし始める。
恥ずかしがる様子もなく、堂々と。
「エステル王女。私は貴方を愛しています。
私と結婚して頂けませんか?
私は貴女だけを愛し、一生貴女を守り抜くことを誓います……」
私は偏屈義兄のプロ根性のようなものを感じてしまった。
告白するセリフですら、恥ずかしがることなく、感情を込めて朗読する姿は、お見事としか言えない。
「……二人は結婚して、幸せに暮しました。」
「わー!さすが、お姉様のお兄様だわ!
とってもお上手!」
「……ありがとうございます。」
ティーナですら、偏屈の朗読に感動したようだった。悔しいけど、私も認めるしかないわね。
「お義兄様、素晴らしかったですわ。」
「……ああ。」
偏屈は笑顔だったが、私を見る目は笑っていなかった。
その後は、ティーナが楽しみにしていた隠れんぼをすることになる。
「じゃあ、オニは私がやるから、お姉様とお兄様は隠れていいわよ。」
あの義兄が本気で隠れている……
外で遊ぶことは好きだったのかもしれない。
ティーナは偏屈のことを『お兄様』と呼んでいる。
真面目な偏屈は、『クリフォード卿とお呼び下さい』と言ったのだが、『お姉様のお兄様なのだから、私もお兄様と呼びたいの』と言われ、ティーナのあまりの可愛さにNOとは言えなくなってしまったのだ。
こんな偏屈も手懐けてしまうティーナって、本当に凄いわ。
その後、隠れんぼを終えて三人でお茶を飲んでいると、扉がノックされる。
扉が開いて部屋に入ってきたのは、王妃殿下と国王陛下だった。
「王女殿下!……うっ。」
今日、私はティーナに招待されて王宮にやって来た。
グーム国に行く前に、船からティーナを脱出させた時以来の再会になる。
約一年ぶりに会うティーナは、あの時よりも背が高くなったように見えた。
そんなティーナは、久しぶりの再会を喜んでくれているのか、勢いよく私に抱きついて来たのだった。
「エリーゼ、大丈夫か?」
「……大丈夫ですわ。お義兄様が私の腕を掴んでいてくれたので、よろけずに済みました。」
「お姉様、ずっと会いたかったのよ……
怪我は大丈夫?もう痛くない?」
ティーナは私に抱きついたまま、上目遣いでジーッと私を見つめている。
そんな可愛いことを言われたら……
「はい。もう大丈夫ですわ。
……私も、王女殿下に会いたかったです。
王女殿下、背が高くなりましたね……
本当に……、無事で良かった……」
「お姉様……、泣いているの?」
「い、いえ。……ちょっと目にゴミが入ってしまったようですわ。」
「大丈夫?痛い時は、王宮医の先生を呼んでもらうから、すぐに言ってね。」
可愛い姫さまは、しばらく会わないうちに、人を気遣える優しい子に育っていたようだ。
「はい。ありがとうございます。」
「ところで、今日はお姉様のお兄様も来てくれたのね。後ろの騎士様もお姉様が連れて来たの?
ふふっ。沢山人がいるから、皆んなで隠れんぼが出来るわね!嬉しいわ。」
ぷっ……!この偏屈が、小さな子供と一緒に隠れんぼをやる姿なんて想像出来ないけど、絶対に参加させてやるわ。
「王女殿下。本日はお招き頂き、感謝しております。」
偏屈は、隠れんぼの話を笑顔でスルーすることにしたらしい……
挨拶を終えた後、ティーナに手を引かれて、お茶会の部屋まで案内される。
ティーナ好みに飾り付けされた部屋は、花が沢山飾ってあって、華やかな部屋だった。
ウエディングの情報誌に記載出来そうな部屋だよね。
「お姉様、後でお義母様とおじ様が来るらしいわ。
でも執務があるから、先にお茶会を始めていてねって言われているの。」
何となく予想していたことだった。
王妃殿下は私を心配して下さったらしいから、お会いしたらお礼を伝えたいと思っているのよね。
ティーナと偏屈と三人でお茶をした後に、絵本を読むことになる。
ティーナは、本を読むのが上手になったのよと言って、私達に童話を読んでくれる。
前に読んでいた本よりも、字数が多くて、文字も小さくなっているのに、スラスラと上手に読むティーナはすごいわ!
私がいない間に、こんなに成長していたのね。
「今度はお姉様が読んで欲しいわ。」
「畏まりました。どの本にしましょうか?」
「この本がいいわ!」
ティーナに本を読んであげるのは久しぶりだなと思いながら読み進めると、あっという間に本を読み終えていた。
「じゃあ今度は、お姉様のお兄様に読んでもらいたいわ!」
「まあ!お義兄様、王女殿下からのご指名ですわね。」
ぷっ……。偏屈だっていずれは結婚して、父親になる日が来るんだから、その時のための子守りの練習になるわよね。
「……王女殿下。……どの本になさいますか?」
さすが偏屈義兄だわ。王女殿下の頼みは拒否しないのね。
「えっと……。この本がいいわ!」
ティーナが選んだ本は……。うそっ!
笑いを堪えるのが大変だった……。
その本は、『エステル』という題名で、エステルというお姫様が主人公の物語だ。
内容は白雪姫に近い話で、王子様がエステル姫に愛を伝えたり、結婚を申し込むシーンがあったと思う。
これをこの偏屈に朗読させるのね。ティーナは本当に凄い子だわ!
「……畏まりました。
昔々、ある国の王様に、美しい姫が生まれました……」
偏屈義兄は、良く通る声で本の朗読をし始める。
恥ずかしがる様子もなく、堂々と。
「エステル王女。私は貴方を愛しています。
私と結婚して頂けませんか?
私は貴女だけを愛し、一生貴女を守り抜くことを誓います……」
私は偏屈義兄のプロ根性のようなものを感じてしまった。
告白するセリフですら、恥ずかしがることなく、感情を込めて朗読する姿は、お見事としか言えない。
「……二人は結婚して、幸せに暮しました。」
「わー!さすが、お姉様のお兄様だわ!
とってもお上手!」
「……ありがとうございます。」
ティーナですら、偏屈の朗読に感動したようだった。悔しいけど、私も認めるしかないわね。
「お義兄様、素晴らしかったですわ。」
「……ああ。」
偏屈は笑顔だったが、私を見る目は笑っていなかった。
その後は、ティーナが楽しみにしていた隠れんぼをすることになる。
「じゃあ、オニは私がやるから、お姉様とお兄様は隠れていいわよ。」
あの義兄が本気で隠れている……
外で遊ぶことは好きだったのかもしれない。
ティーナは偏屈のことを『お兄様』と呼んでいる。
真面目な偏屈は、『クリフォード卿とお呼び下さい』と言ったのだが、『お姉様のお兄様なのだから、私もお兄様と呼びたいの』と言われ、ティーナのあまりの可愛さにNOとは言えなくなってしまったのだ。
こんな偏屈も手懐けてしまうティーナって、本当に凄いわ。
その後、隠れんぼを終えて三人でお茶を飲んでいると、扉がノックされる。
扉が開いて部屋に入ってきたのは、王妃殿下と国王陛下だった。
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