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帰ってきた私
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長い船旅を終えて、帰国した私を待っていたのは、宿屋の女将さんと旦那さんだった。
グーム国からの船が到着したと聞いて、慌てて店を閉めて、船着場まで来てくれたらしい。
王弟殿下とお義兄様は、女将さん達がいることにすぐに気付き、馬車に荷物を積み込む作業があるから、その間はゆっくり話をしてきていいと言ってくれた。
腹黒と偏屈の気遣いのお陰で、私は女将さん達と感動の再会を果たすことが出来たのだ。
「リーゼ、無事で良かったよ。
もう、こんな心配をさせないでおくれ。」
女将さんは、私を抱きしめて涙を流している。
私の港町のお母さんは、今日も涙脆いようだ。
でもそれくらい私は、女将さんから心配をかけていたということなのだろう。
「女将さん、心配かけてごめんなさい。
そして、私からの手紙をお義父様に知らせてくれてありがとう。そのお陰で、無事に帰国することが出来ました。」
「リーゼ。早く身を固めな。リーゼは若いうちから苦労ばかりしているんだから、今度こそは自分の幸せを優先するんだ。私はそれだけが心配なんだよ。」
「おい、またその話か。リーゼの結婚は自分で勝手に決められるものじゃないんだ。そのことは、公爵様と夫人が考えてくれているから、俺たちが口を挟むことではないんだぞ。
リーゼ。王女殿下の命を守ったリーゼを悪く言うやつはいないだろうから、しばらくはゆっくりするといい。
無事で何よりだ。知らない土地でよく頑張ったな。」
「旦那さん、色々と心配をかけてしまってごめんなさい。旦那さんと女将さんにずっと会いたかったから、帰って来れて嬉しいです。」
この仲良し夫婦のやり取りを見ていると、すごくほっこりする。
私、帰って来たんだなぁ。
その後、私はすぐに馬車に乗せられて、王都の邸に戻ることになる。
お義父様とお義母様は、先触れを出してあったので、玄関の前で私達を出迎えてくれた。
二人とも私を見て目を潤ませている。
「リーゼ、お帰りなさい。ずっと待っていたのよ。
よくやったわ! リーゼは私の自慢の義娘よ。」
「エリーゼ、よく帰って来てくれた。」
「お義父様、お義母様。ただいま帰りました。
ご心配をお掛けして申し訳ありませんでした。」
邸まで送ってくれた王弟殿下はその様子を見届けた後に、王宮に戻っていった。
その後、お義父様とお義母様、義兄の三人に、グーム国で何があったのかを詳しく話していると、あっと言う間に時間は過ぎていく。
話がひと段落すると、日が暮れていた。
「リーゼ。夕食の前に渡しておきたいものがあるのよ。」
お義母様がそう言うと、メイドがミカン箱くらいの大きさの箱を持ってくる。
「この中には、王女殿下からの手紙が沢山入っているのよ。
リーゼは怪我をして領地で療養しているということにしていたから、王女殿下はリーゼに手紙を渡して欲しいと言って、王宮の旦那様の執務室に何度も訪ねて来たらしいのよ。」
箱にはビッシリと手紙が入っている。
ティーナが好きなピンクや薄紫、水色の可愛らしい封筒のお手紙……
こんなに沢山書いてくれたのね。私は返事も書いてないのに。
「旦那様は、リーゼは怪我でペンが持てないから、返事を書くことは難しいと王女殿下にお話したらしいのよ。
でも王女殿下は、それでもいいから渡して欲しいと言って、何度も旦那様の執務室に手紙を届けに来たらしいの。
そんな王女殿下を見て、泣きそうになったと言っていたわ。あの旦那様が!」
あんなに可愛いティーナが手紙を届けに来たら、誰だってティーナに落ちると思う。
ティーナに会いたいな……
私はティーナのことを忘れていたのに、こんなに沢山手紙を書いてくれていたなんて。
嬉しくて、私まで涙が溢れちゃう。
「……グスッ。……急いで手紙を読んで、王女殿下に返事を書くようにしますわ。
便箋を用意してもらえますか?」
「ふふっ……。王女殿下好みの可愛らしい便箋セットを沢山取り寄せておいたわよ。
手紙に入れる押し花も作っておいたわ!」
このお義母様は、あの偏屈義兄の母でいるよりも、可愛い女の子のママでいる方が似合っているよね。
「お義母様、ありがとうございます!」
その夜は、疲れていたにも関わらず、ティーナの手紙を読むことに夢中になり、なかなか眠る気になれなかった。
〝お姉ちゃんに会いたい。〟
〝早く元気になってね。〟
〝お姉ちゃんが元気になったら、ハンバーグが食べたいな。〟
〝お姉ちゃんの作ってくれたドレスが小さくなってしまったわ。〟
〝またお姉ちゃんと一緒にお泊まりがしたいの。〟
〝お姉ちゃんのいる領地に会いに行きたい。〟
返事が来ないことを知りながらも、こうやって沢山の手紙を書いてくれたのね。
いつもは〝お姉様〟って呼んでくれているのに、手紙では〝お姉ちゃん〟って書いてる。
ティーナ……、可愛すぎるよ。
涙を流し、鼻をかみながら手紙を読み進めると、ある文章が目に留まる。
〝おじ様がニューギ国に行ってしまって寂しいの。〟
王弟殿下がニューギ国に行った?
そして違う日の手紙には、その続きらしき内容が書いてあった。
〝まだおじ様はニューギ国から帰って来ないの。
お姉ちゃんもおじ様もいないとつまらない。毎日寂しいわ。〟
〝おじ様が、無事にニューギ国から帰って来て嬉しかったわ。〟
〝おじ様の元気がないの。いつも、遠くを見てため息をついているわ。〟
〝おじ様が元気がないのは、ニューギ国に人を探しに行ったのに見つからなかったから、落ち込んでいるんだって。お義兄様がこっそり教えてくれたわ。〟
王弟殿下も義兄も、何も言っていなかったから知らなかった。
あの腹黒は、私を探しにニューギ国まで行ってくれていたようだ……
グーム国からの船が到着したと聞いて、慌てて店を閉めて、船着場まで来てくれたらしい。
王弟殿下とお義兄様は、女将さん達がいることにすぐに気付き、馬車に荷物を積み込む作業があるから、その間はゆっくり話をしてきていいと言ってくれた。
腹黒と偏屈の気遣いのお陰で、私は女将さん達と感動の再会を果たすことが出来たのだ。
「リーゼ、無事で良かったよ。
もう、こんな心配をさせないでおくれ。」
女将さんは、私を抱きしめて涙を流している。
私の港町のお母さんは、今日も涙脆いようだ。
でもそれくらい私は、女将さんから心配をかけていたということなのだろう。
「女将さん、心配かけてごめんなさい。
そして、私からの手紙をお義父様に知らせてくれてありがとう。そのお陰で、無事に帰国することが出来ました。」
「リーゼ。早く身を固めな。リーゼは若いうちから苦労ばかりしているんだから、今度こそは自分の幸せを優先するんだ。私はそれだけが心配なんだよ。」
「おい、またその話か。リーゼの結婚は自分で勝手に決められるものじゃないんだ。そのことは、公爵様と夫人が考えてくれているから、俺たちが口を挟むことではないんだぞ。
リーゼ。王女殿下の命を守ったリーゼを悪く言うやつはいないだろうから、しばらくはゆっくりするといい。
無事で何よりだ。知らない土地でよく頑張ったな。」
「旦那さん、色々と心配をかけてしまってごめんなさい。旦那さんと女将さんにずっと会いたかったから、帰って来れて嬉しいです。」
この仲良し夫婦のやり取りを見ていると、すごくほっこりする。
私、帰って来たんだなぁ。
その後、私はすぐに馬車に乗せられて、王都の邸に戻ることになる。
お義父様とお義母様は、先触れを出してあったので、玄関の前で私達を出迎えてくれた。
二人とも私を見て目を潤ませている。
「リーゼ、お帰りなさい。ずっと待っていたのよ。
よくやったわ! リーゼは私の自慢の義娘よ。」
「エリーゼ、よく帰って来てくれた。」
「お義父様、お義母様。ただいま帰りました。
ご心配をお掛けして申し訳ありませんでした。」
邸まで送ってくれた王弟殿下はその様子を見届けた後に、王宮に戻っていった。
その後、お義父様とお義母様、義兄の三人に、グーム国で何があったのかを詳しく話していると、あっと言う間に時間は過ぎていく。
話がひと段落すると、日が暮れていた。
「リーゼ。夕食の前に渡しておきたいものがあるのよ。」
お義母様がそう言うと、メイドがミカン箱くらいの大きさの箱を持ってくる。
「この中には、王女殿下からの手紙が沢山入っているのよ。
リーゼは怪我をして領地で療養しているということにしていたから、王女殿下はリーゼに手紙を渡して欲しいと言って、王宮の旦那様の執務室に何度も訪ねて来たらしいのよ。」
箱にはビッシリと手紙が入っている。
ティーナが好きなピンクや薄紫、水色の可愛らしい封筒のお手紙……
こんなに沢山書いてくれたのね。私は返事も書いてないのに。
「旦那様は、リーゼは怪我でペンが持てないから、返事を書くことは難しいと王女殿下にお話したらしいのよ。
でも王女殿下は、それでもいいから渡して欲しいと言って、何度も旦那様の執務室に手紙を届けに来たらしいの。
そんな王女殿下を見て、泣きそうになったと言っていたわ。あの旦那様が!」
あんなに可愛いティーナが手紙を届けに来たら、誰だってティーナに落ちると思う。
ティーナに会いたいな……
私はティーナのことを忘れていたのに、こんなに沢山手紙を書いてくれていたなんて。
嬉しくて、私まで涙が溢れちゃう。
「……グスッ。……急いで手紙を読んで、王女殿下に返事を書くようにしますわ。
便箋を用意してもらえますか?」
「ふふっ……。王女殿下好みの可愛らしい便箋セットを沢山取り寄せておいたわよ。
手紙に入れる押し花も作っておいたわ!」
このお義母様は、あの偏屈義兄の母でいるよりも、可愛い女の子のママでいる方が似合っているよね。
「お義母様、ありがとうございます!」
その夜は、疲れていたにも関わらず、ティーナの手紙を読むことに夢中になり、なかなか眠る気になれなかった。
〝お姉ちゃんに会いたい。〟
〝早く元気になってね。〟
〝お姉ちゃんが元気になったら、ハンバーグが食べたいな。〟
〝お姉ちゃんの作ってくれたドレスが小さくなってしまったわ。〟
〝またお姉ちゃんと一緒にお泊まりがしたいの。〟
〝お姉ちゃんのいる領地に会いに行きたい。〟
返事が来ないことを知りながらも、こうやって沢山の手紙を書いてくれたのね。
いつもは〝お姉様〟って呼んでくれているのに、手紙では〝お姉ちゃん〟って書いてる。
ティーナ……、可愛すぎるよ。
涙を流し、鼻をかみながら手紙を読み進めると、ある文章が目に留まる。
〝おじ様がニューギ国に行ってしまって寂しいの。〟
王弟殿下がニューギ国に行った?
そして違う日の手紙には、その続きらしき内容が書いてあった。
〝まだおじ様はニューギ国から帰って来ないの。
お姉ちゃんもおじ様もいないとつまらない。毎日寂しいわ。〟
〝おじ様が、無事にニューギ国から帰って来て嬉しかったわ。〟
〝おじ様の元気がないの。いつも、遠くを見てため息をついているわ。〟
〝おじ様が元気がないのは、ニューギ国に人を探しに行ったのに見つからなかったから、落ち込んでいるんだって。お義兄様がこっそり教えてくれたわ。〟
王弟殿下も義兄も、何も言っていなかったから知らなかった。
あの腹黒は、私を探しにニューギ国まで行ってくれていたようだ……
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