異世界で捨て子を育てたら王女だった話

せいめ

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公爵家の護衛

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 しばらくの間、邸でのんびり過ごす日々を送っていたら、義兄が寮から邸に引っ越して来る日を迎えていた。

「エリーゼ。オスカーは、今日引っ越しをして来るらしいから、今夜の食事から一緒に過ごすことになるだろう。」

「……はい。分かりました。」

「前よりはマシになったと思うが、なかなか癖の強い息子なんだ。
 初対面のエリーゼに対しても酷い態度だっただろう?
 一緒に生活するとなると、オスカーに疲れることは沢山あるだろう。その時は、エリーゼに別邸を買うつもりでいるから、心配しなくていいからな。
 グーム国にエリーゼがいると分かった時も、殿下と一緒に私が迎えに行くつもりでいたのだが、オスカーが行くと言い出して聞かなかったし、私もあの時は多忙だったから、オスカーに行ってもらうことになったんだ。
 オスカーとの長旅は、気を遣って大変だっただろう?今更だが、悪かったな。」

 ……凄い言われようだわ。
 だけど、外出が嫌いなはずの偏屈が迎えに行くと言い出したなんて、驚きだなぁ。
 偏屈だけど、実は面倒見の良い人なんだと思う。

「お義父様。お義兄様は確かに、まあ……、少し……、厳しいところがあるお方ではあると思いますが、根はお優しい方なのは分かっておりますから、大丈夫ですわ。」

「リーゼ、気を遣わなくていいのよ。
 母親である私ですら、理解に苦しむ時が沢山あるの。
 オスカーが嫌になったら、食事は別にして構わないわ。」

「そ、そうですね。私としてもお義兄様と揉めたくはないので、難しいと判断した時は、そうさせて頂くかもしれませんが、多分……、大丈夫かと。
 お義兄様は、グーム国で入院している時、私に付きっきりでいてくれるくらい優しい方なので、何とかなると思いますわ。」

「え……?リーゼが入院したことは聞いていたけど、オスカーがずっと付き添っていたですって?」

「……あのオスカーが?
 信じられないな。」

 あの偏屈義兄は、両親からどんだけ評価が低いのよ?

「ええ。せっかくグーム国に来たのだから、観光をしてはどうかと勧めたのですが、お義兄様は毎日お見舞いに来て下さって、面会時間の始まりから終わりまで、ずっと病室にいて、私に付き添ってくれましたのよ。」

「毎日来て……、面会時間の始まりから終わりまで、ずっと病室にいたですって……?
 リーゼ、それは見舞いというよりも、我慢大会じゃないの!」

 確かに我慢したよね……
 病室のベッドで安静にしているのに、全く昼寝は出来ませんでしたからね。
 あの義兄がいると、緊張感があって、昼寝どころではなかったんだよ。
 お陰で入院中は、夜間はぐっすり眠れていたんだけど。

「変わり者のオスカーなりに気を遣ったのだろう。
 とりあえず、私達三人だけの平和な生活は終わりだ。」

「…………。」

 そして義兄は、予定通りにその日の夕方に帰って来た。
 私はそんな義兄を、お義母様と一緒に出迎えることになった。
 居候と変わらない立場の私だから、次期当主である義兄とは、テリトリーを侵さない程度に上手く関わらなくてはならないのだ。

「オスカー、お帰りなさい。
 貴方の荷物は、従者達が貴方の部屋に運んでくれたから、後で確認するといいわ。」

「母上。引っ越しの手配、ありがとうございました。」

「お義兄様、お帰りなさいませ。」

 実家に帰って来たのに、ニコリともしないわ。予想通りだけど。
 そんな義兄は、無言で私に手紙を渡して来る。

「……これは?」

「王女殿下に偶然お会いした時に渡されたのだ。
 エリーゼに手紙を書いて下さったらしい。
 それと王女殿下は、エリーゼに遊びに来て欲しいと言っていた。」

「ありがとうございます。」

 ちょうど、そろそろ王宮に挨拶に行こうかと、お義母様と話をしていたところだった。
 でも、ティーナって凄いよね。
 こんな気難しそうな義兄に普通に手紙を渡すなんて。将来、大物になりそうだわ。

「王女殿下には、エリーゼが王宮に行くときは、必ず私に付き添いをさせて欲しいとお願いさせてもらった。」

 偏屈は表情を変えずに、また爆弾発言をする。

「……えっ?」

「エリーゼは王宮で危険な目に遭っているし、マクファーデン公爵家が潰れても、同じ派閥だった者達や親族だった者達、我が家門の敵の派閥がいる以上は、油断は出来ないのだ。
 悪いが、エリーゼが攫われたことがあってから、私は近衛騎士を信用していない。
 これから王宮に行かなくてはならない時は、必ず私と護衛騎士が付き添う。」

「……え?」

「エリーゼの護衛騎士は、近いうちに私が選ぶ予定だ。
 これからはエリーゼの側に、必ず護衛騎士を置くようにする。」

「そこまでしなくても……」

「もう決めたことだ。」

 私の話も聞かず、偏屈は自分の部屋に戻って行ってしまった。

「…………」

「リーゼ……、オスカーは言い出したら聞かないのよ。
 何を言ってもあんな感じで冷たく返されるから、嫌になってしまうのよね……。」

 嫌になってしまうのよねって、実の母が口にする言葉なの?

 そして、数日後に公爵家の領地から騎士達がやって来たらしい。
 それからまた数日が経つ頃、私は義兄から呼び出されることになる。

「エリーゼの護衛騎士が決まった。」
 
 そこには、五人の騎士様がいる。この中からタイプの騎士を選べってこと?
 
「今日からお前達が護衛することになる、私の義妹のエリーゼだ。
 一人ずつ、エリーゼに自己紹介を頼む。」

 〝お前達が〟って言ったわよね?
 五人も護衛騎士を付けるってことなの?
 すると、護衛騎士達は一人ずつ挨拶をしてくれる。
 護衛騎士達は、ネルソン卿、カーター卿、ウィルズ卿、マセズ卿、レスター卿という方々で、全員貴族出身の方らしい。
 義兄の話では、王宮に護衛として連れて行くことを考えると、その方がいいだろうとのことだった。

 
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