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一緒に帰ろう

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 私の名前を呼ぶ、この人達の雰囲気から感じるのは、身分が非常に高そうだということ。
 そんな人達が私を見て、生き別れた人をやっと見つけたかのような目で私を見ている。

 私にこんな知り合いがいたの?

 没落した後に、こんな人達と交流があったようには思えないし、女将さんの店のお客さんに、こんな高貴な人達はいなかったはず。

 本気で思い出せない私は、言いにくいあの言葉を口にしていた。


「あの……、失礼ですが……、どちら様でしょうか?」

「……っ!リーゼ、やはり私が分からないのか?」


 私のその言葉に、金髪のイケメンが苦痛そうに表情を歪め、周りにいた護衛騎士達は固まり、メガネの美丈夫は表情を失くしていた。


「エリーゼ……。君は記憶を失くしているようだが、私は君の従兄妹で今は義理の兄になる、オスカー・クリフォードという者だ。
 ステール伯爵家が没落した後、君の伯父である私の父が、君と養子縁組したので、エリーゼは私の義妹になる。
 今のエリーゼの身分は、クリフォード公爵令嬢で、君の実の両親とは縁が切れているから、何も恐れる必要はない。
 君はある事件に巻き込まれて、船で攫われたのだ。」

「……え?」


 メガネの美丈夫が、私の義兄だと言っている……。
 冷静に淡々と話す感じが、この人の隙のなさを感じてしまう。

 この人の言うことが本当だったとして、私達がどんな義兄妹だったのか、全く想像できないな……。
 

「エリーゼがクリフォード家に引き取られる前に仲良くしていた、宿屋の女将に君は手紙を出したな?
 その手紙から、君がこの国にいることを知って、私達は君を迎えに来たのだ。」


 親方さんはあの後、ちゃんと女将さんに手紙を届けてくれたんだ……。
 本当にいい人だなぁ。あの人達に保護されたから、私はこうやって生きていられるんだよね。

 だけど、その手紙を読んだ女将さんが、この人達に私がこの国にいることを知らせたってこと?
 ということは、女将さんはこの人達を信用している?


「……確かに、親代わりの女将さんに手紙を出しました。
 女将さんは元気にしているのでしょうか?」

「私は直接会ってないが、父の話だとエリーゼのことをとても心配していたそうだ。」

「そうでしたか……。」

「両親もエリーゼを心配している。君と親しかった者達も、君に会いたがっているんだ。
 両親からは、見つけたら必ず連れて帰って来るように言われている。
 我が国の国王陛下は、エリーゼの捜索と帰国がスムーズに出来るようにと、この国の国王陛下に親書まで書いて下さったし、王弟殿下に至っては、エリーゼを直接捜索したいからと、こうやってここに来ているんだ。」


 そう言って、私の義兄と名乗るメガネの美丈夫は、隣にいる金髪のイケメンに視線を送る。

 ……王弟殿下?

 ひぇー!お、王弟殿下?
 私の交友関係ってそんなに凄かったの?

 
「リーゼ……、私達と一緒に帰ろう。
 みんな、君が帰って来るのを待っているんだ。
 君は忘れてしまっているかもしれないが、私の姪のクリスティーナが君に会いたがっている。」


 クリスティーナ……って。


「………」

「今のエリーゼは、記憶を失っているから、急に帰ろうと言われても困ると言ったような顔をしているな。
 ほぼ初対面のような私達に急に帰ろうと言われても、色々疑いたくなる気持ちは分かる。
 私達はしばらくこの国に滞在する予定になっているから、今すぐ連れて帰ろうとは思っていない。
 ただ、気持ちの整理はしていて欲しい。私達が帰国する時に、エリーゼも一緒に帰るからな。
 父上と母上と王女殿下が君を待っているんだ。」


 国に帰ると言われて動揺する私に、二人は今どこに住んでいるのかなどを細かく聞き、孤児院の院長先生に私の身分などを説明した後、滞在先である王宮に戻っていった。

 私が他国の公爵令嬢だと知った院長先生は、顔色を悪くしていた。


「リーゼ姉ちゃん、もうここには来ないの?」

「……えっ?」

「だって、リーゼ姉ちゃんは貴族のお嬢様で、遠くに行ってしまうんでしょ?」

「今すぐじゃないわよ。また明日も来るわ。
 ここはみんながいるから、毎日楽しいのよ。」

「本当?良かったー!」


 私に笑いかけてくれる子供達に癒されながらも、私の心の中では、今後、自分はどうなるのかを考えて、不安になっていた。


 その日、おじ様の邸に帰った私は、今日の出来事をおじ様に説明したかったのだが、珍しく帰りが遅くなると連絡がきて、会えずに終わってしまったのだった。


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