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プレゼント
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そこまで長い入院生活ではなかったはずなのに、退院する頃には、病室は物で溢れていた。
「リーゼ。今日の体調はどうだ?
今日も、クリスティーナの土産を買いに町に出たんだが、偶然いい店を見つけてしまって、つい買ってしまったんだ。
……受け取ってくれないか?」
そこには、今日も恥ずかしそうにプレゼントを渡してくる王弟殿下がいた。
何だろう……?
いつもは腹黒のイケメンにしか見えないのに、こういう時の殿下の恥ずかしそうな顔は、なぜか可愛く見えてしまう。
「……王弟殿下。あ、ありがとうございます。
でも、プレゼントはこれで最後にして下さいね。
病室に置ききれないほどのプレゼントを頂いてしまいましたので、流石に申し訳なくなってしまいましたわ。」
「あっ……、そうだったな。悪い。
店に行くと、商売上手な店員に乗せられてしまって、つい買ってしまうんだ。」
見るからに高貴な雰囲気を出しまくっているから、店員さんのいいカモになってるんだろうなぁ。
私の入院当初、王弟殿下はお見舞いに来るのに手ぶらでは来れないとか言って、プレゼントを持ってきてくれたのだ。
それを見た義兄が、せっかく殿下が用意してくれたのだから断るのは失礼だと言いだしたこともあり、私は深く考えずに受け取ることにしたのだが、流石に毎日プレゼントを持ってお見舞いに来るだなんて、考えてもいなかった……。
「王弟殿下……。うちのエリーゼを懇意にしていただいて感謝しておりますが、殿下からの過分なお心遣いに、私達は恐縮しております。」
「クリフォード卿。そんなことは気にするなと言いたいところだが、リーゼは明日退院だから、確かに荷物になってしまうよな。
すまなかった。入院中のプレゼントはこれで最後にする。」
「王弟殿下。入院中は色々ありがとうございました。
私は明日、やっと退院出来ますわ。」
「ああ。本当に良かったな。
ところで、あの伯爵令嬢の件だが、本当に慰謝料を貰うだけでいいのか?
しかも、その慰謝料を全額孤児院に寄付するだなんて、貴族として素晴らしいことではあるが、リーゼには何も残らないんだぞ?
それにこの国の貴族達は、あの令嬢は罪人として、修道院送りにされるものだと思っているようだった。」
あの後私は、おじ様と殿下に必死に頼み込んで、私に暴力を振るった伯爵令嬢に慰謝料を請求するということで、なんとか話をまとめてもらうことに成功したのだ。
「何かの勘違いから、一度殴られただけですので、私はもう大丈夫です。
それがきっかけで私の記憶が戻ったようですし、伯爵令嬢からは、丁寧な謝罪の手紙を頂きました。
慰謝料は、孤児院にいる可愛い子供達のために使ってもらうのが一番だと思っておりますし、私には、入院中に殿下が贈って下さった、大量のプレゼントがありますから、他には何も望みませんわ。」
「……そ、そうか。そんな風に言われたら、嬉しくなってしまうな。
では退院したら、私からリーゼに退院祝いも贈らせてくれ。」
……もう何も要らないのに。
ストップ無駄遣いだよ。
「殿下。これ以上物が増えたら、船に積み込むのが大変ですので、贈り物は今は控えて頂きたく思います。」
サラッと断る義兄は、流石だと思ってしまった。
やっぱり偏屈は最強だなぁ。
「そうだな……。では帰国してからにしよう。」
「……」
「……」
そして私は、翌日に退院を迎える。
退院した私は、義兄に付き添われて孤児院に行くことにした。
実は私の入院中に子供達は、沢山の手紙や絵を描いてくれ、それを院長先生が届けてくれたのだが、入院中、何もすることのなかった私にとって、子供達からの手紙は、唯一の楽しみであり癒しになっていたのだ。
私は、そんな子供達や院長先生達に、退院の報告とお礼を伝えたいと思っていた。
「あっ、リーゼ姉ちゃんだ!」
「本当だ!リーゼお姉ちゃん、退院したの?」
私が来たことに気付いた子供達が、元気に駆け寄って来る。
「みんな、お手紙を書いてくれてありがとう。
そのお陰で、元気になって退院することが出来たわよ。」
「良かったねぇ。」
「リーゼお姉ちゃん。退院おめでとう!」
ハァー。やっぱり子供達からは、元気がもらえるなぁ。
「リーゼお姉ちゃん。実はね、リーゼお姉ちゃんが怖いお嬢様に虐められて倒れた時にね……、院長先生がすっごい怒って怖かったのよ。」
「俺も見たぞ。院長先生が貴族のお嬢を怒鳴りつけていて、すげー怖かった。
滅多に怒らないから、余計に怖かったな。」
「あたしも、院長先生があそこまで怒ったのは、初めて見たなぁ。」
穏やかで声を荒げることなどなさそうな、優しいおじさんって感じの院長先生だったけど、やはりキレると怖いのね。
「あはは……。院長先生はこの孤児院のボスなのだから、普段は優しくてもいざという時は怖いに決まっているじゃない。」
孤児院に顔を出した後、義兄はおじ様の邸まで私を送ってくれた。
私は来週帰国することに決まったのだが、帰国するまではおじ様の邸に滞在してよいということになったのだ。
「エリーゼ。この国にいるのは、あと僅かだ。
船旅は体力を消耗するから、今のうちに体調を整えておくように。
一人でフラフラと出歩くなよ。」
「分かっておりますわ。
お義兄様、入院中は大変お世話になりました。」
「世話はしてない。義兄として当たり前のことをしただけだ。
では、来週迎えに来るからな。」
「はい。よろしくお願い致します。」
そして義兄は、滞在先の王宮に戻って行った。
「リーゼ。今日の体調はどうだ?
今日も、クリスティーナの土産を買いに町に出たんだが、偶然いい店を見つけてしまって、つい買ってしまったんだ。
……受け取ってくれないか?」
そこには、今日も恥ずかしそうにプレゼントを渡してくる王弟殿下がいた。
何だろう……?
いつもは腹黒のイケメンにしか見えないのに、こういう時の殿下の恥ずかしそうな顔は、なぜか可愛く見えてしまう。
「……王弟殿下。あ、ありがとうございます。
でも、プレゼントはこれで最後にして下さいね。
病室に置ききれないほどのプレゼントを頂いてしまいましたので、流石に申し訳なくなってしまいましたわ。」
「あっ……、そうだったな。悪い。
店に行くと、商売上手な店員に乗せられてしまって、つい買ってしまうんだ。」
見るからに高貴な雰囲気を出しまくっているから、店員さんのいいカモになってるんだろうなぁ。
私の入院当初、王弟殿下はお見舞いに来るのに手ぶらでは来れないとか言って、プレゼントを持ってきてくれたのだ。
それを見た義兄が、せっかく殿下が用意してくれたのだから断るのは失礼だと言いだしたこともあり、私は深く考えずに受け取ることにしたのだが、流石に毎日プレゼントを持ってお見舞いに来るだなんて、考えてもいなかった……。
「王弟殿下……。うちのエリーゼを懇意にしていただいて感謝しておりますが、殿下からの過分なお心遣いに、私達は恐縮しております。」
「クリフォード卿。そんなことは気にするなと言いたいところだが、リーゼは明日退院だから、確かに荷物になってしまうよな。
すまなかった。入院中のプレゼントはこれで最後にする。」
「王弟殿下。入院中は色々ありがとうございました。
私は明日、やっと退院出来ますわ。」
「ああ。本当に良かったな。
ところで、あの伯爵令嬢の件だが、本当に慰謝料を貰うだけでいいのか?
しかも、その慰謝料を全額孤児院に寄付するだなんて、貴族として素晴らしいことではあるが、リーゼには何も残らないんだぞ?
それにこの国の貴族達は、あの令嬢は罪人として、修道院送りにされるものだと思っているようだった。」
あの後私は、おじ様と殿下に必死に頼み込んで、私に暴力を振るった伯爵令嬢に慰謝料を請求するということで、なんとか話をまとめてもらうことに成功したのだ。
「何かの勘違いから、一度殴られただけですので、私はもう大丈夫です。
それがきっかけで私の記憶が戻ったようですし、伯爵令嬢からは、丁寧な謝罪の手紙を頂きました。
慰謝料は、孤児院にいる可愛い子供達のために使ってもらうのが一番だと思っておりますし、私には、入院中に殿下が贈って下さった、大量のプレゼントがありますから、他には何も望みませんわ。」
「……そ、そうか。そんな風に言われたら、嬉しくなってしまうな。
では退院したら、私からリーゼに退院祝いも贈らせてくれ。」
……もう何も要らないのに。
ストップ無駄遣いだよ。
「殿下。これ以上物が増えたら、船に積み込むのが大変ですので、贈り物は今は控えて頂きたく思います。」
サラッと断る義兄は、流石だと思ってしまった。
やっぱり偏屈は最強だなぁ。
「そうだな……。では帰国してからにしよう。」
「……」
「……」
そして私は、翌日に退院を迎える。
退院した私は、義兄に付き添われて孤児院に行くことにした。
実は私の入院中に子供達は、沢山の手紙や絵を描いてくれ、それを院長先生が届けてくれたのだが、入院中、何もすることのなかった私にとって、子供達からの手紙は、唯一の楽しみであり癒しになっていたのだ。
私は、そんな子供達や院長先生達に、退院の報告とお礼を伝えたいと思っていた。
「あっ、リーゼ姉ちゃんだ!」
「本当だ!リーゼお姉ちゃん、退院したの?」
私が来たことに気付いた子供達が、元気に駆け寄って来る。
「みんな、お手紙を書いてくれてありがとう。
そのお陰で、元気になって退院することが出来たわよ。」
「良かったねぇ。」
「リーゼお姉ちゃん。退院おめでとう!」
ハァー。やっぱり子供達からは、元気がもらえるなぁ。
「リーゼお姉ちゃん。実はね、リーゼお姉ちゃんが怖いお嬢様に虐められて倒れた時にね……、院長先生がすっごい怒って怖かったのよ。」
「俺も見たぞ。院長先生が貴族のお嬢を怒鳴りつけていて、すげー怖かった。
滅多に怒らないから、余計に怖かったな。」
「あたしも、院長先生があそこまで怒ったのは、初めて見たなぁ。」
穏やかで声を荒げることなどなさそうな、優しいおじさんって感じの院長先生だったけど、やはりキレると怖いのね。
「あはは……。院長先生はこの孤児院のボスなのだから、普段は優しくてもいざという時は怖いに決まっているじゃない。」
孤児院に顔を出した後、義兄はおじ様の邸まで私を送ってくれた。
私は来週帰国することに決まったのだが、帰国するまではおじ様の邸に滞在してよいということになったのだ。
「エリーゼ。この国にいるのは、あと僅かだ。
船旅は体力を消耗するから、今のうちに体調を整えておくように。
一人でフラフラと出歩くなよ。」
「分かっておりますわ。
お義兄様、入院中は大変お世話になりました。」
「世話はしてない。義兄として当たり前のことをしただけだ。
では、来週迎えに来るからな。」
「はい。よろしくお願い致します。」
そして義兄は、滞在先の王宮に戻って行った。
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