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私を知る人?

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 ストークス様は、仕事が早く終わったと言っては、孤児院から帰る私を邸まで送ってくれるようになる。

 私がいくら断っても、全くめげないストークス様は、気がつくと孤児院の職員や子供達を味方につけていた。


「リーゼさん。あの聖騎士様が外で待ってくれているようだし、今日は特にやることもないから、もう帰って大丈夫よ。」

「まだ帰るのは早いかと……」

「天気がいいのだから、二人でデートでもして来なさい。」

「リーゼお姉ちゃん。騎士様が可哀想だから早く行ってあげて!」

「あの騎士様は、リーゼお姉ちゃんの恋人なんでしょ?
 待たせたら可哀想だよー。」

「おーい、聖騎士様!リーゼ姉ちゃん、今行くって!」

「恋人じゃないから!」


 こんな疲れるやり取りをしているうちに、バザー当日を迎えていた。

 今日、私は厨房でコロッケ作りをする係になっている。
 魔法で作るだけだから、一人で気楽に出来そうだ。
 そして、コロッケの売り子として、レストランで働いている時にお世話になっていた、キャサリンとグレイクが手伝いに来てくれている。
 美男美女が売り子にいるから、きっと店は盛況するはず……。


「リーゼ。小さく切ってあるコロッケは、短い串に刺して、お客様に配っていいのね?」

「ええ。見慣れない食べ物だと思うから、試食して下さいってお客様に配ってみて欲しいの。
 キャサリン、今日はよろしくね。」

「分かったわ。多分、グレイクが上手く接客してくれるだろうから、何とかなると思うのよ。」

「俺をそんなに当てにするなよな。」


 そんなやり取りをした後、二人と売り子の手伝いになっている子供達は、外にコロッケを売りに行く。

 私の方は、ひたすら魔法でコロッケ作りをしていると……


「リーゼ姉ちゃん!コロッケがすごい売れているから、どんどん作って欲しいって!
 あと、味見したいってお客さんがいるから、試食のコロッケもよろしくって、グレイク兄ちゃんが言ってたよ。」

「分かったわ。すぐに準備するから、コロッケを取りに来る人を寄越してって伝えてくれる?」

「うん!」


 安い値段で売り出したコロッケは、庶民の胃袋を掴んだらしく、作っても作ってもすぐに売れてしまう。


 更には……


「リーゼ姉ちゃん、お客さんがテイクアウトしたいから、10個まとめて包んで欲しいって。」

「分かったわ。すぐに用意するから、お客様に少しお待ち下さいって伝えてきてくれる?」

「分かった!」


 異世界でも、コロッケを家族のために大量に買っていくお客さんがいるようだ。


「はい。コロッケ10個よ。お客様に届けてね。」

「はい!」

「リーゼ姉ちゃん!今度は違うお客さんが20個、テイクアウトだって。」

「ちょっと待ってもらってね。」


 そんな感じでコロッケ屋は大盛況。
 気がつくと材料がなくなってしまい、売り切れになってしまった。
 グレイクとキャサリンの美男美女コンビも、売り子として、いい仕事をしてくれたに違いない。

 魔法を使って作ったとはいえ、忙しかったから疲れちゃったな……

 コロッケを作り終え、調理場で一人グッタリしている私を、孤児院の子供達が呼びに来る。


「リーゼ姉ちゃん!」

「……ごめんね。コロッケは今日は売り切れたからおしまいよ。」

「違うよ。コロッケを食べたお客さんが、リーゼ姉ちゃんを呼んで欲しいって言ってるよ。」

「お客様が?要件は聞いた?」

「コロッケがとても美味しかったから、ぜひお礼を伝えたいって。
 貴族の人達みたいだったな……。」

「王子様みたいにカッコいい人達だったわ!
 お姉ちゃん、早く行ってあげて!」


 身分が高そうな人ってことね。
 そんな人に呼んでこいって言われたら、孤児院の子供達は断れないわよね。


「……分かったわ。そのお客様の所に案内してくれる?」

「「うん。」」


 子供達に手を引かれて、孤児院の敷地の入り口に向かうと、お忍びの貴族らしき集団が見える。


 貴族とその護衛達かな……


 私が貴族らしき人達の所へ歩いて行くと、私を見た貴族達の目が、大きく見開かれていることに気づいてしまった。

 何だろう……?

 周りを見ても何もないし、私を見て驚いているってこと?


「……リーゼ!」

「エリーゼ、無事だったのだな!」


 キラキラ金髪の凄いイケメンが、泣きそうな顔で私の所に駆け寄って来た。
 それと同時に駆け寄って来たのは、チャコールグレーのサラサラの髪にメガネをかけた、優等生風の美丈夫だった。

 二人とも私を知る人のようで、私の名前を呼んでいる。
 でも……、私は知らない。
 
 この人達は誰……?


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